バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチの里の喧騒から隔絶された、最高級ホテル『パッチ・グランドホテル』の最上階。
そこには、パッチ族の族長が俺のブラックカード(数字の暴力)で潤った予算を注ぎ込んで突観工事で完成させた、パッチ伝統の石造りと現代のラグジュアリーが融合した、文字通りの『天空露天風呂』が存在していた。
ザザーー、と心地よい湯の音が響く中、広大な湯船を満たしているのはただのお湯ではない。
夕暮れ時のパッチの山々に反射してキラキラと眩い輝きを放つ、湯一面に惜しげもなく浮かせられた【金粉】の数々。
そして、その突飛な成金仕様の大浴場は、パッチ族の粋な(?)計らいによって、水着着用を義務付けた特別仕様の『混浴』として開放されていた。
「いやぁ、マジで極楽極楽。日本人としては、やっぱりこれくらいのクオリティがないとやってられねえよなぁ」
湯船の縁に頭を預け、トランクス型の水着姿でへらへらとしたいつもの緩い笑顔を浮かべているのは麻倉葉だ。
その隣では、金粉が肌に張り付くのも気にせずに湯に浸かり、ふぅ、と深い溜息を漏らしている道蓮の姿がある。
「ふん……。ハオの手先の施しなど受けるつもりはなかったが、この湯、そしてこの金粉の精神安定効果……認めざるを得ん。道家の地下にある大浴場すらも、この贅沢さには及ばぬな」
「だろ? ホロホロもチョコラブも、ルームサービスのアブリ肉を限界まで食った後、あっちで死んだように浮いてるしな。本当に御門には感謝レバレッジ最大級だわ」
本来の歴史――原作のルートであれば、彼らは今頃、蓮の死という絶望の十字架と、葉の棄権という重すぎる不条理に血反吐を吐き、飯の味も宿の冷たさも分からないほど精神的に追い詰められていたはずなのだ。
それがどうだ。
俺という存在しないはずのバグ物件が、気まぐれに『泰山府君祭』で蓮を生き返らせ、FXと株で稼ぎまくったあぶく銭をアンナ経由で湯水のように注ぎ込んだ結果、彼らはシャーマンファイト本戦の真っ最中だというのに、完璧にQOL(生活の質)を限界突破させて英気を養っていた。
歴史は、もう元の形を保っていなかった。完全に、根底から崩壊している。
「ちょっと、男ども。静かにしなさいよ。せっかくの風情が台無しじゃない」
少し離れた湯船の特等席から、冷徹な声を響かせたのは黒い水着に身を包んだ恐山アンナだ。その隣には、俺が用意した焼き菓子を優雅に口へ運ぶカンナ、黒のワンピース水着ではしゃぐマチルダ、そしてゴスロリ風の水着を着て無表情に湯をパチャパチャさせているマリオンという、花組の魔女たちまでもが同じ湯に浸かっていた。
ふんばり温泉チームとハオ陣営の主力。本来なら殺し合うはずの両陣営が、水着姿で一つの金粉風呂を共有している。この世のどこを探してもあり得ない、完全なるバグ空間がそこにあった。
「……はは。ま、もうどうにでもなれ、だな」
湯船に設置された石のベンチに腰掛け、パッチ族が喜んで運んできた最高級の冷酒(もちろん俺の金だ)をクイッと煽りながら、俺――御門蓮夜は小さく笑った。
前世の記憶にある原作なんて、もはや1ミリも役に立たない。
「ちょっと待ってよ御門くん!! なんで君、この緊迫したシャーマンファイト本戦の真っただ中に、ハオ陣営の女の子たちや葉くんたちと混浴で、しかも優雅にお酒なんて飲んでるのさーーっ!?」
湯船の隅で、頭にチョコンと白いタオルを乗せた小山田まん太が、限界突破した状況についていけず、顔を真っ赤にして叫び声を上げた。その小さな身体を激しく震わせながら、俺のお猪口を指さしてツッコミを入れてくる。
「君、一応僕たちと同い年の中学生でしょ!? 未成年飲酒だよ! 法律的にも完全アウトだし、そもそも何でハオが隣で普通に寛いでるのさ! 葉くんも蓮くんも、危機感が仕事放棄してない!?」
まくしたてるまん太に対し、俺はお猪口を片手に、湯煙の向こうへ飄々とした視線を向けながら言い放った。
「落ち着きなよ、まん太。忘れたかい? ここはアメリカだ。日本の法は適用しない」
「アメリカだからってそういう問題じゃないよ! アメリカは日本より厳しくて飲酒は21歳からのはずだよ! どっちにしろアウトじゃないかーーっ!!」
「やだなあ。ここは一般社会に知られていない、パッチ族の聖地の中だよ? 外部の警察が踏み込んでくるわけでもないし、要するに『バレなきゃいい』のさ。それに族長やシルバさんたちの懐を潤した僕が、ここで何をしようが全員笑顔で見逃してくれるよ。なんならこれ、パッチの特選冷酒だしね」
「身内に都合のいいレバレッジをそんなところで最大級に利かせないでよ!! 法律以前の超カオス空間だよここ!!」
「アハハ、いいじゃんまん太。御門が奢ってくれたんだから、細かいことは気にしなさんなって」
「貴様、小山田! 御門蓮夜の注いだ酒を無碍にするな! 道家の礼儀としてはこれも一興……!」
「葉くんも蓮くんも完全に毒されてるよぉぉ!!」
頭を抱えてお馴染みの絶叫をあげるまん太。そんな一般人の常識的なツッコミすらも、この黄金の湯煙の中ではただの心地よいBGMにしかならなかった。
「おや、蓮夜。随分と賑やかなお友達だね。……それはそうと、僕にもそのお酒を一口おくれよ」
トランクス姿のハオ様が、湯煙の向こうから音もなく俺の隣へと滑り込んできた。湯面に浮かぶ金粉が、彼の長い髪としなやかな肢体に絡みつき、不気味なほど神聖で美しい絵面を形成している。
「ハオ様、これ結構強いですよ?」
「ククッ、それは素晴らしいね。……ん、美味い。君が世界中の金融市場(マーケット)から吸い上げた数字の味がするよ」
俺の手からお猪口を奪い、楽しそうに酒を口にするハオ様。
その細い指先が、湯の中で俺の太ももをそっと撫ぜ、その深い双眸には狂おしいほどの親愛と執着が滾っていた。
「君が数字の暴力でパッチの里を買い叩き、葉たちを骨抜きにし、僕の千年の孤独すらもこの贅沢な日常で侵食していく。君という最高のバグに、僕は本当に完全に狂わされているよ。……世界なんて、君の我が儘のままに、もっと派手に崩壊させておしまい、僕の愛しい旅人」
「ひ、ひえぇぇ……なんかハオのセリフのレバレッジが重すぎて、僕の胃に穴が空きそうだよ……!」
まん太がさらに青ざめてお湯に沈んでいく。
「御門ー! お前ハオとばっかり飲んでないで、こっちにも美味い酒回せよー!」
「レンヤ! お風呂上がりの高級スイーツの決済、もう通しておいたからね!」
葉がへらへらと手を振り、アンナが当然のように端末を掲げる。
自分が壊し、変え続けている誰も知らないシャーマンキングの物語。
存在しないはずの傍観者(俺)は、神の隣という絶対の特等席で酒を煽りながら、湯煙の中に消えていく本来の歴史の残滓を、最高にゾクゾクするほどの愉悦と共に、ただ愛おしく見つめているのだった。