バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
シャーマンファイト本戦の熱気が渦巻く中、パッチの里の管理本部――十祭司たちが集う秘匿室では、いつもとは全く異なるベクトルの、極めて現実的かつ異常な激震が走っていた。
「……信じられん。一体何が起きているんだ」
十祭司の一人が、端末に表示された里の決済データを見つめながら、ガタガタと椅子の脚を鳴らして立ち上がった。
画面に並んでいるのは、パッチの里が運営する最高級ホテル『パッチ・グランドホテル』の、過去最高額を瞬時に塗り替えた驚異的な売上グラフ、および信じられないほどの速度で処理されていく莫大な額の決済データ(トランザクション)の山だった。
「麻倉葉のふんばり温泉チーム、および道蓮の一派が、昨夜からあの最高級ホテルにチェックインし、ルームサービスやエステ、ヴィンテージワインを湯水のように消費している。……その支払いは全て、ただ一人の少年の名義のブラックカードから、一瞬の遅延もなく全額一括で決済されているぞ!」
「御門、蓮夜……!」
シルバがその名前を口にし、驚愕と、それ以上の深い感情をその表情に浮かべた。
ふんばりヶ丘の一般家庭のガキ。中学の時に自分がシャーマンの資格を与えたあの少年が、まさかハオの弟子となり、50万の質量で死生観の理(泰山府君祭)を書き換えただけでなく、パッチの里の経済(インフラ)すらも裏から完全に支配し始めているのだ。
「馬鹿な……! あの少年の資金源は一体どうなっている!? パッチの里の物価は、世界のセレブですら躊躇うほど高く設定してあるはずだぞ。それなのに、あの麻倉アンナという少女がATM代わりにどれだけ無茶な決済を繰り返しようが、即座に『利確(利益確定)』のデータが裏で何十倍もの資金を補填し続けている……。世界の金融市場(マーケット)が、まるで彼の私設金庫であるかのように機能しているではないか!」
十祭司たちが冷や汗を流し、その底知れない「数字の暴力」に戦慄する。
巫力50万という規格外の力だけでなく、人間社会のシステム(金)すらもレバレッジ最大級で手懐け、バグのように稼ぎまくっている少年の実態。十祭司のネットワークを以てしても、彼のポートフォリオの全容を掴むことは不可能だった。
しかし――その深刻な空気の片隅で、当のシルバや、本来なら道蓮に殺害される運命を蓮夜の介入によって免れて生き永らえているクロム、そしてパッチ族の最高権力者である『族長』までもが、耐えきれないといった風に狂喜の声を上げた。
「素晴らしい……! 素晴らしいぞ、御門蓮夜! 正直、今回のシャーマンファイトは遠征費や里の維持費、我々パッチ族のレガシーな予算不足で、懐事情は火の車だったのだ! あいつがブラックカードを切りまくってくれたおかげで、一気に黒字化、大喜びだ!!」
パッチ族の族長は、黄金に輝く端末の売上画面を愛おしげになぞりながら、「おお……里の資金がバグのように増えていく……! これならパッチの伝統を守りつつ、最新のインフラ整備も格段に進むな! 偉大なるグレート・スピリッツよ、あの少年のブラックカードに祝福を!」と、完全にホクホク顔で大喜びしていた。
そして、かつて審査のために日本に滞在し、現代日本の「生活苦」を骨の髄まで体験していたシルバとクロムの二人は、売上データの向こうにいる蓮夜に対して、涙ぐみながら猛烈な感謝を捧げていた。
「ああ……わかるぞクロム。日本の物価、そして東京でのあのギリギリの生活……毎月の家賃や光熱費に追われ、コンビニの100円のパンすら躊躇っていたあの過酷な日々を思えば、飯代や宿代をすべて一括で持ってくれる御門がどれほど聖人か……! 私の給与未払い問題もこれで一発解決だ、彼には足を向けて寝られん……!」
「全くだシルバ! 審査員なんて泥臭い割にパッチの福利厚生は最低だったからな! あの恐山アンナにATM扱いされながらも、びくともせずに里の経済を潤してくれる御門には、もう大変感謝するしかない。あいつはハオの手先なんかじゃない、ただの『歩く救済のセーフティネット』だ!!」
「おい、お前たち! 族長まで一緒になって何を言っているんだ! 奴はハオの手先なのだぞ! 警戒を怠るな!」
「手先だろうがバグ物件だろうが知るか! 支払いが100%保証された超富豪のVIP顧客だぞ!? むしろもっと部屋のグレードを上げて最高級のシャンパンを勧めろ!」
深刻な脅威としてマークする一部の硬派な十祭司たちと、財布と里の予算が潤って完全に御門蓮夜を神聖視し始めた族長、そして日本での生活苦から救われて大変感謝しているシルバやクロムたち。
千年の歴史を背負うパッチの十祭司たちすらも、俺の放った現代日本の金融レバレッジによって、内側から完全に真っ二つに分断(バグらせる)されていた。
◇
そんな里のドタバタなど知る由もない。
特等席の最高のリザーブシートに座る俺は、相変わらずハオ様に肩を抱き寄せられ、マチルダたちに「ねえ、今日の夜はホテルのスパに私たちも行っていい!?」とねだられながら、のんびりとスマホをタップしていた。
「パッチ族の経営陣、僕の決済データを見て今頃大喜びしてるだろうなぁ。シルバさんやクロムさんあたり、日本でのあの世知辛い生活苦を知ってるから、予算不足の福利厚生が潤ってホッとしてるんじゃない? 族長のサイフもパンパンにして、ちょっとした資本主義のレバレッジをかけてやったよ」
俺が不敵に笑うと、ハオ様はククッと喉を鳴らし、これ以上ないほど狂おしい全肯定の瞳で俺の頬を指先でなぞった。
「本当に君は面白いね、蓮夜。力だけでなく、僕の用意したパッチの里のシステムまで、君の我が儘(数字)で完全に崩壊させ、手懐けてしまうなんて。世界が君のレバレッジでどこまでも形を変えていく。……さあ、次はどんな不条理で、僕を楽しませてくれるんだい?」
神の隣の特等席。
壊れた世界と、最高に贅沢な日常の真ん中で、存在しないはずのバグ(俺)は、今日も秒速で数億を稼ぎながら、この世界の狂騒を誰よりも全力で楽しむのだった。