バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
――ドゴォォォォォン!!!
パッチの里のさらに奥、荒涼とした岩座が天を突く忘却の谷。
かつてX-LAWS(エックス・ロウズ)を創設したラキスト・ラッソと、彼に正義を叩き込まれながらも今は袂を分かったマルコ。
「大天使ミカエル」と「堕天使ルシフェル」という、かつての師弟にして因縁の絶対正義と絶対悪の戦いは、互いの媒介をボロボロに砕き合う凄惨な極限状態を迎えていた。
「マルコ……お前の正義など、ハオ様の前にはただの児戯。滅びるがいい」
ラキストの持霊・ルシフェルが、圧倒的な漆黒の質量をもってマルコを圧殺せんと迫る。
「くっ……ジャンヌ様……! 我が命を賭してでも、この悪を……っ!」
満身創痍のマルコが、叩き割れた眼鏡の奥から血の涙を流し、相打ち覚悟でルガーP08を構えた。
二人の狂信が火花を散らし、まさに命の全てを燃やし尽くそうとしたその刹那。
――キィィィィィィィン……。
世界の時間を物理的に引き絞るような、圧倒的かつ不条理な「白銀の霊圧(50万)」が、二人の因縁の戦舞台に土足で踏み込んできた。
凄まじい衝撃波が走り、ミカエルとルシフェルの双方が、その異常な質量の介入に弾かれるようにして後退する。
「な……にっ!?」
ラキストがその厳格な眉をひそめ、闇の奥を睨みつける。
マルコもまた、膝をついたまま、その白銀の輝きに息を呑んだ。
「お前は……麻倉葉の傍らにいた、あの『バグ物件』……!?」
ジャージのジッパーをチリチリと鳴らしながら、煙の向こうからのんびりと歩み出てきたのは、御門蓮夜だった。ポケットに手を突っ込み、パックのジュースを啜るそのユルさは、この血生臭い戦場において狂気的なまでに浮いている。
だが、驚くべきはその背後だ。
数日前、X-LAWSの別働隊を文字通り「破滅」に追い込んだはずの、ハオ陣営のマークを掲げたあのモブ債務者どもが、包帯塗れの身体で不気味に静まり返り、御門の「私兵」のように控えていたのだ。
「やあ、マルコ。それにラキスト。おじさんたちの熱い同窓会(タイマン)のところ悪いんだけどね。こっちもビジネス(投資の回収)があってさ」
蓮夜は不敵な笑みを深く口元に刻み、左手の白銀の指輪を弄んだ。
「先日、うちの債務者(モブ)たちが、X-LAWSの別働隊の奇襲計画を『完全に不渡り(処理)』にしましてね。その際に出た損害賠償と、今回の戦舞台の劇場の独占権……すべてひっくるめて、僕が『買い叩き(買収)』にきたんだよ」
「貴様……! 我々の命を賭した正義を、神聖なる戦いを、そんな汚悪な数字の話で汚すな!!」
マルコが激昂し、ルガーの銃口を蓮夜に向ける。だが、蓮夜の背後に控えるモブどもの目が、狂信的な殺意を帯びて一斉にマルコを睨み据えた。
「――そこまでですよ、マルコ」
その時。荒涼とした岩場に、凛とした、だがどこか痛々しく震える少女の声が響き渡った。
空間が眩い黄金の光に包まれ、重厚なアイアン・メイデン(鉄の処女)の檻が音を立てて出現する。
檻の奥から現れたのは、X-LAWSの精神的支柱であり、絶対の聖女――アイアン・メイデン・ジャンヌだった。
ジャンヌの放つ神聖な霊圧は、本来なら世界を浄化するはずの光。しかし、今の彼女の瞳には、目の前の「御門蓮夜」という少年に対する、底知れない動揺と戦慄が隠しきれずに揺らいでいた。
「御門蓮夜……。私は檻の奥から、あなたの仕掛けた不条理を見ていました。ハオは力で世界を蹂躙しようとする悲しい悪。ですが、あなたは違う。あなたは、人間が必死に生き、悩み、紡いできた運命や正義の盤面そのものを……ただの『お遊び(投資)』として消費している。神聖なるシャーマンファイトの因果を、あなたの我が儘でバグらせている……!」
ジャンヌの痛烈な告発。神の代弁者たる聖女の言葉に、マルコたちは「ジャンヌ様……!」と胸を熱くする。
だが、御門蓮夜は、その聖なる光を浴びながらも、ただフッ、と鼻で笑っただけだった。
「聖女様(ジャンヌ)、君の言う『正義』って、要するに元本保証のない、ただの感情論のハイレバレッジ(過剰投資)だよね」
「な……ッ!?」
ジャンヌの息が止まる。
「中世の拷問器具に引きこもって、罪なきモブを私刑(粛正)して、それが世界の平和に繋がると本気で信じてる。やってることはただの国際指名手配犯のテロ行為なのに、神の御名という免罪符(担保)を勝手に偽造して、自分の人生をドブに捨ててる。……ねえ、ジャンヌ。君のその可哀想な自己犠牲のレバレッジ、一体誰が還付(救済)してくれるの?」
「黙れ……! 黙れバグ物件がぁぁ!!」
マルコが絶叫するが、蓮夜の冷酷な現代的正論(システム論)は、ジャンヌの精神の根底を容赦なく抉っていた。
しかし、聖女ジャンヌの「絶対信仰」は、そこまで脆くはなかった。
彼女は溢れそうになる涙をグッと堪え、血が滲むほどに拳を握りしめると、真っ直ぐに蓮夜を射抜くような強い眼差しを向け、凛とした声で毅然と言い返した。
「違います……! 私たちの歩みは、そんな乾いた数字(計算)などで測れるものではありません! どんなに無様でも、どれほど不条理に買い叩かれようとも、悪を憎み、世界から悲しみをなくしたいと願う心の祈りこそが、私たちの本質なのです! 損得の帳簿だけでしか世界を見られないあなたには、この命を賭した『絶対の正義』が放つ本当の輝きなど、逆立ちしたって理解できません……!」
その渾身の反論に応じるように、大天使シャマシュの光が再び強烈な輝きを取り戻す。マルコもまた「そうだ……! 我々の信仰は不滅だ!」と血反吐を吐きながら叫んだ。
だが、御門蓮夜の口元に刻まれた冷笑は、さらに深く、暗く反転した。
彼はため息混じりにジュースのパックをポイと放り捨てると、左手の白銀の指輪をパチリと鳴らした。
「ああ、そう。心の祈り、ねえ。――じゃあさ、その『祈り(きれいごと)』とやらで、僕の持ってる実利(これ)を今すぐ論破してみてよ」
蓮夜がパッと手をかざすと、背後に控えていた包帯塗れのモブ債務者たちが、懐から次々とパッチの公式決済端末や、現代金融の契約書を掲げて不気味に笑った。
「君たちが『絶対の正義』を掲げてパッチの里の裏山でテロ紛いの裏工作を仕掛けていた間、僕はそのすべての被害、損害、そしてパッチ族への迷惑料を、僕個人のあぶく銭(FX資金)で全額『即日一括決済(立て替え)』してあげたんだよね。パッチの族長たちにも、すでに多額の寄付(ロビー活動)を通して、君たちX-LAWSを『ただの不法占拠者(犯罪集団)』として公式に認定するよう裏で手を回してある」
「な……んだと……!?」
マルコが顔面を蒼白に染める。
「君たちの高尚な祈りは、パッチの里のインフラを1ミクロンも潤さない。でも、僕の金はリアルにパッチの経済を回してる。今、このパッチの里において、君たちが大手を振って歩けているのは、君たちの正義が正しいからじゃない。僕が君たちの『損害(不良債権)』を買い取って、あえて生かして泳がせてあげてるからんだよ。――ねえ、聖女様。君がどれだけ神聖な祈りを捧げようが、現実に君たちの命を今この瞬間に担保(猶予)してあげてるのは、神様でもシャマシュでもない。僕の『実利(財布)』だよ?」
「う……あ……っ」
ジャンヌの口から、今度こそ完全に言葉が失われた。
どれほど崇高な精神論を唱えようとも、「自分たちの活動資金や存在基盤そのものが、目の前の悪徳のバグ物件によってリアルタイムで買い叩かれ、管理されている」という圧倒的な現実(実利)。
先ほどまで眩く輝いていたシャマシュの光が、今度は不渡りを出した手形のように激しく明滅し、ボロボロと粒子となって崩れていく。
だが、存在しないはずのバグ物件(俺)の取り立て(攻勢)は、まだここからが本番だった。
「さて、聖女様。いや……フランスの片田舎の、しがない羊飼いの少女(一般人)さん?」
「――ッ!?」
ジャンヌの細い肩が、今までにない質量でびくりと跳ね上がった。
マルコが「な、貴様……何を……っ!」と血相を変えて再び前に出ようとするが、俺の背後の債務者どもが冷酷な殺気でそれを完全に押し潰す。
俺はジャージのポケットから、パッチの里の最高級Wi-Fiで事前に調査(ダウングレード)しておいた、現代社会の戸籍や教会の記録データをホログラムで空中へと投影した。
「アイアン・メイデン・ジャンヌ。世界を救うために神に選ばれ、檻の中で血の涙を流す聖女……っていうのは、ラキストとお前(マルコ)が勝手に捏造した『投資詐欺の偽造パンフレット(設定)』だよね。ただの霊感の強い一般人の子供を拉致してきて、拷問器具に閉じ込めて聖女に仕立て上げ、世界中の信者から莫大な活動資金(寄付金)を募る。……ねえ、これ現代の法律だと、児童虐待と組織的詐欺罪のハイブリッド(一発アウト)なんだけど?」
「やめろ……! やめてくれ、それ以上は……っ!」
マルコが頭を抱え、まるで魂を直接毟り取られたかのように絶叫する。
ラキストすらも、漆黒のルシフェルを背後に佇ませたまま、何も言い返せずにただ苦い沈黙を守っていた。彼らが命を賭して築き上げてきた「純白の神話」の裏帳簿が、現代的なコンプライアンス(現実)によって白日の下に晒されていく。
神の御名という実体のない担保(偶像)で回していたX-LAWSという組織は、本日をもって完全に『債務超過(破産)』。活動資金の口座は、僕の息がかかった国際機関を通してすでに完全に凍結(ブラックリスト入り)させてある。
「私は……私は、ただ……世界から、悲しみを……っ」
檻から引きずり出された「ハダカの帳簿(ただの少女)」に戻ってしまったジャンヌが、子供のように声を上げて泣きじゃくる。
俺は立ち上がり、そんな彼女を冷たく見下ろしたまま――ふっ、と不敵な笑みを口元に深く刻み直した。
「というわけで、X-LAWSはこれにて解体処分(法的整理)。……だけどさ、ジャンヌ。君のその綺麗な魂のレバレッジまで、ここで紙切れ(破産)にして捨てるのは、投資家としてあまりにも勿体無いんだよね」
「え……?」
涙を浮かべたジャンヌが、信じられないというように俺を見上げる。
「だから、最後のチャンス(救済の一手)をあげるよ。僕のシステムへの引き込み(買収提案)だ」
俺は地面にしゃがみ込み、ガタガタと震える少女の視線に目線を合わせた。
「君の活動口座は凍結したけど、僕が個人資産(あぶく銭)でその全額を補填、いや、それ以上の『新規融資(セカンドチャンス)』を回してあげる。その代わり、君は今日から『聖女』を廃業しなよ。血の涙を流して誰かを私刑にするテロリストじゃなくて、ただの女の子として、僕が資金を融通(ホテル代全額負担)している麻倉葉たちの陣営に加わりなよ」
「葉くんたちの……仲間に……?」
「そう。あいつらは甘いからね。神様を騙った詐欺の設定なんて気にせず、君をただの友達として100%丸ごと受け入れてくれるさ。君はもう、拷問器具の中で世界の不条理を呪う必要はない。これからは葉たちの『友』として、ただの普通の人間として、これから先の不条理な世界を美味しく生きていきなよ。それが、僕の君に対する『投資(我が儘)』の条件だ」
冷酷な破産宣告の裏に用意されていた、あまりにも甘く、圧倒的に不条理な救済のクモの糸。
組織の欺瞞を暴かれ、居場所を失ったジャンヌにとって、それは唯一世界に踏みとどまるための、狂おしいほどに優しい「再融資(ローン)」だった。
「私は……ただの、私で……生きて、いいのですか……っ」
ジャンヌは俺から差し伸べられたその不遜なシステムを、今度は救いとしての涙を宿した目で「はい……やらせてください……!」と拝むようにして受け入れた。
聖女の偶像を完璧に解体しつつも、その存在を自らの陣営へと引きずり込み、葉たちの仲間として未来を再編集(リスケジュール)してみせた不遜なカリスマ。
「ククッ……あはははは! 痛快だね、蓮夜! 素晴らしいよ!」
日陰の奥から、ハオ様が狂おしいほどの愉悦を爆発させ、白いマントを翻しながら俺の肩を抱き寄せた。
「神話の偶像すらも剥ぎ取り、ただの少女にして自らのシステムに組み込んでしまうなんて。ハオ陣営の力すら必要としない、君だけの完璧な支配(バグ)だ。さあ、僕の愛しい旅人。この壊れた盤面の先で、次は僕にどんな極上の喜劇(ドラマ)を見せてくれるんだい?」
ハオ様の全肯定の霊圧が、忘却の谷の夜空を熱く包み込む。
本来の歴史を完全に崩壊させ、X-LAWSを書類上で完全解体しながらも、聖女ジャンヌを「葉たちの友人」という新たな駒として世界に再配置してみせた傍観者は、神の隣の特等席で再び不敵な笑みを深く刻み、次なる投資先へと飄々と歩みを進めるのだった。