バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
ふんばり温泉チームの圧倒的な勝利によって、早くも大歓声と共に幕を閉じた第1試合。
ステージの上で挑戦的な視線を送ってきた麻倉葉に、俺が不敵な笑みを返し終えた、その直後のことだった。
「――おや。どうやら、退屈な正義の味方たちが、君のレバレッジに引き寄せられてやってきたみたいだね」
隣に座るハオ様が、ステージから通路へと視線を移しながら、底知れない声音でククッと喉を鳴らした。
ハオ様の視線の先――本戦会場の喧騒から少し外れた、日陰の渡り廊下。そこへ向かって、異様なほど厳格で、冷徹な霊圧を放つ一団が歩みを進めていくのが見えた。
純白の軍服。一糸乱れぬ隊列。
X-LAWS(エックス・ロウズ)の隊長・マルコ。そして、その中心に佇むのは、重々しいアイアン・メイデン(鉄の処女)の檻に閉じ込められた少女、聖・少年のアイアン・メイデン・ジャンヌ。
さらにその隊列の後方には、かつて葉たちの仲間でありながら、ハオ様への復讐心から彼らの軍門に降ったダウジングシャーマン――リゼルグ・ダイゼルの姿もあった。
(……なるほど、そういうことか)
俺のバグ魂が、彼らの目的を瞬時に察知する。
本来の歴史であれば、彼らは道蓮の死をきっかけに、蘇生を乞う葉たちへ『棄権』という重すぎる不条理を突きつけ、その絶対正義のレバレッジを誇示するはずだった。だが、俺がその原作を『泰山府君祭』で木っ端微塵に崩壊させたのだ。
結果として、葉たちは棄権することなく完璧な状態で勝利を収め、X-LAWSは自分たちの『正義の舞台』を完全に奪われた。
そして、その裏で50万という規格外の質量を爆発させ、死の理すら強引に書き換えて見せた謎の一般家庭のガキ――すなわち、ハオの弟子を名乗るこの俺(御門蓮夜)の存在が、彼らにとって看過できない最大の「害悪」として映ったのは当然の流れだった。
「蓮夜、行ってあげたらどうだい? 君が壊した正義の歯車が、どんな悲鳴をあげるのか、僕も興味がある」
「はいはい、新参の弟子の任務、行ってきますよ。……マチルダ、残りの焼き菓子、僕の分も残しておいてよ?」
「分かってるわよ! 早くあの堅物どもを追い払ってきなさい!」
マチルダが頼もしく手を振るのを見送りながら、俺はハオ様の特等席を立ち、一人で渡り廊下へと降りていった。
ジャージのポケットに両手を突っ込んだまま、のんびりと廊下の真ん中で立ち塞がる。
向こうから歩いてきたマルコが、眼鏡の奥の目を鋭く光らせ、俺の姿を認めた瞬間に一団の足を止めさせた。
「――そこを退きなさい、ハオの手先。いや……『御門蓮夜(みかどれんや)』」
マルコが、冷酷なまでに整った声を響かせる。
その後ろの檻からは、ジャンヌの放つ圧倒的で神聖な、だがどこか歪んだ絶対正義の霊圧が、じわじわと周囲の空間を威圧するように膨れ上がっていた。
「我々X-LAWSは、パッチ族のネットワークを通じてお前の不条理な所業を聞いている。本来であれば死すべき運命にあった道蓮を、ハオ直伝の邪悪な秘術によって引き戻したそうだな。……お前はシャーマンファイトの調和を乱し、ハオの闇を加速させる最悪のイレギュラーだ」
「邪悪な秘術、ね。人聞きが悪いな、マルコさん」
俺は白銀の指輪を親指で弄びながら、フッ、と低く笑った。
かつてなら、ここで目をつけられることに冷や汗を流し、どうやって事なかれ主義で切り抜けるか頭を悩ませていただろう。だが、今の俺は完全に開き直っている。原作が壊れたなら、この崩壊を全力で楽しむと決めたのだ。
「僕はただの傍観者でね。昨日のは、あまりにも後味が悪い舞台裏が見えちゃったから、レバレッジ最大級の気まぐれで冥府の門をこじ開けただけだよ。君たちが用意していた『葉くんの棄権』っていうクソ面白くもないシナリオを台無しにして悪かったね」
「貴様……っ! 聖・少年の意志を、我らの絶対正義を愚弄するか!」
マルコの手が、懐の拳銃(媒介)へと伸びる。一瞬にして、廊下の空気が殺し合いのそれに沸騰した。
張り詰めた空気の中、俺はマルコの背後にいるリゼルグに視線を移した。緑色の髪を揺らし、ハオの弟子である俺を憎悪の目で見つめている元・イギリスの少年。
俺はわざとらしく、くすくすと肩を揺らして笑ってみせた。
「なぁ、リゼルグくん。君たちさ……その歪んだ正義ごっこ、やってて本当に楽しい?」
「な、何だと……っ!?」
「君たちのやってることって、法律も秩序も無視した完全な『私刑』だよ。悪人を裁く絶対正義のヒーローを気取っているみたいだけど、現代社会の目から見たらただのテロ組織だからね。ハオ様を殺して一件落着とでも思ってる? 残念だけど、これだけの重火器や超法規的な武力行使が表の世界に見つかったら、君たちは真っ先に国際的犯罪者として、ICPOから国際指名手配されるのがオチだね」
前世が36歳の現代日本人であり、裏社会の資金調達(FX)にも精通している俺からすれば、彼らの掲げる中世のような「絶対正義」など、あまりにも穴だらけで滑稽な子供の理想論に過ぎなかった。
さらに俺は、動揺するリゼルグの目を真っ直ぐに見据え、前世の有名漫画のセリフ(鬼滅の刃ムーブ)を意識した、残酷なまでの正論を淡々と突きつけた。
「そもそもさ、君の死んだ父親が、本当に『自分の代わりにハオに復讐してくれ』なんて言ったのかい?」
「っ……!!」
「僕が親ならね、自分のせいで子供を復讐の修羅道に引きずり落とすなんて絶対にしない。ただ生きて、子供の幸せを願うね。ハオ様に出会って家族を殺されたのは、不運にも酷い災害に遭ったとでも思って忘れろ。死んだ人間が生き返るわけでもないのに、いつまでもそんなものに囚われて、自分の人生をドブに捨てるのは無駄以外の何物でもないよ」
「だ、黙れ……! 黙れ黙れ黙れ!! 君に……ハオの闇に加担する君に、僕たちの正義を、僕の父さんを侮辱される筋合いは……!!」
リゼルグが顔を真っ赤に染め、激しい怒りと耐え難い動揺に、涙を滲ませながら声を震わせる。俺の辛辣な現代的レバレッジ(煽り)は、彼の最も脆い、そして目を背けたかった復讐の拠り所を的確に抉り取っていた。
「貴様、それ以上の不敬は万死に値する……! 聖・少年の御前で、これ以上の妄言は許さん!」
マルコが完全に激昂し、殺意を剥き出しにして引き金に指をかける。
だが、その瞬間、俺の身体から50万オーバーの白銀の巫力が、空間そのものをへし折るような質量となって爆発的に立ち上った。
ズゥゥゥゥン……!!
「なっ……なんだ、この重厚な霊圧は……!?」
マルコが、そして完全に精神をへし折られていたリゼルグや背後の隊員たちが、あまりの巫力の密度の高さに息を呑み、圧壊せんばかりの質量に思わず数歩後退する。
「ハオ様の125万も, 僕の50万も、ただそこにあるだけの数字……。文句があるなら、その数字の暴力で僕を消してみせなよ、正義の味方さん」
俺はいつもの飄々とした笑みを深く口元に刻みながら、圧倒的な不条理で彼らを見下ろした。
存在しないはずのバグ(俺)が牙を剥く。X-LAWSという歪んだ正義の歯車すらも、俺のレバレッジの前では、ただの退屈な野次馬の玩具に過ぎないのだ。