バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
翌朝。俺は寝不足の目をこすりながら、いつも通りの時間に登校していた。
(ハァ……筋肉痛がひどい。一万の巫力を全パイルして爆走した代償がこれかよ。事なかれ主義の傍観者ライフが聞いて呆れるぜ)
重い足を前に進めながら、心の中でそっと溜息をつく。
(なあ、サクヤ。体調はどうだ? 昨日の夜はあんなに慌てちゃってさ……)
俺が脳内で話しかけると、白銀の指輪から、いつもより少し硬くて、かつどこか照れを含んだ念話が返ってきた。
《は、はは、はいっ! 某、全くもって問題ございませぬ! 主におかれましても、その……お元気そうで、何よりにございまする……っ!》
(……いや、なんでそんなに他人のフリみたいな敬語なんだよ)
昨夜の「経験を半分こにしたい」という無自覚な失言のせいで、可愛い相棒の調子は未だに狂いっぱなしらしい。前世童貞の俺にはこれ以上のフォローは不可能なので、大人のスルーを決め込むことにした。
そのまま学校の昇降口に着き、靴を履き替えようとしたその時だ。
「あ、蓮夜! おはよー」
背後から、昨日散々俺を巻き込もうとした元凶――麻倉葉の、気の抜けた呑気な声が響いた。
振り返ると、そこには案の定、体中を包帯だらけにした満身創痍の葉が、いつものようにへらへらと笑いながら立っていた。阿弥陀丸もその背後で、申し訳なさそうにペコペコと頭を下げている。
「……よお、麻倉。昨日の一件について、ちょっとお前に言いたいことがあるんだが」
俺は上履きを片手に持ったまま、ジト目で葉を睨みつけた。
「あはは、悪かったって! でもさ、昨日の蓮夜の逃げ足、マジで凄かったな! アンナのママチャリを置き去りにする奴なんて、俺初めて見たぞ。阿弥陀丸も『あの御門殿の脚力、一騎当千の武者並みでござる』って大絶賛してたし」
「褒めてねえよ! 俺はただの隣のクラスの、事なかれ主義の一般人だ。お前らの命がけの鬼ごっこに巻き込むんじゃねえ」
「まーまー、そう言うなよ。おかげで昨日の後半、アンナの機嫌がちょっと良くなってさ。いつもより特訓が10分早く終わったんだぜ?」
「知るか! 10分減ったところで、お前が包帯ダルマになってる現実は変わってねえだろ!」
パンパンと葉の肩を小突くと、葉は「痛痛痛っ!」と情けない声を上げてのけぞった。
どう見てもただの中学生のじゃれ合い。だが、俺が葉の体を叩いたその瞬間――。
(……ッ!?)
俺の魂の最深部に宿る、1万のバグ巫力が、不意にゾクリと跳ね上がった。
それは、葉から発せられたものではない。
このふんばりヶ丘の街全体、いや、この世界の境界そのものを外側からノックするような、極めて異質で、かつ厳格な『巨大な霊気の波』。
《主、これは……!》
サクヤの声が、一瞬でいつもの凛とした武者のそれへと戻る。
(ああ。学校の敷地外……いや、もっと遠くだ。誰かがこの街のシャーマンの動向を探るために、大掛かりな霊的レーダーを展開してやがる)
原作知識が、俺の脳内に一つの答えを弾き出した。
パッチ族。シャーマンファイトの予選開始を告げる、オフィシャルな審判たちの足音が、すぐそこまで迫っているのだ。
「……蓮夜? どうしたんだよ、急に黙り込んで」
葉が不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。
どうやら、まだ持霊を従えたばかりの今の葉には、この広域に展開された微弱で高度な霊気の網までは感知できていないらしい。
「いや、なんでもない。早く教室に行けよ、麻倉。遅刻するぞ」
「おう、またな!」
葉はいつものように頭の後ろで手を組み、自分のクラスへと歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら、俺は靴箱に手をかけ、小さく息を吐き出す。
(ついに始まるか。シャーマンファイト……。俺自身の実力は1万で頭打ち、術理も何もないゴリ押し状態。だけど、物語の歯車は待ってくれちゃいないってわけだ)
事なかれ主義の傍観者でいるためのタイムリミットが、少しずつ削られていくのを感じながら、俺は自分の教室へと向かった。