バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
御門蓮夜に「時間の無駄」と切り捨てられ、完全にゴミを見るような一瞥と共に置き去りにされた渡り廊下。
そこには、ただ静まり返った空気と、圧倒的な50万の質量の残滓だけが冷たく漂っていた。
「くそ……っ、くそおぉぉっ……!!」
リゼルグ・ダイゼルは、その場に膝をつき、激しい悔しさと屈辱に塗れながら地面を拳で殴りつけた。
視界が涙で歪む。それは悲しみではなく、己の最も脆い、そして目を背けたかった復讐の脆弱さを、あの白銀のバグ(蓮夜)によって完璧なまでの現代的正論で抉り取られたことへの、耐え難い拒絶の涙だった。
『君の死んだ父親が、本当に自分の代わりにハオに復讐してくれなんて言ったのかい?』
『ハオ様に出会ったのは、不運にも酷い災害に遭ったとでも思って忘れろ。……自分の人生をドブに捨てるのは無駄以外の何物でもないよ』
脳裏で、蓮夜のあの冷徹で飄々とした声が、何度も、何度も、呪詛のようにリピートされる。
「リゼルグ、立ちなさい。ハオの手先の妄言など、気にする必要はありません。我らの絶対正義は、あの不浄な数字ごときに揺らぐものではないのです」
マルコが眼鏡の奥の目を険しくさせ、軍服の埃を払いながら冷酷な声を響かせる。
アイアン・メイデンの檻の奥からも、ジャンヌの神聖な、だがどこか微かに動揺を孕んだ霊圧が沈黙を守っていた。
だが、リゼルグの心に刺さった白銀の楔は、そんなマルコの言葉だけで抜けるほど浅くはなかった。
本来の歴史――原作のルートであれば、リゼルグはX-LAWSの絶対的な規律と正義に身を委ね、葉たちの甘さを否定しながらも、自らの復讐心を『正義の武力』へと昇華させていくはずだった。ハオへの復讐という共通の目的のもと、彼はこの純白の組織の歯車として、正しく機能していくはずだったのだ。
しかし、御門蓮夜という存在が、そのすべての前提を根底から完全に崩壊させた。
(違う……僕たちのやってることは、私刑なんかじゃない……! 国際的犯罪者なんかじゃない……!)
必死に頭の中で否定しようとしても、前世が現代日本人であり、世界のシステム(裏社会の資金調達)を知り尽くしている蓮夜の「テロ組織」「国際指名手配」という現実的なレバレッジ(煽り)は、リゼルグの脳内に冷酷な現実としてこびりついて離れない。
何より、あの50万オーバーという理不尽な巫力の質量。
ハオだけでなく、その新参の弟子であるはずの御門蓮夜という男すら、自分たちX-LAWSが束になっても届かないような神の領域の力を、ジャージ姿で飄々と振り回しているのだ。
自分たちが掲げる中世のような「絶対正義」が、どれほど穴だらけで、どれほど滑稽で、どれほど無力な子供の理想論に過ぎないのかを、魂の最深部で思い知らされてしまった。
「このままじゃ……届かない……。父さんの仇(ハオ)にも、あの御門にも、僕の正義じゃ何も届かない……っ!」
リゼルグの瞳から、純粋な少年の光が急速に失われ、濁った焦燥の炎が燃え上がり始める。
ハオへの復讐心と、蓮夜に全てを否定された屈辱。それらが歪に混ざり合い、彼の精神を急速に侵食していく。
(もっと強い力が欲しい……。ハオを、そしてあの御門の理不尽を叩き潰せるだけの、圧倒的な力が……! そのためなら、僕は……正義(マルコさんたち)のやり方だって……!)
ハオを殺すためなら手段を選ばないはずだったX-LAWSの教義すら超えて、リゼルグの心は『力への渇望』という、それこそハオの思想に最も近い暗黒の領域へと、急速に足を踏み入れようとしていた。
本来であれば、葉の棄権や蓮の蘇生を通じて、正義と仲間の狭間で泥臭く悩むはずだった少年。
だが、存在しないはずのバグ(蓮夜)の気まぐれな一蹴によって、リゼルグ・ダイゼルという歯車は完全に狂い、原作のどのページにも記載されていない、暗く歪んだ暴走のシナリオへと、その身を投じ始めていた。