杵築ねつきの愉快で苦痛で普通の日々   作:だいすくり~む

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ねつきが生徒会に入ったのは、阿久根書記が入った直前です。
前回の後に黒神&人吉ペアは柔道部に行き、その時に勧誘されたものと思ってください。


十一日目

 

真っ黒い雲が空を覆ういい天気の日。

今日は特に門司を誘う気にもなれずに、ねつきは一人で登校し、授業を受けていた。その時、門司の姿を見かけることが無かったのは、恐らく剣道部へ集中しているのだろう。

 

ちなみに今日のねつきの机と椅子は、接着剤仕上げ。再び新聞が読めない事になったのは、言うまでも無いだろう。

 

そして来る放課後。何事も無く鞄を持って帰ろうと教室の入り口に立ったねつきの前に、二人の男子が立ちはだかる。どちらも見覚えのある顔で、そしてどちらとも険しい顔をしていた。

 

にっこりとねつきは笑い。

 

「やあ、人吉善吉君!昨日ぶりだね。…その隣に立っているのはー……あれ?ひょっとして阿久根高貴君かな?中学生以来だねぇ、元気そうで何よりだよ。きっとあの方も安心すると思うなぁ。」

 

「……お久しぶりです、杵築さん。俺は、二度と会いたくないと思っていましたよ。」

 

「残念だね、表立って僕をやっつけられなくて!あ、でも恨むなら黒神めだかちゃんを恨んでよ?僕は悪くない、不可抗力だ。」

 

金髪の、貴公子とも呼ばれる二つ名が似合う顔立ちの整った少年と、ねつきからはにこやかに、相手からは苦虫を噛み潰したような表情で向かい合い、一言二言言葉を交わす。此方の言葉に、更に顔を歪めた阿久根に満足し、教室から出ようとすると、人吉が慌てたようにその出口を立ち塞いだ。

 

「…行かせませんよ。あんたにはめだかちゃんに会ってもらう必要がある!」

 

「ん?ああ、すっかり忘れてたよ。じゃあ、君たちは態々僕を迎えに来てくれたのか。会長の御使い、ご苦労様だね。」

 

一瞬、ほんの一瞬だけ笑みをおぞましいものに変えて、何事も無かったかのように二人を労う。犬のように、会長様に従順な二人を。そしてねつきは無言で行動を促す彼らに、今度は喋る事無く黙って同行する。

行き先は、勿論生徒会室。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして、その扉を目の前に、ねつきは先ほどの饒舌が嘘のように押し黙る。他の二人は、そんなねつきの様子に困惑しているらしく、強い視線をねつきに向けていた。それは、お世辞にもいい視線ではなかったけれど。

 

まるで牢獄に案内された囚人みたいだと脳内で考えつつ、ねつきは扉のドアノブに手を掛ける。そして其の儘、躊躇い無く開いた。

 

「おっじゃまーしまーっす。……昨日ぶりだねー、黒神ちゃん。あ、これからは会長様って呼ばなきゃいけないのかな。」

「良く来たな、杵築二年生。…呼び方は自由にするがいい。其処まで縛る気は無い。」

 

「あはっ、やっぱり僕を副会長に仕立て上げたのはその為かぁ。僕の行動を縛って、常に目の届くところにおく。そうすれば、僕が何時何処で動いたか把握しやすいし、その分対処もしやすい。…こんなところかな?」

 

「……貴方を副会長にしたかったのはそれだけではありませんが。まあ、おおむねその通りです。」

「相も変わらず馬鹿正直だねぇ。そんなところが僕は嫌いだなぁ、あはは!」

 

冷えた空気が室内に立ち篭る。その中で交わされる会話は、世間話からは程遠い殺伐としたものだ。一度会話を切ると、ねつきは深呼吸を一つ行い、近くの椅子に座る。そして、その椅子の前に置かれた副会長の腕章を制服につけた。入り口の二人は、やっと今頃動き出したようだ。

 

「制服は変えなくてもいいでしょ?あ、僕仕事する気は更々無いから。」

「まあいいでしょう、黒いし。その辺りは期待しておりません故ご心配なく。」

 

「交渉成立ってところかな?じゃあ、今日は置物みたいに座ってるからさ、くだらない用事でもないのなら話しかけないで。」

 

そういって早速、サボる気満々に携帯を取り出した。他の二人も黙ったまま、ねつきと距離をとり仕事をし始める。

 

一方早速と携帯を取り出したねつきだが、メールの受信数を見て、顔を笑顔のまま強張らせる。何故ならば。其処にある受信数の数が三桁を超えていたからだ。その全てが、ねつきの可愛がっている後輩からのメールである。何故と記憶を探っても、中々ヒットしない。試しに、一つメールを開いてみる。

 

Re:●●●●

件名:無し

ーーーーーーーーー

返事返事返事早く返事返事返事浮気してるのかそうなんだろ返事してよお願い私が悪いことしたのなら謝るから返事返事くださいちょうだいくれやがれ…(以下略

 

其処まで読んで、ねつきは一度受信画面を閉じる。

恐る恐る、日付を見ると昨日のものであることが分かった。昨日、ねつきは自分が何をしたのか思い出してみる。特に何も無い筈。とくに、なにもない。

 

(あ、……っちゃぁ。)

 

昨日、後輩に日課のメールを送っていない。成る程、だからこの有様か。全ての元凶が機能の自分であった事に、頭を抱えたくなる気持ちを抑える。自分は悪くないけど、昨日の慌しさが悪かった。

 

(後で直接電話するしかないかな。どっかで血の海作ってなきゃいいけど。)

 

物騒な想像をしながら、重たげに溜息を吐いて生徒会室の窓から外を見た。そして、一日は過ぎてゆく。

 

ちなみに。家に帰ったねつきが電話した時、酷い扱いを受けたのは言うまでも無い。

 





駆け足更新です。
少ししたらこのペースが落ちると思われます。

それまでお付き合いください。
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