バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチの里の北側に位置する、隠れ家的な焼肉の店。
香ばしいタレと、炭火でじっくりと焼かれる肉の脂の匂いが、店内に充満している。
「おいしいー! レンヤ、これ、お代わりしていい!?」
「肉……溶ける……おいしい……」
網の上の肉をもの凄い勢いで自分の皿へと回収しながら、マチルダが頬を緩ませ、マリオンも普段の無表情からは想像もつかないほど熱心に箸を動かしている。
事なかれ主義の俺としては、彼女たちの胃袋(ヘイト)を金で満たすことで、昼間の独断専行への追及を完全に煙に巻くことに成功していた。
「まあ、及第点ね。新参の弟子にしては、おごられ上手な態度だけは評価してあげるわ」
カンナが高級な地酒のグラスを傾けながら、ふふん、と満足げに微笑む。
FXで調達した俺の富豪のセーフティネット(軍資金)が多少目減りしていくが、これでハハ組の魔女たちと良好なレバレッジ関係が保てるなら安い投資だ。現代日本ではお金の無さで美味しいものを食べられなかった未練がある俺にとっても、この贅沢な食事は密かな至福の時間だった。
そんな、比較的平和な食事の席に、不意にドサリと重苦しい影が落ちた。
「オゥ、随分と楽しそうな宴会じゃねえか、アミーゴたち」
独特の訛りのある、軽薄だが芯に冷徹さを宿した声。
振り返れば、そこに立っていたのは、アコースティックギターを背負った大きな男――ペヨーテ・ディアスだった。その背後には、ザンチンや、ターバインなど、ハオ様の手下どもの主力メンバーが顔を揃えている。
店内の空気が、ハナ組の時とはまた違う、本物の血生臭さを孕んで引き締まる。
「ペヨーテ。あんたたち、買い出しの任務から戻ってたのね」
カンナがグラスを置き、煙管に手を伸ばしながら冷ややかに言った。
ペヨーテはハナ組の視線を一蹴すると、ギラついた目をジャージ姿の俺――御門蓮夜へと固定した。
「買い物にしちゃあ、えらくド派手な巫力をぶっ放してたじゃねえか、レンヤ。……俺たちがせっかくハオ様のために片付けた『道蓮』のガキが、なぜかピンピンして葉たちと合流したって噂が、もう十祭司のネットワークから流れてきてるぜ?」
ペヨーテが一歩、俺の席へと近づく。
その背後の手下たちからも、明確な敵意と不信の霊圧が立ち上り、店内の一般客のシャーマンたちが怯えて席を立ち始めるのが分かった。
「おい、レンヤ。ハオ様の寵愛を受けてるからって、調子に乗ってんじゃねえぞ。あんた、あの川辺で一体何をしやがった?」
詰め寄るペヨーテ。
ハナ組のマチルダとマリオンが「チッ……」と箸を置き、戦闘態勢に入ろうとするのが見えた。ハオ様がお墨付きを与えたとはいえ、手下たちからすれば、俺の行動は完全な「利敵行為」あるいは「裏切り」にしか見えないからだ。
しかし、俺は厚切り肉をのんびりと口に運び、咀嚼してから、ふぅ、と息を吐いた。
「何って……ただ、通りかかったから『2度目の人生大事にしろよ』って、冥府の門をこじ開けてやっただけさ。ペヨーテ、君たちの仕事の精度が低くて、あやうく麻倉くんたちがハオ様に頼るのをやめて、X-LAWSのメイデンに頼るところだったんだよ。その対価に葉くんが棄権するなんて、見ていて後味が悪いからね。僕の質量で、ちょっとレバレッジ最大級の気まぐれを通させてもらった」
「なんだと……っ!? 術の理を書き換えたってのか!?」
「文句があるならハオ様に直接言ってよ。ハオ様には事後報告して、ちゃんと『喜んで受け入れよう』って頭を撫でて……いや、お墨付きをもらってきてるから。ハオ様の125万も、僕の50万も、ただそこにあるだけの数字。僕は僕の特等席(傍観者)を守るために、その数字を使っただけだよ」
俺がそう言って、ハオ様と同じような「底知れない笑み」を浮かべてみせると、ペヨーテはそれ以上言葉を続けることができず、言葉に詰まった。
ハオ様が許している。その絶対の事実の前に、彼らはただの「狂信者」でしかない以上、それ以上の牙を剥くことはできないのだ。
「……チッ、相変わらず不気味なバグ野郎だぜ。行くぞ、アミーゴたち」
ペヨーテは忌々しげに吐き捨てると、ギターのネックを鳴らしながら、別の席へと去っていった。
「ふぅ……やれやれ。肉が冷める前に、早く食べちゃおうか」
俺が何事もなかったかのように箸を再開すると、カンナが呆れたようにくすくすと笑い出した。
「あんた、本当にハオ様を盾にするのが上手いわね。……でも、これで完全に目をつけられたわよ?」
「いいんですよ。僕はただの傍観者ですからね」
魂に刻まれた千年の秘術と、50万の巫力。その圧倒的な不条理を背負いながら、俺は再び、賑やかな魔女たちの胃袋を満たすための「おごられ上手な時間」へと戻るのだった。