バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
ハオの弟子(御門蓮夜)とその軍勢に散々名前をモジられ、泣き上戸の不条理劇で完封された、あの遭遇戦から数時間後。
パッチの里の近くに停泊している、X-LAWS(エックス・ロウズ)の移動本拠地たる巨大な【船】。
その厳格な軍規が漂う船内の一角、臨時に神聖な礼拝堂として設えられた作戦室の前に、巨大な鉄の拷問具『アイアン・メイデン』を台座に乗せた聖女――アイアン・メイデン・ジャンヌが静かに佇んでいた。
周囲では、リーダーのマルコが歪んだメガネを必死に直しながら、悪魔の申し子への怒りでまだワナワナと肩を震わせている。リセアラをはじめとする隊員たちも、ハオ組全員から大爆笑された屈辱に、船の鉄板の床を見つめながら重苦しい沈黙を守っていた。
そんな、シリアス(怒り)に満ちた船内の静寂を破ったのは、台座の上の聖女の、あまりにも純粋無垢な呟きだった。
「――マルコ」
「は、はい! メイデン様、いかがなされましたか! あの悪魔どもの呪詛(おねしょ)のプレッシャーで、お体に障りでも……っ!」
マルコが慌てて鉄の床に膝をつく。だが、ジャンヌは無垢なブルーの瞳をパチクリとさせ、痛々しい棘に身を焦がしながら、ずっと胸の奥で引っかかっていた『最大の不条理』を直球で問いかけた。
「……温泉って、何ですか?」
「…………は?」
マルコの思考が、一瞬で完璧にフリーズ(静止)した。
背後の隊員たちや女性隊員たちも、聖女の口から飛び出たあまりにも生々しい生活環境(ライフライン)のワードに、目玉を飛び出させて固まっている。
ジャンヌは首を少し傾げ、あの無地の黒パーカーの少年から突きつけられた「常識」を思い出すように、ポツリポツリと言葉を紡いだ。
「あの御門蓮夜さんは、私がいつも入っているこれは『お風呂』ではなく、ただ海の中に沈められて水責めされているだけの『ただの拷問』だと言いました。海は入るものではなく、眺めるか魚を釣るものだと……。そして、彼の高級ホテルには、本物の美味くて温かいご飯と、五行の理で沸かした極上の『温泉』がある、と」
「な……な……何という……っ! あの悪魔の申し子、メイデン様にそんな世俗的で不届きな常識(ライフハック)を吹き込みおってーーーっ!!」
マルコが額に青筋を浮かべて血を吐きそうなほど絶叫する。
だが、ジャンヌの純粋すぎる疑問の波状攻撃(ハッキング)は、それだけでは止まらなかった。
「マルコ、教えてください。温泉とは、本当に私がいつも入っているあの冷たい海(拷問)よりも、温かくて心地よいものなのですか? 私は今まで、これが普通のお風呂(神聖な儀式)なのだと思って、毎日針の箱の中で耐えていたのですが……」
「ひ、ひええぇぇっ……! メイデン様が、お風呂環境の格差(不満)を訴えられている……っ!?」
「確かに、毎回全身血だらけになって冷たい海に沈められるのって、客観的に見たらただの水責め拷問よね……っ!?」
リセアラたち女性隊員が顔を真っ赤にしてガタガタと震えだし、鉄壁の規律を誇る船内の空気は「聖女の衛生管理の危機」という別の意味での恐怖に包まれた。マルコたちが正義の名の元に必死に隠蔽(?)してきた、ジャンヌのあまりにも凄惨すぎるお風呂事情。それが、蓮夜の放ったただの一言によって、完璧に「生活環境の理不尽」として本人にハッキングされてしまったのだ。
「ち、違いますメイデン様! あれは神聖な巫力を高めるための聖なるジャッジであって、決してマルコポーロ……いや、私があなたを騙して海で水責めしていたわけでは……っ! 温泉などというものは、悪魔の軍勢が堕落するために作ったただの温水プールですッ!!」
マルコが大汗を流して必死に言い訳(ツッコミ)をカマすが、ジャンヌはハオ組の魔女たちにまで「可哀想すぎるわよーっ!」と大号泣しながら糾弾されていたことを思い出し、少しだけ寂しそうな顔をした。
「……そうなのですか。でも、ハオ組の女の子たちも、あのお湯に入ると肌がつるつるになって、お肉が柔らかくなると泣いていました。私も、たまには冷たい海ではなく、その温かい温泉というものに入って、普通の女の子のように美味しいご飯を食べてみたいです……」
「メイデン様ァァァーーーーッ!!! 完全にあの悪魔の弟子のラグジュアリー救済提案(おおもてなし)に胃袋と心がハッキングされかけているぅぅぅーーーーッ!!」
冷たい鉄の船内で、マルコはついに泡を吹かんばかりに床に転がって絶叫した。
正義のプライドを完璧にへし折られたX-LAWSの面々が、聖女の「お風呂への憧れ(自覚症状)」という不穏すぎるフラグの前にガタガタと震え、ブツブツと聖書を唱え始めるという最悪にシュールな感想戦。
当の本人の御門蓮夜が、高級ホテルの部屋で「今日のご飯はハンバーグだぞー」とハオ様やハオ組の面々と優雅に過ごしているまさにその裏側で。
事なかれ主義の男によるラグジュアリーな本戦ロードマップは、絶対正義の聖女の胸にまで「温泉への飢餓感(特大のフラグ)」を完璧に刷り込んだまま、さらに予測不能な混沌へと、不敵に動き出そうとしていた。