バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】   作:カミト6622

74 / 77
【X-LAWSサイドストーリー】『聖女の危険なレバレッジと、不労所得の厳しい洗礼』

 

「――決めました、御門蓮夜さん。パッチ族の皆様の悲惨な自腹環境(ブラック労働)を正すため、私も神聖なるFX(外国為替証拠金取引)を始めます! 私の巫力をもってすれば、必ずやレバレッジ25倍の聖なる裁きを下せるはずです!」

 

特大ハンバーグを完食した聖女・アイアン・メイデン・ジャンヌが、シルクの浴衣の袖をまくり上げ、ブルーの瞳を爛々と輝かせながら大真面目に宣言した。

その背後では、経済的救世主としてジャンヌを見つめるシルバとカリムが「おお、聖女様……!」「我々の渡航費のために……!」と涙を流して拝んでいる。

 

「いやいやいや、ちょっと待って。絶対にダメです。全力で止めます」

 

それまで優雅にフルーツ牛乳を飲んでいた蓮夜が、顔色を変えてタブレットをジャンヌの目の前に突きつけた。あまりのガチなトーンに、ジャンヌは「え……?」とパチクリと瞬きをする。

 

「ジャンヌさん、FXを完全に勘違いしています。いいですか、FXや株には世界各国の複雑な社会情勢の把握や、緻密な運用資金の管理、さらには秒単位のチャートの見極めなど、めちゃくちゃマメな人間じゃないと絶対に無理なんです」

 

蓮夜が差し出した画面には、狂ったように点滅しながら右肩下がりに急落していく、リアルタイムの為替チャートが映し出されていた。

 

「見てください、今この瞬間もドル円のチャートが激しく変動しています。152.40円……あ、152.25円に跳ねた。今、アメリカの重要な経済指標が発表されたんです。ここから数秒で、世界中の思惑が交錯して1円単位で一気に動く。神聖な巫力なんて、この秒単位で数千億ドルが飛び交う為替市場(マーケット)の前には1ミリも通用しません」

 

画面の向こうでは、緑と赤のローソク足が生き物のように上下に蠢き、蓮夜が事前に仕込んでいた数億円規模のポジションの損益メーターが、数百万単位で激しくプラスとマイナスを行き来している。

 

「いいですか。それこそ数分画面から目を離しただけで、あっという間にお金が無くなって、最悪の場合は莫大な借金を背負うことになるんですよ。毎日アイアン・メイデンの中で目を閉じて祈っているようなおっとりした人が手を出したら、この一瞬の乱高下で全財産を溶かしてロスカット(強制決済)のジャッジメントを喰らいます」

 

「し、借金……!? このピコピコ動く数字の波に、全財産が溶かされる……!?」

ジャンヌの顔からスーッと血の気が引いていく。冷たい海での水責めには耐えられる聖女も、「数分、いや数秒で無一文になり、さらに借金を背負う」という現代社会のリアルな地獄の光景には、恐怖で肩をガタガタと震えさせた。

 

「そうだよ、メイデン」

隣でクスクスと笑っていたハオが、憐れみの目を向けながら追い打ちをかける。

「為替市場という名の戦場は、僕の『スピリット・オブ・ファイア』でも焼き尽くせないほど強欲で冷酷な世界さ。蓮夜のように、寝る間も惜しんで世界中のニュースをチェックし、数秒のズレも許さないマメな男だからこそ、こうやって高級ホテルで贅沢ができるんだ。君たちが生半可な気持ちで首を突っ込めば、マルコあたりがストレスで本当に発狂してしまうよ」

 

「うぐぐ……耳が痛い……! 確かに我々十祭司も、以前ちょっと色気を出してFXに手を出した際、アメリカの雇用統計の一発で部族の共有財産をすべて溶かしました……!」

シルバが頭を抱えて畳に転がり、カリムもまた「あの時のロスカットのトラウマが……!」と、画面のローソク足を見つめて震え出す。

 

「十祭司の皆様すらも破滅させる、悪魔の取引……。正義の祈りだけでは、為替のチャートは上向かないのですね……」

ジャンヌはポロポロと涙を流し、すっかり戦意を喪失してハンバーグの余韻すら吹き飛んだ様子でうつむいた。

 

「分かればいいんです。だから、リスクを背負って爆益を出している僕の財布に、大人しく乗っかっておけばいいんですよ」

蓮夜はため息をつきながら、変動が落ち着いたチャートを確認し、手元の画面で利益確定のタップをした。一瞬で「+32,000,000円」の数字が口座に反映される。

 

蓮夜はその画面のまま、シルバにタブレットを提示した。

「シルバさん、ジャンヌさんとリセアラさんたちの今夜の宿泊費、あとついでにX-LAWSの日本までの渡航費の足しとして、今確定させた利益から数千万円ほど『経済支援(寄付)』として振り込んでおきます。これで十祭司のボーナスにでもしてください」

 

「れ、蓮夜様ァァァーーーーッ!!! あなたこそ真のグレート・スピリッツ(株主)だ!!!」

シルバとカリムが蓮夜の足元に五体投地し、もはや神を拝む以上の勢いで感謝を捧げた。

 

「あ、ありがとうございます、蓮夜さん……」

ジャンヌもまた、現代社会の魔物(借金)から自分とパッチ族を救ってくれた蓮夜に対し、まるで本物の聖人を見るかのような、圧倒的な尊敬の眼差しを向けるのだった。

 

その頃、X-LAWSの船内では、壊れたマルコが「メイデン様が……メイデン様が悪魔の弟子から借金の恐怖を植え付けられ、同時に多額の経済支援(実質的な買収)を受け、完全にホテル陣営の筆房株主へと祭り上げられてしまったァァァーーーッ!!」と、白目を剥いて泡を吹きながら倒れていたが、それもまた別の話である。

 

絶対正義の聖女にFXのリアルな破滅の恐怖を叩き込み、圧倒的な資金力でパッチ族の財政ごと囲い込んだ御門蓮夜の、事なかれ主義という名の資本主義テロは、シャーマンファイトをいよいよ誰も戦いたがらない「湯上がりの平和な爆益パラダイス」へと固定しつつあった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。