バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
道蓮と葉の激闘を見届けたその日の深夜。
俺は家族が寝静まったのを見計らい、ふんばりヶ丘の裏山へと足を運んでいた。
鬱蒼と茂る木々に囲まれた開けた場所。ここが俺とサクヤの秘密の修練場だ。
「――サクヤ、いくぞ」
《御意に、主》
右手の白銀の指輪を媒介に、俺は魂の奥底から巫力を引き出す。
空間がかすかに歪み、白銀の光を纏ったサクヤの霊体が現れる。俺はその膨大なエネルギーを、サクヤが背負う光の弓へと集中させていった。
生まれながらに宿る【1万】の巫力。
一般家庭の生まれとしては天文学的な数値であり、現段階の麻倉葉や道蓮を遥かに凌駕する圧倒的なアドバンテージ。だが――。
「……くそ、やっぱりダメか」
光の弓に込めた巫力を解放し、空へと放つ。
凄まじい風切り音と共に光の一矢が夜空を切り裂いたが、俺は自分の両手を見つめて、忌々しそうに顔をしかめた。
(伸びない。……どれだけ泥臭く訓練を繰り返しても、巫力がこれ以上、1ミリも増えない)
転生してから今まで、前世のゲームや漫画の知識を総動員して、効率的な巫力の鍛錬を続けてきた。
しかし、ここ数年、俺の巫力値は「1万」の境界線でピタリと止まったまま、完全に頭打ちになっていた。
前世の知識が俺に告げている。
この世界には、いずれ巫力「125万」という絶望的な神の領域を持つ未来王――ハオが現れる。
今の俺は葉たちより強くても、あの千年の怪物を前にすれば、1万の巫力など塵に等しい。事なかれ主義を貫くにしても、美食を貪るにしても、ハオという不条理に干渉された時点で全てが水の泡になるのだ。
(圧倒的な強さに憧れて、このバグの身体に生まれたはずなのに。一般家庭の魂の限界ってやつか……?)
《主、あまりご自身を責めなさるな。主の隠形や巫力の制御技術は、すでに一級の領域にございます。ただ……》
サクヤが心配そうに、しかしシャーマンとしての冷徹な事実を口にする。
《巫力の本質は『心の強さ』。そして、それを爆発的に増幅させるには、正しい理(ことわり)と、より高位の術の構造を知る必要があります。我ら独自の独学では……この1万の壁を越える術理が、根本的に足りぬのです》
「術理、か……」
サクヤの言葉が、重く心に突き刺さる。
どれだけ強力なエンジン(1万のセンス)を持っていても、それをさらに拡張するための「正しい設計図」が俺にはない。麻倉家のような千年の歴史も、パッチ族のような伝統的な教えも、しがない一般家庭の俺には届かないのだ。
「原作知識はある。ハオの脅威も、この先起きるシャーマンファイトの流れも全部知ってる。……なのに、肝心の自分の力が、これ以上伸びないなんてな」
乾いた笑いが口から漏れる。
特等席の傍観者を気取っていたが、このままではただの「ちょっと強いモブ」として、ハオの起こす大津波に呑まれる未来しか見えない。
(……いや、まだ手はあるはずだ)
俺は夜空に浮かぶ冷たい月を見上げた。
正攻法の修行の成果が出ないなら、もっと不条理な、バグのような手段を使ってでも壁をぶち破るしかない。
(正しい理、五行の応用、そして魂を拡張する術――。それを知っている奴のところへ、自ら飛び込むしかないってわけか)
俺の脳裏に、千年の孤独を抱くあの「未来王」の姿が過る。
パッチ族の里、シャーマンファイトの本戦。そこが、俺がこの見えない壁を壊すための、唯一のターニングポイントになるかもしれない。
「……待ってろよ、ハオ。お前から、その力のすべてを強奪してやる」
事なかれ主義の傍観者は、自らの限界を悟ったその夜、世界の行く末をハッキングするための危険すぎる『決意』を、密かに胸に抱くのだった。