バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
「……ふぅ。まぁ、もうどうにでもなれ、か」
葉たちの陽気な感謝に見送られながら、俺――御門蓮夜は、パッチの里の特設本戦会場の観客席へと向かっていた。
歩きながら、俺はジャージのポケットの中で深く息を吐き出す。
ハオ様には「世界ごと僕を狂わせてみせろ」と全肯定の執着をぶつけられ、本来なら重い決断を下すはずだった葉にはへらへらと「助けてくれてありがとなぁ」と感謝される。
自分がこの世界に存在しないバグであり、自分が動くたびに『原作』が音を立てて崩壊していくという事実は、もはや1ミリも動かせない確定事項だった。
事なかれ主義の防衛本能として、安全な野次馬の席に引きこもろうとしていたが、俺がそこに座っていること自体がすでに最大のレバレッジとして歴史を歪めている。
だったら、だ。
(今更、傍観者ぶって縮こまってる方がよっぽどダサいな。原作が壊れた? 知るかよ。俺が変えちまったこの不条理な世界を、最前列で全力で楽しんでやるだけだ)
ストン、と胸の奥の何かが腑に落ちた。それは諦めではなく、完全なる『開き直り』だった。
前世ではお金の無さで美味しいものも食べられず、漫画やゲームを眺めるだけで終わった人生だった。せっかく手に入れた強くてニューゲームの2周目の人生だ。ハオ直伝の陰陽術と50万の質量、そして富豪のセーフティネット(FX資金)がある。これだけお膳立てが揃っていて、楽しまない手はない。
「おや、良い顔になったね、蓮夜。迷いが消えたようだ」
声のした方を見上げれば、本戦会場の最上段、一般のシャーマンたちが恐れをなして近づけない最高位の特等席。
そこに、炎の精霊を背後に従えたハオ様が、長い髪を夜風に揺らしながら座っていた。その隣には、カンナ、マチルダ、マリオンの花組の魔女たちも、俺が昨日奢った焼き肉の余韻を引きずったまま、どこか親しげな目を向けてきている。
「ええ、ハオ様。ちょっとレバレッジ最大級に開き直りましてね。せっかく崩壊した世界です、最前列の特等席で、極上の狂騒を見届けさせてもらいますよ」
「ククッ、それでいい。さあ、おいで。君の席は僕の隣だ」
ハオ様が細い手を差し伸べる。俺は遠慮なくその隣へと腰掛け、ジャージのポケットに手を突っ込んだまま、眼下の手すりを見下ろした。花組のマチルダが「レンヤ、今日の夜も美味しいもの奢りなさいよね!」と小突いてくるが、「はいはい、勝ったらね」と飄々といなす。
ステージ中央。
シャーマンファイト本戦の第1試合の幕が、パッチ族の十祭司たちの緊張に満ちた声と共に切って落とされた。
本来の歴史であれば、道蓮の死と蘇生、そして葉の棄権騒動という重苦しい泥沼を経て、満身創痍の精神で迎えるはずだった開幕戦。
だが、そこに立つ麻倉葉も、道蓮も、ホロホロも、全員が五体満足で、むしろ昨日俺が見せつけた『50万の質量』というご来光のような理不尽への対抗心を滾らせ、かつてないほど鋭い霊圧を放っている。
「……へぇ、面白いじゃん」
俺はいつもの飄々とした笑みを深く深く口元に刻み、バグ魂を歓喜に震わせた。
俺が変えてしまった、誰も知らないシャーマンキングの物語。
本来存在しないはずの席に座る御門蓮夜の目の前で、理を凌駕する白銀の光弦に導かれた、不条理で最高に面白い戦いが今、音を立てて始まりを告げた。