バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチの里の特設本戦会場、ハオ様の隣という最高位の特等席。
俺――御門蓮夜は、ハオ様から向けられる「世界ごと僕を狂わせてみせろ」という全肯定の重すぎる霊圧を背に受けながら、片手に持ったスマートフォンを死んだ魚のような目で見つめていた。
画面に表示されているのは、次々と届く『カード利用明細』のポップアップ通知。
『パッチ・グランドホテル:ルームサービス(最高級焼き肉セット×5) 決済完了』
『パッチ・グランドホテル:スパ・エステ特別コース(恐山アンナ様名義) 決済完了』
『パッチ・グランドホテル:ヴィンテージワイン、および高級スイーツ盛り合わせ 決済完了』
「……あいつら、マジで容赦ねえな。人のカード(ブラックカード)だからってレバレッジ最大級で決済してやがる……」
あまりの決済の嵐に、俺は思わず白目を剥きそうになっていた。
昨日、木陰で葉たちの簡易テント暮らしという世知辛い金欠の現状を聞き、事なかれ主義のQOL向上策としてパッチの里の最高級ホテルを俺持ちで手配してやった。そしたら案の定、あの恐山アンナに「公式ATM」として強制認定され、今やふんばり温泉チームの全遠征費と彼女のエステ代まで俺のツケに回されている。
「ククッ……あははは! どうしたんだい、蓮夜。そんなに面白い顔をして画面を睨みつけて」
隣に座るハオ様が、俺の死にかけた表情を見て、心底愉快そうに、そして底知れない愛おしさを湛えた目で覗き込んできた。
「ハオ様、笑い事じゃないですよ。僕、別の意味で完全に搾取されてます。あの麻倉くんの嫁(アンナさん)、僕がハオ様の弟子で巫力50万のバグだって知っても1ミリも動じずにATM扱いしてきましたからね。ハオ様への恐怖より、タダで高級ホテルに泊まれるレバレッジの方が勝つとか、あの人まじでどんな精神構造してるんですか」
「なるほど、それは傑作だね。千年の因縁だの、人類の救済だのという僕の舞台(原作)を君の気まぐれで木っ端微塵に崩壊させたと思えば、今度は葉の許嫁に別の意味で毟られている。……僕の愛しい旅人が、僕以外の存在にそんな風に振り回されているのを見るのは少々嫉妬を覚えるけれど、君が困っている姿は本当に可愛いよ」
ハオ様は細い指先で俺の頬をそっと撫で、クスクスと笑い続ける。
花組のマチルダも「なによレンヤ、葉たちにはそんな高級ホテル奢って、私たちにはタルトだけなわけ!? ずるい、今日の夜はもっと高いスイーツね!」と便乗して小突いてくる始末だ。
だが、俺はそこでフッ、と不敵な笑みを口元に刻み、スマートフォンの画面をスワイプして別のアカウントのアプリ画面を開いた。
「ま、これくらいじゃ僕の富豪のセーフティネットは1ミリも揺らぎませんけどね。舐めないでほしいな、現代日本の金融知識を」
画面に映し出されたのは、FX(外国為替証拠金取引)のレバレッジ最大級のポジション管理画面、そして世界中の主要な『株・先物取引』のポートフォリオ。
俺には前世の知識(原作知識)だけでなく、現代日本の経済動向の記憶もある。どの株が跳ねるか、どの通貨ペアがどのタイミングで暴落し、どの先物が爆騰するか、そのビッグデータがバグ魂の脳内に完璧にインプットされているのだ。
パッチの里の奇妙な狂騒の裏で、俺は秒単位で数億単位の資金を動かし、世界中の市場(マーケット)から富を文字通り『吸い上げ続けて』いた。
ピコン、ピコン、とカードの利用通知が届くたびに、それの何百倍、何千倍もの利益確定(利確)の通知が画面を埋め尽くしていく。
「あいつらがルームサービスで数万、数十万使おうが、僕が画面を1タップするだけで数千万の利益が出る。ただそこにあるだけの数字の暴力なら、僕だって負けませんよ。アンナさんが僕をATM扱いするなら、僕は世界中の金融市場を僕の個人ATMにして、無限に稼ぎまくってやるだけです」
「……へぇ、凄い画面ね。数字がバグみたいに増えてるわ」
カンナが煙管を燻らせながら、俺の画面に並ぶ桁外れの資産残高を見て、呆れたように、だがどこか感心したように微笑んだ。
「素晴らしいよ、蓮夜。君は本当に不条理の塊だ。力(巫力)の質量だけでなく、人間の作った社会のシステム(金)すらも、君の我が儘のままに手懐けている。君という存在そのものが、この世界に落ちた最大の幸運(バグ)だ」
ハオ様がさらに深く俺の肩を抱き寄せ、その瞳に狂おしいほどの執着を滾らせる。
本来の歴史であれば、蓮の死と葉の棄権によって血反吐を吐くような絶望のどん底にいるはずだったシャーマンファイト本戦。
それが、俺というバグ物件のせいで歴史は完全に崩壊し――ふかふかのベッドで最高級のルームサービスを貪る葉たちと、それを秒速で稼ぎまくるFX富豪の俺、そしてそれを見て愉悦に浸るハオ様という、誰も見たことのない『不条理で最高に贅沢な日常』へと、世界はどこまでもバグり散らかしていくのだった。