バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
ハオ様の個人テントを後にした俺――御門蓮夜は、パッチの里の特産品が詰まった残りの袋を両手に下げ、手下どもの共同スペースへと向かっていた。
ハオ様にお咎めなし(むしろ愛おしげな目で見られただけ)で済んだのは幸いだったが、この後に待っている第二の関門を考えると、事なかれ主義の俺としては少々胃が痛い。
「あ、戻ってきた! 遅いじゃない、レンヤ!」
案の定、共有スペースの焚き火の前に差し掛かった瞬間、鋭い声が飛んできた。
声を上げて俺を睨みつけてきたのは、ハナ組のマチルダ・マティスだ。その隣には、いつも通り冷ややかな目でゴスロリ人形を抱くマリオン・ファウナ、そして長い煙管から紫煙を燻らせているリーダー格のカンナ・ビスマルクが腰掛けている。
「ハオ様の買い出しだけじゃなくて、私たちが頼んだ里のスイーツの調達はどうしたのよ? まさか忘れたなんて言わないでしょうね!」
マチルダが短い髪を揺らしながら、ツカツカと詰め寄ってくる。
「忘れるわけないだろ。ほら、パッチ特製の木の実のタルトと、山ブドウの焼き菓子。ちゃんと人数分買ってきたよ」
俺が袋から箱を取り出すと、マチルダは「お、分かってるじゃない」と一瞬で表情を緩め、マリオンも無言のまま、だが確実に目を輝かせて箱をひったくっていった。
だが、タバコの煙をふぅ、と吐き出したカンナだけは、値踏みするような鋭い視線を俺に向けていた。
「……随分と時間がかかっていたみたいだけど、ただの買い物じゃないわね? さっき、ここから少し離れた川辺の方で、あんたの白銀の巫力が派手に跳ね上がるのを感じたわ。……ペヨーテたちが麻倉の身内を片付けに行った場所よ。あんた、あそこで何をしたの?」
カンナの言葉に、タルトを口に運ぼうとしていたマチルダとマリオンの手がピタリと止まる。
共有スペースの空気が、一瞬にしてハオ陣営特有の、ピリついた冷徹なものへと変貌した。
「いや、何って……。ただの『事なかれ主義の防衛本能』だよ」
俺は両手をポケットに突っ込み、のんびりとした口調のまま、彼女たちの視線を受け止めた。
「買い出しの帰りに通りかかったら、ペヨーテたちに胸を撃ち抜かれた道蓮が転がっててさ。そのまま放置して帰ろうと思ったんだけど、どうにも後味が悪くてね。ハオ様から教えてもらった陰陽術で、ちょっと冥府の門をこじ開けて、生き返らせてきただけだよ」
「はぁっ!? 生き返らせたって……あんた、ハオ様の計画を邪魔したの!?」
マチルダが驚愕で声を裏返らせる。
「裏切り……? 殺す……?」
マリオンの抱く人形のシャーマシュが、不穏な霊圧を放ち始める。
しかし、俺は動じることなく、肩をすくめて見せた。
「裏切りなんて人聞きが悪いな。ハオ様には事後報告して、ちゃんと『喜んで受け入れよう』って許可(お墨付き)をもらってきたよ。ハオ様の125万も、僕の50万も、ただそこにあるだけの数字。その数字の暴力で、ちょっとレバレッジ最大級の気まぐれを通させてもらっただけさ」
「……ハオ様が、それを許したの?」
カンナが煙管を指で弄びながら、信じられないといった風に目を見開く。
この男がただの新参者ではなく、あのハオ様が唯一『独自の極みに達した』と認め、特別に目をかけているバグ物件であることは彼女たちも知っている。だが、まさかこれほどの独断専行まで笑って許されるとは、ハナ組の面々からすれば想定外もいいところだったのだろう。
カンナは呆れたように大きな溜息をつくと、煙管を灰皿に叩きつけた。
「……ハオ様がそう言うなら、私たちが突っ込む筋合いはないわね。だけど、勝手な行動で私たちの陣営のレバレッジを下げたんだから、その分の『対価』は払ってもらうわよ」
「対価、ね。FXで稼いだ僕の軍資金から、何か美味いものでも奢ればいいかい?」
「話が早くて助かるわ。パッチの里の北側にある、ちょっと高めのあぶり肉の店。今日の晩ご飯はあんたの奢りね。マチルダ、マリオン、行くわよ」
「やった! レンヤの奢りだって!」
「肉……たくさん食べる……」
一瞬にしてピリついた空気が霧散し、ハナ組の魔女たちは完全に肉モードへと切り替わった。
事なかれ主義の防衛策として、身内のヘイトを金(富豪のセーフティネット)で解決する。これも俺の立派な生存戦略だ。
(まぁ、ハオ様に怒られるよりは、女の子たちに肉を奢る方が何倍もマシか……)
財布の目減りを少しだけ心配しながらも、俺は弾むように歩き出したハナ組の背中を、苦笑いしながら追いかけるのだった。