バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】   作:カミト6622

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第56話:『傍観者の世間話と、崩壊した世界の日常』

 

本戦の合間、会場の熱気から少し離れた涼しい木陰。

俺――御門蓮夜は、ハオ様の特等席やX-LAWSとの泥仕合から完全に頭を切り替え、のんびりとパック入りのジュースをストローで啜っていた。

 

開き直ってこの不条理な世界を全力で楽しむと決めたはいいが、ずっとハオ様や花組の濃いレバレッジに巻かれていると、前世が36歳童貞の一般日本人だった俺の精神はそれなりに摩耗する。たまには実家のような安心感というか、ゆるい空気(実質実家のような温泉の息子)に触れたくなるものだ。

 

「あ、御門じゃん。何してんの、そんなとこで」

 

ちょうどよく、草むらからへらへらとしたいつもの笑顔を浮かべた麻倉葉が、道蓮やホロホロ、チョコラブを引き連れて歩いてきた。

昨日の今日で、さらにさっきの第1試合であれだけの圧倒的な勝ち方(俺の50万の質量に引っ張られた限界突破)をしておきながら、こいつのユルさは本当にブレない。

 

「いや、ちょっと休憩ですよ。ハオ様の隣、居心地はいいんですけど、周りの魔女たちのスイーツへの要求レバレッジが最大級に高くて財布が悲鳴を上げてましてね」

 

俺が肩をすくめて見せると、葉は「アハハ、相変わらず大変そうだなぁ」とケラケラ笑い、ホロホロたちは「本当になんなんだよあいつの立場は……」と遠巻きに呆れている。蓮だけは、まだ俺に命を救われた貸し借りの件があるのか、フンと腕を組んで気まずそうに視線を逸らしていた。

 

俺はパックジュースを揺らしながら、ふと、前世の記憶(原作知識)にはない、この『原作が崩壊した世界』の現実的な疑問について、彼らに問いかけてみた。

 

「ところでさ。麻倉くんたち、今の生活ってどうしてんの? ぶっちゃけ飯とか宿とか、お金(資金)のやりくりはどうなってんのかな、と思って。パッチの里、地味に物価が高いでしょ」

 

事なかれ主義でFX富豪のセーフティネット(軍資金)を裏で調達している俺からすれば、ただでさえ学生身分でアメリカまでやってきて、本来ならジャンヌへの蘇生の対価で棄権するはずだった綱渡りの彼らの『生活基盤』が単純に気になったのだ。原作漫画では流されがちな、泥臭い現実の疑問である。

 

「あー、それな。ぶっちゃけ結構カツカツよ?」

 

葉は頭の後ろで両手を組みながら、困ったように眉を下げた。

 

「立ち上げるふんばり温泉の投資予算も、アンナが管理してるから俺らには自由に使える金なんてほとんどねえし。パッチの里のご飯、まじで高くてさ。宿代はなんとかパッチ族が用意してくれた簡易テントがあるからいいけどよ、毎日の飯代だけでシャーマンファイトより先に俺たちの財布が死にそうなんだよ!」

 

「ぶっ、バラすなよ葉! 宿代は簡易テントだし、毎日の飯代だけで俺たちの財布はとっくに爆死寸前なんだよ!」

 

ホロホロが顔を真っ赤にして叫び、チョコラブも「そうそう、僕のギャグじゃパッチの食堂の店主の心は1ミリも温まらなくて、オマケすらしてくれないんだ」と悲しそうに肩を落とす。

 

「ふん、惰弱な奴らめ。我が道家は中国の資産がある。パッチの里の物価ごとき、どうということはない」

蓮がフンスと傲慢に胸を張るが、ホロホロに「お前は実家が太いだけだろーが!」と胸ぐらを掴まれていた。

 

「……簡易テント、ねぇ。流石にそれはQOL(生活の質)が低すぎでしょ。シャーマンファイト本戦だっていうのに、そんな環境じゃレバレッジ最大級にパフォーマンスが落ちるよ」

 

俺はジュースを飲み干し、ゴミ箱へ放り投げながら、ジャージのポケットからクレジットカード(FXで稼ぎ散らした富豪の証)を取り出して指先で軽く弄んだ。

 

「よし、決めた。お前ら、僕がパッチの里の高級ホテル手配してやるよ。もちろん支払い(ルームサービス含めて)は全部僕持ちでいいわ」

 

「えっ……!?」

 

葉たちが一斉にフリーズする。

 

「ま、マジかよ御門っ……! 高級ホテルって、あのパッチの里のエリアの真ん中にある、温泉付きのバカ高いあそこか!?」

「いいのぉ、御門? お前、ハオの弟子なのにそんなことして……」

 

「ハオ様の資金じゃなくて僕の個人資産(FXのあぶく銭)だから問題ないよ。宿代くらい、僕にとってはただそこにあるだけの数字だからね。それに、美味い飯食って、ふかふかのベッドで寝て、本来以上のポテンシャルでハオ様を楽しませてよ。僕は最前列の特等席でそれを見る批評家なんだから」

 

俺がニカッと開き直った不敵な笑みを浮かべると、ホロホロとチョコラブは「神様仏様御門様ァァ!」と涙を流して拝み倒してきた。蓮も「フ、フン……! 敵の施しなど……だが、お前がそこまで言うなら、道家の名誉のためにチェックインしてやらんこともない!」と顔を真っ赤にしながらツンデレを発揮している。

 

「あーあ、言っちゃった。ありがと、御門。じゃ、そういうことだからさ――アンナ、入ってきていいよ」

 

「……え?」

 

葉がへらへらと笑いながら後ろを指差した瞬間、俺のバグ魂に冷たい危険信号が走った。

草むらを静かに掻き分けて姿を現したのは、黒いスカーフをなびかせ、1080個の数珠をジャラリと鳴らす恐山アンナだった。その瞳は相変わらず冷徹で、全てを見透かすようなオーラを放っている。

 

「ちょっと、御門蓮夜」

 

「は、はい、お久しぶりです、アンナさん……」

事なかれ主義の防衛本能が、本能的に一歩後退を指示する。ハオ様とはまた違うベクトルの、逆らってはならない「嫁」のプレッシャーがそこにはあった。

 

しかし、アンナは俺をハオの手先として警戒する素振りすら見せず、ただじっと俺の手にあるブラックカードを見つめると、フッと口元を傲慢に歪めた。

 

「あんた、ハオの弟子になっただの、巫力が50万だの、パッチの十祭司をビビらせただのって聞いてたから、どれだけめんどくさいバグ物件になったかと思えば……相変わらずお金(レバレッジ)の融通だけは利くみたいじゃない」

 

「……は?」

 

「葉たちを高級ホテルに泊めるのね? 支払いも全部あんた持ち。……いいわ、許可してあげる。その代わり、ふんばり温泉チームの遠征費の補填と、私の毎日のエステ代、それから最高級のルームサービス代も全部あんたのツケにしておくから」

 

アンナは当然のように言い放つと、俺の手からひらりとブラックカードを奪い取り、カードの番号を素早く自分の端末にメモして俺に投げ返した。

 

「これからはあんたを、ふんばり温泉チームの公式ATM(セーフティネット)として認定してあげるわ。ハオの相手で忙しいでしょうけど、残高だけは常に最大級にしておきなさいよ」

 

「ちょっと待ってアンナさん!? 扱いが雑すぎませんかね!?」

 

「文句あるの? 世界を壊すだの楽しむだの言ってる割に、私の前ではただの隣のクラスの御門でしょ。大人しく私にレバレッジをかけられなさい」

 

アンナの圧倒的な女王ムーブに、葉は「アハハ、御門、よろしくなー」とへらへら笑い、ホロホロたちは「あのアンナを完全に手懐け(?)やがった……」と戦慄している。

 

本来の歴史であれば、蓮の死と葉の棄権で血反吐を吐くような絶望のどん底にいるはずだったふんばり温泉チーム。

だが、俺というバグ物件のせいで、歴史は完全に崩壊し――気付けば俺は、世界をバグらせた対価として、恐山アンナの専用ATMという、別の意味で最悪にめんどくさい不条理(日常)へと巻き込まれていくのだった。

 

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