百合ゲー世界の上位存在淫魔にTS転生しました♡ 作:名も無きリリフェル様♡
リリフェル様へ
世界の危機に対し、勇者の使命を果たすため、わたしは迅速にイク必要があります。
なにとぞ、イかせてください――
――最初の月、1枚目の嘆願書を書き終えた。
書くべきことが、順序よく書いてあった。字も綺麗である。
リリフェル様
イかせて。世界の危機。イかせて。大変。イかせて。イかせて――
5カ月目、5枚目を書き終えた。
りりふぇるしゃま
いかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせていかせてよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
9カ月目となった先日、9枚目の嘆願書ができあがった。
嘆願書は、月が満ちるたびに、一枚ずつ書き足した。
一つ注意しておくと、これは、わたしの文章力が落ちたわけではない。
わたしの愛の純度が、上がったのだ。
さて今夜、ついに、ついについについについに、リリフェル様に来ていただけるらしい。
「久々に勇者ちゃんと遊んであげましょうか♡」
掲示板には、そんな書き込みが残されていた。
わたしは、その一行を、何度も、何度も、何百回も、読み返した。
そして、気付く――
リリフェル様は、遊ぶ、と書かれた。
ということは――
もしかすると、この遊びには、勝ち負けがあるということではないだろうか?
つまりは、勝てば、褒美があり、負ければ、罰がある。
――わたしは、勝つ。
そう決めた。なぜなら、勇者とは、常に勝利する者の名であるから――
ゆえに、作戦を立てる。
勝利条件は――イかせていただくこと。これ以上の勝利はないゆえに、これ以外の結論はあり得ない。至高の勝利条件である。
敗北条件は――なんだろう?
たとえば、泣くこと。
わたしは、いままで泣いたことがない。
たとえば、剣を、手放すこと。
勇者は、決して剣を手放さない者の名であるから。
例えば、殺して、と言ってしまうこと。
これは、掲示板には、すでに書いていた。死んだらイけるなら、わたしも死にたい、と。
だが勇者とは、死なない者の名でもある。決して、自ら殺してなど懇願してはいけない。
これらをぜんぶ守れば、わたしの勝ちであると言えるだろう。
守ろう。わたしは勇者だもん。
ここで、今日の昼間の話をする。
今日は魔王軍の先遣隊と、街道で遭遇した。
数は、向こうの方が多かった。
もちろんわたしは、勇者として先頭に立った。
最初の一体を斬ったところで、アレが来た。
下腹部の淫紋が、無性に熱くなる。
熱い熱いエネルギーが、お腹の中から、太ももの内側、足の指の先まで、ぎゅるぎゅると降りていって、それから、ぐいーんと頭のてっぺんまで登ってきて――
そして、いちばん高いところの、わずか、たった、あとひとつ手前で――ぱっと、消えた。
そのときわたしは、剣を振り下ろす、その直前だった。
わたしは、叫んだ。
「気合いだぁああああ!」
剣を振り下ろす。
次の一体が、瞬く間に死んだ。
仲間が「おおっ」と感心した。
また、波が来た
「気合いだぁああああ!」
敵が死ぬ。
「気合いだぁああああああ!」
また死ぬ。
「気合いだぁあああああああああああ!」
また死ぬ。また来る。また死ぬ。また来る――
仲間たちは、みなわたしを勇者として尊敬している。
戦うたびに、何度も何度も気合いを入れ、果敢に敵に立ち向かう勇者を、心からリスペクトしている。
その気合いの正体は、誰も、知らない。
知らなくていい。
もし知られれば、わたしは、即刻勇者をやめなければならないだろう。
だから、全部、斬った。
そして、勝った。
勝利こそ、勇者の唯一にして最大の仕事である。
勝利のあと、街道の休憩所で、鎧を直すふりをして、膝をついた。
もう、それしかできなかった。
仲間は、わたしが神に祈っていると思っただろう。
実際、祈っていた。
イかせてくだしゃい、と。
これが、今日の昼間の出来事である。いつも通りの平穏な日常であると言える。
だが、わたしにとって、今夜は、これとは比較にならないほどの奇跡が訪れる時間だ。
その夜のために、わたしは丁寧に準備をした。
まず、聖剣を磨いた。もちろん夢の中で剣を磨かれていても、特に意味はない。
意味はないが、勇者とは、時間があるときは自らの剣を磨いてじっと待つものである。
わたしは、ほかの待ち方を、知らない。
それから、立つ練習をした。
実はわたしは、リリフェル様の前で、立っていられたことがない。
立とうとしたことくらいなら、もちろんある。
だが、膝が、先に折れた。
あの方の前では、膝が、わたしより先に屈服してしまう。
ゆえに、今夜は、立って迎える。
立って、9枚の嘆願書を差し出し――唯一にして至高の褒美をいただく。
イかせて、いただくっ……!
部屋の中で、何度も立った。
座って、立って、跪いて、また立った。
――できる。
誰もいなければ、わたしは確かに立つことが、できる。
すでに嘆願書は、机の上に、九枚とも揃えてある。
わたしの淫紋は、引き続き下腹部でじんじんと耐えがたい快感を放っている。
この淫紋は、誰が何と言おうと、わたしの、わたしだけのものである。
掲示板にも、そのように書いた。ひれ伏せ、と。
これは、決して自慢などではない。単なる事実である。
……事実だもん。
問題なのは、その淫紋が、わたしを決して、どう頑張っても、どんなに反抗しようと工夫しても、イかせてくれないことだ。
いまが何日目かは、もう、わからない。
その間、月が、9回満ちた。
数えるのをやめたのは、日数を数えている自分が、この世でいちばん惨めな存在だと気づいたからだ。
勇者とは、惨めであってはならないのである。ゆえに、わたしは数えない。
下腹部が、じーんと、熱くなった。
――来る。
来る来る来る来る来る! ついに、今度こそ、やっと、イクことができ――
――そして、当然、あまりにも当然のごとく、その波が止まった。
いつも通り。
そのイキ損ねたわたしに、耐えがたい、あまりにも耐えがたい飢餓が、飢えが、地獄が残る。
つらい。
つらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいっ……!
いつもであれば、それはあまりにもありふれた日常の中の一ピース。
だが、いまのは、違う。
これは、挨拶だ。
わたしには、わかる。9つの月を、この淫紋と暮らしてきた。
ゆえに、いまの1回は、女神の訪問を告げる、そんな神聖なる寸止めだった――!
「こんばんは♡ 勇者ちゃん♡」
そして、その声が来た。
わたしは立った。
立てた!
膝が、恐怖する前に、ちゃんと、立った。
これは紛れもなく、わたしの練習の成果である。勇者は、立ちあがるものだ。
そして、わたしは、振り向いた。
リリフェル様が、いた。
がくっと、膝が、折れた。
立てたのは、振り向くまでの、ほんの一秒の間だけだった。
「リリフェル様。この勇者、リリフェル様にお願いしたい儀がございます」
そして、9枚の嘆願書を差し出そうとして、わたしは気づいた。
わたしの両手には、聖剣があった。
先ほどまで、剣を磨いていたからである。
前述のとおり、勇者とは、剣を決して離さないものだ。
嘆願書は、机の上である。手は、剣で塞がっている。空いているのは、わたしのこの口だけである。
すべての思考が停止したわたしは、やがて、自らの口で嘆願するという唯一の正解に行きつく。
「……イかしぇて、くだしゃい!」
9枚の嘆願書のすべてが、いま、一言になった。
これが、愛の結晶である。
「はい♡ いいですよ♡」
リリフェル様は、可憐に頷かれた。
たしかに、頷かれた。
たしかに、はい、と、そうおっしゃった。
終わる。
終わる終わる終わる終わる終わる終わる。
永劫の地獄が、いま、やっと、ついに、終わる――
「では、わたしと遊びましょうか♡」
――遊ぶ?
「簡単な数え遊びです♡ わたしが、1回ごとに1回2回と数えます。勇者ちゃんは、1回ごとに『ありがとうございます』と言ってくださいね♡ もしも三千回、きちんと『ありがとうございます』が言えたら、ご褒美ですよ♡」
――これは、持久戦である。
わたしは停止した頭脳でありながら、勇者ゆえの本能ですぐさまそう理解した。
わたしは、勇者である。勇者は、持久戦を、知っている。
わたしは三日三晩、魔物の群れの前で盾を構え続けたことだってある。
三千回の『ありがとうございます』など、持久戦のうちにも入らないといえる。
ゆえに、勝つ。
勝ってしまう。
そしたら、ご褒美が――
念願の、待ちに待った、欲しくてたまらなかった、欲しくて欲しくて欲しくて欲しかった、最高至高のご褒美が――
「はい。対戦よろしくお願いします」
わたしは、剣を抱いたまま、跪いた。
もちろん、構えは崩さない。
そうして、リリフェル様が、わたしの目の前に座られた。
床に、直に座られた。
すると、リリフェル様の太ももが、わたしの膝の上に、乗った。
乗った、のだ。
リリフェル様の太ももの重さ、柔らかさ、温度、それらすべてが、膝に乗った。
そしてしっぽが、わたしの腰に巻きつく。ぐるりと巻き付く。
――えっちな、すごくえっちな、耐えがたく惹かれてしまう匂いが、する。強烈に。
それら、ぜんぶが、わたしのところに、一気に来た。
下腹部の淫紋が、熱くなる。
こんなの、一瞬でイっちゃ、イクイクイクイクイクイクイクぅうううううう――
――熱が、降りて、止まった。
「まずは、1回目ですね♡」
リリフェル様は、いまのを、1回と数えられた。
わたしの寸止めを、リリフェル様が、1回と。
???
「あ、ありがとう、ございます」
わたしはきちんとルールを守り、ありがとうございます、とお礼を言った。
勇者は決してルールを破らない。
常に正しくあることこそ、皆の模範であることこそ、勇者にとっての使命そのものである。
ゆえに――
下腹部がどんなにじくじくと疼いても――
ぞわぞわとした波が足先から頭のてっぺんまでぞくぞくと行き来しても――
わたしは絶対、ルールを守って、守って、まもって――
あ、イクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイク今度こそイけるぅうううう……!
「はい♡ 2回目♡」
あっ……
「……あ、あ、あ、ありがとうございましゅ」
絶望、だった。
たった2回の寸止めで、すでにわたしは心を折られていた。
これに比べれば、この本物の寸止めに比べれば、いつもの寸止めなど、児戯のようなものであった。
わたしはようやく思い知った。
自分がいかに恵まれていたのか――
本物の地獄とは、いかに底の無いものであるのかを――
ああああああああああああああああああああイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイクイけるイけるイけるイけるイけるイけるイけるイけるイけるイけるイける今度こそイけるイきたいイきたいイきたいイきたいイきたいイきたいイきたいイきたいイクイクイっちゃ――!
「はぁい、3回目ですよっ♡」
「あ………………………………………………………………あ、り、がとう、ございます……」
リリフェル様は、1回1回、楽しそうに、数えておられた。
今までのわたしは、日を数えるのをやめていた。
それは、わたしが惨めだったからだ。
いま、リリフェル様は、わたしを寸止めした回数を数えておられる。
とっても、楽しそうに。
本当に、この地獄に、救いはない――
*****
「十回目です♡」
十回目。リリフェル様の御手が、鎧の隙間から、そっと入ってきた。
リリフェル様の手のひらが、下腹部の淫紋の上に乗る。
「ふふっ、あっついですね♡」
熱い。
淫紋が、熱い。
リリフェル様の手のひらの下で、淫紋から、かつてないほど強烈な波が来て――限界ギリギリの快楽、いや、限界を遥かに超えているとしか思えない快楽に晒されて――
――止まった。
いやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ――
「ありがとうございます」
地獄は、無限に続く。
「記念すべき、百回目ですよ♡」
リリフェル様のしっぽが、腰を、ぎゅぎゅっと締めてきた。
お腹の中心から、今まで感じていなかった種類の無上の幸福感とともに、あまりにも暴力的な快楽が押し寄せてきて、深い深い絶頂が訪れそうになって――
――止まった。
「ありがとうございます」
口は、機械のように礼を言う。
身体は、別のことを言っている。
イギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイイギダイッッ!
わたしの太ももの内側が、勝手に、うぃーんと閉じる。
閉じて、また開く。
閉じて、また開く。
剣の柄を握った手が、汗でつるつると滑る。
腰が、しっぽに包まれた中、前に前に出ようとする。あの方の太ももへ一歩でも近づこうと、へこっ、へこっ、と。
「三百回目♡」
「ありがとうございます」
それでも、五百回目まで、わたしはたしかに勇者だった。
勇者でいつづけるため、わたしも、数えることにした。
リリフェル様が数え、わたしも数える。
数えている限り、戦いは対等だ。
ゆえに、わたしは勇者でいられる。五百一回、五百二回、五百三回――
「六百回目♡ あれれぇ、勇者ちゃん?♡ どうしちゃいましたぁ?♡」
わたしが、どうかした、のか?
剣は、両手にある。
膝は、床にある。
「……ふぇぇぇぇ、ありがと、ごじゃいましゅ♡」
顔が、とろけていた。
限界を超え、表情を維持する機能を失い――
あまりにも終わっている表情筋になっていた――
千回目。
ついに、舌が、もつれた。
「ありぎゃ、と、ごじゃ、ましゅ♡ あり、あり、ましゅ♡」
「はい♡ 千一回目♡」
「あい、あい、ましゅ♡ ありが、ごましゅ♡」
千一回目。
ついに、数が、消えた。
心の中の数が、出てこない。
千の次が、どうしても出てこない。
わたしは、勇者だぞ……?
その勇者が、あい、あい、ましゅ♡などと言ってはならない。言ってはならないはずだ。
だが、言っている。
舌が、勝手に、丸くなる。
剣を抱いた腕から、どんどんと力が抜けていく。
抱いているのか、寄りかかっているのかすら、もうわからなくなっている。
床に、頬がついた。頬をつけたまま、口だけが動いた。
「……あいが……あいがお……ごじゃ……まひゅ……♡」
それでも――
それでも地獄は続く――
「千五百回目♡ 勇者ちゃん、すこし、休憩しましょうか?♡」
きゅーけー。
ゆうしゃに、きゅうけーのもじはない。ない。
「いや」
「おお、嫌なんですねぇ?♡ では、続けますね♡」
やがて、リリフェルしゃまは、かぞえるのを、やめちゃった。
でも、いんもんは、ぜったいやめなかった。
くる。
とまる。
くる。
とまる。
いっぱい、すんどめされた。
いっぱい、いけなかった。
いきたい。
いきたいいきたいいきちゃいいきちゃいいけないのなんでおかしいおかしいいけないのおかしいだっていけるはずあとすこしでいけるはずぜったいにいけるはずなのにいけないいみわからないたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてよぉ……
「二千回目♡」
「あいと……あいと……」
「記念すべき二千回目は、久々に数えてあげました♡」
「……かぞ、えて……くだしゃ……」
「数えてほしいんですか?♡ いいですよ♡」
「あいが、ごじゃ、ごじゃ……」
かぞえて、もらえる。
やっと、わかる……
「二千一回目♡ いままでで一番上手に寸止め出来ましたね♡」
にせんいっかいめ。しっぽが、あそこを、しめてきた。
たしゅけて。
「これからは、すこし、難しくしますね♡」
むじゅかし……く?
「ありがとうございます、のあとに、これからは、わたしの名前もつけてください♡」
なまえ。りりふぇるしゃま、のなまえ。りりふぇる、しゃま。なまえは、りりふぇる、しゃま。
「二千二回目♡」
「あいが、ごじゃま、りりふぇ、しゃま♡」
「二千三回目♡」
「あいがう、ごじゃいま、りりしゃ、りりしゃま」
「しゃま♡ なんだか可愛くて、嬉しくなっちゃいますね♡ もっといっぱい呼んで欲しくなっちゃいます♡」
りりしゃま、うれしそう……
「はい♡ 二千四回目ですよ♡」
「あいあいじゃ、りりしゃま……」
いっぱい。いっぱいすんどめ。いっぱいきもちぃ。いっぱいいきそう。いっぱいいけない。いけない。いけない。いけない。いけない
「二千五百回目♡」
りりしゃ、くちびる、ちゅって、してきた。
きもち。もっときもちくなった。きもちすぎ。つら。つらすぎ。つらい。つらい。つらい。つらい。つらい。つらい。つらい。
「勇者ちゃん♡ 二千六百回目ですよ♡ 調子はどうですか?♡」
「あいま……りりしゃ……♡ きもち……いきた……つら……しにた……」
「あらら、ついに死にたくなっちゃったんですねぇ♡ なんて、可愛いんでしょう♡ あ、二千六百一回目ですね♡」
「かわい…あいましゅ♡ かわい、うれし……♡」
「ちゃんとお礼ができて、えらいですね♡ 二千六百二回目です♡」
「あいましゅ♡ あいましゅ、りりしゃ♡」
「二千九百九十八回目♡」
「……あい……ま……♡……り……♡」
「二千九百九十九回目♡」
「……あ……♡……り……しゃ……♡」
わたし、げんかい。もう、むり。むりすぎ。これ、おわらな。むり。むりすぎ。
「……ころ、しぇ……」
「はい、いいですよ♡」
つめた……わからな……あれ。くら……
――わたしは、そして、死んだ。
勇者は、死んだことがない。
死にかけたことくらいは、もちろんある。
魔物に囲まれ、血を失い、視界が白くなり、仲間の声が遠くなった。
だが、あれは、死ではなかった。
これが、これこそが、本物の、死、である。
静か、だった。
真っ白で。
なにもなくて。
剣も、使命も、世界も、太ももも、しっぽも、匂いも、全部全部捨てて――
――そして、それは、来た。
下腹部が、熱くなった。
来る。来る来る来る――
死によって何かを取り戻したわたしの理性が、それがその時であることを知っていた。
来る。
ついに来る。
来てしまう。
そして――
――止まった。
「三千回目♡」
死の中で、その声がした。
死の中で、その声に止められた。
え……?
……死んでも、止まる……?
死んでも、イけない……?
わたしは、イけると思っていた。
たしかに、イけると、そう思っていた。
え……?
――逃げ道が、ない?
戦術的に言うなら、これは、包囲、である。
生きていても、死んでいても――
リリフェル様の指が、わたしを、あと一歩の、ほんのあと一歩のところまで導いて――そして、イけない。
いままで、わたしは、幾度となく、包囲を抜けてきた。
だが――
――こんな包囲は、初めて、である。
死ぬとは、指のない場所へ行くことである。
死ぬとは、イくことである。
――違った。
死んでも、イけな、かった。
ゆえに、イける場所は、この世に無い。
Q.E.D.
これで証明が終わるということは――
つまり、あとは、泣くだけだということである。
「――っ、うぁ! うあぁああああああああああああああああああああああ!!!」
わたしは、泣いた。
その泣き声とともに、なぜか、生き返った。
目を開けると、リリフェル様がいた。
にこにこしておられた。
リリフェル様は、いつでも、にこにことわたしを見守ってくださっていた。
いつまでも、いつまでも、にこにこと、にこにこと……
え……?
*****
ふぅ……勇者ちゃんと久しぶりに遊べて、とっても嬉しいですねっ♡
数え遊びは、楽しめました♡
三千回目で死んでしまうなんて、勇者の業運はすごいですね♡
叫び声で生き返った勇者ちゃんは、床に土下座して、聖剣にすがりながら、泣いていました。
その身体は、汗と涙と愛液でいっぱいです。
「……あいが……ごじゃま……りしゃ……りしゃま……♡」
ほんっとうに、可愛いですねっ♡
なので、最後に、ご褒美をあげることにしました。
「勇者ちゃん♡」
「りりしゃ……なにぃ……?」
「三千回、ちゃんと言えましたので、ご褒美ですよ♡」
言えていませんけれど♡ まったくもって言えていませんでしたけど♡ でも、いいことにします♡
「一回だけ、イってもいいですよ♡」
がばり、と勇者ちゃんが、その顔を上げました。
しかし、勇者ちゃんは、もはや、その言葉の意味すら理解できなかったようでした♡
「……いや」
勇者ちゃんの口が、確かにそう言いました。
剣を抱いたまま、床に頭をつけながら――
「いや……もっと、りりしゃ、あそびた……」
いい、表情でした。
まるで、本物の勇者が魔王に向かっていくときのような、そんな素敵な表情です。
――そんなもの、見たことはありませんけれど♡
「……ふふっ♡」
言うと思っていました。心の声で、勇者ちゃんの中身を、ずっと聞いていましたから。
「では、もう二度と、言いませんね♡」
「あい」
「一回だけ、は、今夜だけです♡ 勇者ちゃんが断ったので、おしまいですよ?♡」
「あい」
……実を言うと――
最初から、ご褒美の中身は、用意してはいませんでした♡
まさか、三千回も言えると思っていませんでしたから♡
それで今、ついうっかり、口から出てしまったんです。
一回だけ、イかせてあげる、って。
言ってしまった以上、言ったことは守るつもりでした。
仮に勇者ちゃんが受けていたら、わたしは勇者ちゃんをイかせなければいけませんでした。
なので――
断ってくれて、本当によかったぁ♡
やっぱり、限界を超えて我慢しているときの勇者ちゃんが、いちばん、いちばん可愛いですからねっ♡
「勇者ちゃん。立ってください♡」
勇者ちゃんは、剣を杖にして、膝に力を入れて、腰を浮かせようとします。
そこで、寸止めしてあげます♡
膝が折れ、ぐらりと、身体が揺らぎます。
「……たてな……りりしゃ……たすけ……♡」
「はい♡ 助けてあげますね……勇者ちゃんの知能を、この遊びを始める前に、戻してあげましょう♡」
そして、夜が、明けました。
「今日で、二百八十八日目ですね♡ これからも、頑張ってください♡」
(二百八十八、にち、め……)
我に返った勇者ちゃんは――
自分がしでかした、自分が言ってしまった、何よりも致命的で本質的な失言に――
――絶望、していました♡
心が折れているあいだに、一回、寸止めしてあげます♡
八十七万六千二百二十三回目ですねっ♡
「……にひゃ、はちじゅ、はち、にち、め――ひっく……うぐぅ……うぇ……うぇええええええええええええええええええええええええええっ……!!」
ああっ♡
人間って、本当に、可愛いですねっ♡