バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
翌日、パッチの里の本戦会場へと続く広場。
抜けるような青空の下、シャーマンファイト本戦の熱気が至る所から立ち上っている。
俺――御門蓮夜は、いつものようにジャージのポケットに両手を突っ込み、ハオ様の陣営から少し離れた位置で、のんびりと野次馬(傍観者)を決め込もうと歩いていた。
昨夜、ハオ様から向けられた「世界ごと僕を狂わせてみせろ」というレバレッジ最大級の執着の重みは、いまだに俺のバグ魂の奥底にくすぶっている。だが、事なかれ主義の本能が「今は考えないのが一番だ」と俺の脳みそをシャットダウンさせていた。
「あ、御門じゃん! おーい!」
不意に、前方から気の抜けた、だが聞き慣れた声が響いた。
振り返れば、そこにはトレードマークのヘッドホンを首にかけ、いつものようにへらへらとした緩い笑みを浮かべた麻倉葉が立っていた。
その後ろには、まだ少し顔色の悪い道蓮が、俺の姿を認めた瞬間にカッと目を見開き、フンと気まずそうに顔を背けている。ホロホロとチョコラブも一緒だが、昨日の理不尽な光景(泰山府君祭)が脳裏に焼き付いているのか、俺と目が合った瞬間にビクッと肩を震わせていた。
葉は周囲の緊迫した空気などどこ吹く風といった様子で、陽気にこちらへ歩み寄ってくると、頭の後ろで両手を組んだ。
「昨日は蓮のやつを助けてくれてありがとなぁ、御門。いやー、親父から『とんでもない怪物がいる』って連絡が来た時はどうなるかと思ったけど、まさかお前がそんなに凄いことになってるとは思わなかったぜ」
へらへらと笑いながら、まるで「宿題を見せてくれてありがとな」くらいの軽さで感謝の言葉を口にする葉。
「……麻倉くん。君、自分が今どれだけおかしなことを言っているか分かってますか?」
俺は小さく溜息をつき、呆れた視線を返した。
「僕は君たちの敵であるハオ様の弟子ですよ? 本来なら、君の身内が一人減ったと笑うべき立場だ。それに、君の父親にも『どちらの味方もしない』と脅しをかけてきたばかりなんですが」
「んー? でも助けてくれたのは事実だろ? お前がめんどくさいこと嫌いなのも知ってるしな。おかげで俺も大会を棄権しなくて済んだしさ、本当に助かったわ。感謝レバレッジ最大級ってやつ?」
葉は悪びれもせず、俺の口癖を真似てケラケラと笑う。
その底抜けの陽気さと器の大きさに、俺の原作知識の残滓がピキピキと音を立ててきしんだ。
本来の流れであれば、葉はここで苦渋の決断を下し、自身の夢であるシャーマンファイトの棄権を対価に蓮を救うはずだったのだ。それが主人公としての試練であり、泥臭い決意のドラマだった。
それを俺がバグらせて、台無しにした。
なのに、当の本人はそんな運命の歪みなど気にする様子もなく、ただ「友達が助かって良かった」と、へらへら笑って俺の存在を全肯定している。
(……狂ってる。ハオ様だけじゃない、この世界の主役(麻倉葉)まで、俺のせいで最初から全部バグり散らかしてるじゃないか)
自分が世界を崩壊させているという事実は、もはや隠しようもない。
だが、葉のその陽気な態度を見ていると、不思議と張り詰めていた肩の力が抜けていくのも事実だった。
「ふん、御門蓮夜……!」
一歩前に出た蓮が、まだ少し震える拳を握りしめ、俺を真っ直ぐに睨みつけてきた。
「昨日の無礼は詫びる。だが、俺はお前に命を救われた。道家の者として、この貸しは必ずシャーマンファイトの舞台で返させてもらう……! 2度目の人生、お前に言われるまでもなく、大事に使い切って見せる!」
ツンケンしながらも、彼なりの最大の決意を表明する蓮。後ろでは馬孫が「蓮ちゃまぁぁ!」と感動の涙を流している。
「はいはい、期待せずに特等席で見てますよ。……それじゃ、僕は新参の弟子の任務(野次馬)に戻りますので」
俺はひらひらと手を振ると、驚愕と呆れの中で見送るホロホロたちを置き去りにして、再び歩き出した。
ハオ様にはすべてを肯定され、葉にはへらへらと感謝される。
本来のシャーマンキングの世界には存在しないはずのバグ物件(俺)は、両陣営のトップを狂わせながら、崩壊した歴史のその先へ向けて、どこまでも飄々と歩みを進めていくのだった。