バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
ピーィィィィン――!!
十祭司が吹き鳴らす神聖な角笛の音が、抜けるような青空の下、特設本戦会場に響き渡る。
いよいよ始まった麻倉葉率いる『ふんばり温泉チーム』の次なる公式戦。
会場の最上段、ハオ様の隣という最高位の特等席に深く腰掛けた俺――御門蓮夜は、ジャージのポケットに両手を突っ込んだまま、眼下のステージを見下ろしていた。
マチルダが「ねえレンヤ、お風呂上がりの高級メロンパフェ、美味しかったわ! 今日勝ったら次はマカロンのタワーね!」と無邪気におねだりしてくるのを「はいはい」といなしながら、俺の視線はステージの4人に固定される。
(……おいおい、昨日よりさらに霊圧の密度がバグってやがるな)
ステージ中央に立つ麻倉葉、道蓮、ホロホロ、チョコラブ。
俺の持つ原作の知識であれば、彼らは今頃、蓮の死と蘇生、そして葉の『棄権』という重すぎる宿命の十字架を背負って、精神的にも肉体的にも満身創痍で泥沼の戦いを繰り広げているはずだった。
だが、現実はどうだ。
俺という存在しないはずのバグ物件(ATM)のせいで、彼らはパッチの最高級ホテルにチェックインし、金粉入り露天風呂で英気を養い、最高級のルームサービスで栄養を限界突破級に摂取した。結果として、QOL(生活の質)とモチベーションが最高潮に達した彼らの身体からは、本来の歴史では絶対に到達しているはずのない、超高密度の霊圧がご来光のように溢れ出ていた。
「ハハ、凄いね蓮夜。君が数字の暴力で彼らの環境を全肯定してあげたおかげで、彼らの魂のピーキングは完全に僕の想定(シナリオ)を置き去りにして跳ね上がっているよ」
隣に座るハオ様が、ククッと嬉しそうに、そして底知れない愛おしさをその双眸に滾らせて喉を鳴らした。
「いくぜ、阿弥陀丸! ――『スピリット・オブ・ソード・白鵠』!!」
ステージが激しく振動した。
葉の掲げた名刀・春雨とフツノミタマの剣から放たれたのは、本来の本戦中盤以降でようやく開花するはずの、あの白銀の巨大な甲縛式オーバーソウル。
昨日、俺が彼らに見せつけた『50万の質量』、そしてそれをもたらしたハオ様の『125万という数字』。あの理不尽な壁を間近で体感したからこそ、葉の魂は「あれを超えなければハオには届かない」と本能で理解し、本来の時間軸を数段飛び越えて、圧倒的な神の領域の力を引き出していた。
「遅れるなよ、葉! 俺の『黒刀・刃導』が、その程度の質量で満足すると思うな!」
死の淵から泰山府君祭で強引に引き戻された道蓮が、宝雷剣を構えて音速を超える超スピードで突撃する。
一度死線を覗き、さらに俺の50万の霊圧を浴びたことで、彼のオーバーソウルは禍々しいまでの鋭さと、圧倒的な巫力の凝縮度を身にまとっていた。放たれる電撃の質量が、ステージの空間そのものをバチバチと焼き焦がし、敵陣を文字通り一瞬で両断していく。
「オラオラァ! 御門の高級アブリ肉パワー、舐めんじゃねえぞ!」
「そうそう、僕のギャグのキレも最高級ベッドのおかげで限界突破さ!」
ホロホロの放つ絶対零度の氷河がステージを一瞬で凍土へと変え、チョコラブのジャガーの霊が音速の爪となって、敵の防陣を紙切れのように切り裂いていく。
対戦相手のチームも、本来なら葉たちを大苦戦させるはずの実力派だった。だが、ふんばり温泉チームの発する「50万のバグ物件(俺)を超えなければならない」という狂気的なまでの執念と、完璧にケアされた肉体の前には、彼らの術式などただの野次馬の玩具に過ぎなかった。
ドゴォォォォン!!
圧倒的な不条理の刃がステージを真っ二つに叩き割り、勝負は一瞬にして決した。
割れんばかりの大歓声と、パッチの十祭司たちの震え声での勝者アナウンスが会場に響き渡る。
砂埃の中、葉は春雨を肩に担ぎ、キャップのつばをくいっと上げて、最上段のこちらの特等席を見上げてきた。
そして、ニッと挑戦的な笑みを浮かべ、口パクでこう言ったのだ。
『追いついてみせるぜ、御門』
「ハハ、言われてるよ、蓮夜。君というイレギュラーを超えようと、主役が牙を剥いている。どうするんだい、僕の愛しい旅人」
ハオ様が楽しそうに俺の顔を覗き込んでくる。
「上等じゃありませんか。僕の50万も、ハオ様の125万も、ただそこにあるだけの数字です」
俺はジャージのポケットの中で、左手の白銀の指輪を親指でそっとなぞり、不敵な笑みを深く口元に刻んだ。
「僕が壊し、崩壊させた歴史のその先で、あいつらがどこまで僕の質量に肉薄してくるのか……。この神の隣という最高のリザーブシートから、飽きるまでたっぷり批評(楽しんで)させてもらいますよ」
原作知識なんて、もう何の役にも立たない。
自分が変え続けている誰も知らないシャーマンキングの物語。存在しないはずの傍観者は、加速する世界の崩壊を、最高にゾクゾクするほどの愉悦と共に手懐けていくのだった。