バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチ族運営の最高級ラグジュアリーホテル、特別大広間。
湯上がりの聖女・アイアン・メイデン・ジャンヌが、レバレッジ25倍のスピードでとろける黒毛和牛ハンバーグに感動の涙を流していた、まさにその食事の最中だった。
「――メイデン様! 追加の『聖なる供物(おかわり)』をお持ちいたしましたッ!!」
突如として大広間の襖が左右にバァンと開き、凄まじい風圧と共に現れたのは、パッチ族の十祭司――シルバとカリムだった。
しかも、普段の威厳ある祭司服ではなく、ホテルのロゴが金刺繍された最高級の和風ハッピを羽織り、足元は一流のホテルマンのごとき軽快なステップを踏んでいる。彼らが掲げる銀のトレイの上には、追加の特大ハンバーグが鎮座していた。
「え、シルバさん……? 何やってるんですか、あなたたち」
蓮夜が箸を止めてドン引きの声を漏らす。
「何とは失礼な、御門蓮夜様! 我々はパッチ族の誇り高き十祭司にして、当ホテルのコンシェルジュ!」
シルバがキリッとした顔で、まるでFXの必勝チャートを説明するかのような流れるような手足の動きでハンバーグをジャンヌの前にサーブした。
「当ホテルのVIPである蓮夜様が『スワップポイント1日分』という、我が部族の国家予算に匹敵する額の追加オーダーをされたのです! パッチの神々に誓って、1秒の遅滞もなく最高のおもてなしを提供するのが我々の義務!」
「いや、ただのおかわりで国家予算動かすなよ! パッチ族の経済規模どうなってんだ!」
蓮夜のツッコミなど耳に入らないとばかりに、今度はカリムがジャンヌの横に跪き、冷えた高級ウーロン茶をワイングラスに注ぐ。
「聖女様、どうぞ当ホテルの贅を尽くしたおもてなしをジャッジメントしてください」
「あ、ありがとうございます……」
あまりの至れり尽くせりな接待(ラグジュアリー)に、ジャンヌのブルーの瞳が完全にキャパシティオーバーでグルグルと回り始める。しかし、目の前のトリプルチーズの香惑には抗えず、再び箸を伸ばしてパクリと口に含んだ。
「――っ!!! 美味しい……美味しいです、シルバさん……!」
大喜びするジャンヌを見て、シルバとカリムは「よし、これで今月のホテルの売上ノルマは達成だ……!」と、影でひっそりと涙を流しながらガッツポーズを作っていた。
その様子をジト目で見つめていた蓮夜は、おもむろにフルーツ牛乳の瓶を置き、ハンバーグを咀嚼しているジャンヌに向かって静かに語りかけ始めた。
「……ジャンヌさん。彼らがこうやって必死に僕らに媚びを売ってくる理由、分かりますか?」
「え……? それは、蓮夜さんが神聖なるFXの力で、正当な対価(スワップポイント)を支払っているからではないのですか……?」
ジャンヌは不思議そうに首を傾げた。
蓮夜は深いため息をつき、手元のタブレットでパッチ族の裏データを画面に表示させながら、冷徹な現実を突きつけた。
「いいですか。実はパッチ族の財政は今、めちゃくちゃに火の車で、酷いことになっているんですよ」
「……へ?」
ジャンヌの箸がピタリと止まる。シルバとカリムの顔が瞬時に真っ青に染まった。
「パッチ族はグレート・スピリッツを管理する神聖な一族ですが、その実態は超ド級のブラック企業です。彼ら十祭司は、シャーマンファイトの運営という大義名分の元に、あり得ないレベルのブラックな労働環境で働かされているんですよ」
「ぶ、ブラック……? 労働環境……ですか……?」
「そうです」
蓮夜はタブレットの画面をジャンヌに見せながら、冷酷な事実を指でトントンと叩いた。
「彼ら十祭司、今回のシャーマンファイト本戦の地である日本までの渡航費、なんと『自腹』です」
「なっ……!?」
ジャンヌのブルーの瞳が驚愕で大きく見開かれた。
「それだけじゃありません。日本滞在中の宿代、食費、その他諸々の生活費も全部『自腹』で工面させられているんです。だからシルバさんなんて、自腹の渡航費や生活費を稼ぐために、パッチの里で怪しいお土産物屋を営んで、観光客にハンドメイドの民芸品を必死に売り捌いてたんですよ」
「そ、そんな……! 世界の運命を決める聖なる祭司の皆様が、自腹の渡航費のために物販を……!?」
ジャンヌはあまりの衝撃に、持っていた箸を落としそうになった。
「そうだよ、メイデン」
隣で浴衣姿のハオがクスクスと笑いながら参戦する。
「パッチ族のトップは本当に人使いが荒くてね。神聖な儀式だ何だと言い訳して、末端の祭司たちには一銭の経費も支給しないのさ。彼らが我が弟子である蓮夜のFXマネーに群がるのも無理はないだろう?」
「ううっ……! 蓮夜様、ハオ様、それ以上は……我々の胃に穴が空きます……!」
シルバが胃を押さえながら畳に膝をつき、カリムも壁に手をついてガタガタと震え出した。暴かれた身も蓋もない現実の世俗的な世知辛さは、十祭司のプライドを完璧に粉砕していた。
ジャンヌは、涙目でハッピを震わせているシルバとカリムを見つめ、それから自分がいつも入っている冷たい海(拷問)と、パッチ族の凄惨な台所事情を頭の中で比較した。
「……なんということでしょう……。私がいつも針の箱(アイアン・メイデン)の中で耐えていた理不尽も凄まじいですが、パッチ族の皆様が強いられている『自腹の渡航費』という名の精神的拷問も、それに匹敵する邪悪です……。正義を司るシャーマンファイトの舞台裏が、これほどまでに血の通わないブラックな財政難だったなんて……」
「ね? だから彼らを救うためにも、僕がFXで稼いだお金をこのホテルにジャブジャブ落としてあげる必要があるんですよ。つまり、僕が贅沢をすればするほど、パッチ族の生活が救われる社会的養護(ラグジュアリー)なんです」
「なるほど……! 蓮夜さんの最高級な贅沢は、悪魔の堕落ではなく、パッチ族の皆様を救うための『聖なる経済支援(ベネフィット)』だったのですね……!」
ジャンヌの背後から、今度はパッチ族の労働環境への同情と、蓮夜の資本力への圧倒的な感謝による巫力がピカアアアと激しく発光した。
「完全に納得しちゃったよ。それにしても、君の詭弁(おもてなし)は本当にレバレッジが効いていて面白いね、蓮夜」
ハオが楽しそうにフルーツ牛乳を飲み干す。
その頃、X-LAWSの船内では、目を覚ましたマルコが「メイデン様が……メイデン様が悪魔の爆益だけでなく、パッチ族の労働基準法違反の闇にまで同情し、完全にホテル陣営に取り込まれてしまったァァァーーーッ!!」と、自らのメガネを粉々に踏みつぶして絶叫していたが、それもまた別の話である。
絶対正義の聖女に世界の世知辛い労働の闇を教育し、自腹を切らされている十祭司たちを実質的な経済支援で手懐けた御門蓮夜の、事なかれ主義という名の資本主義テロは、シャーマンファイトの戦場を「ふやけた湯上がりのパラダイス」から「パッチ族救済のための最強の爆益組合」へと変貌させようとしていた。