杵築ねつきの愉快で苦痛で普通の日々   作:だいすくり~む

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五日目

 

「もしもし、お久しぶりです。ねつきです。はい、……はい、もちろんです!何時もの通り、問題しかありませんので安心してください!……っはい、生徒会長はやはり黒神めだかでした。ええ、兄も何処かにいるでしょう。任せてください、貴方が来るまでには一通り壊しておきます。……ええ、また何処かで。球 磨 川 さん。」

 

ベッドの上に身を起こして、機嫌良く電話の向こうの声を聞く。常人ならば、それだけでも耳を塞ぎたくなる様な、気持ちの悪い、けれど心地が良い声。

 

満面の、醜い笑みを浮かべていくつかの指示と、激励の声に喜色を滲ませて応じた。ばいばい、と別れの挨拶と共に切れる電話に、名残惜しそうに暫く耳を当てていたねつきだったが、早速と言わんばかりにベッドから降りて学校へ行く用意を始めた。

と、いっても持ち物を用意するでも無く、脱いだネグリジェをベッドの上に放り、何時も通り真っ黒なセーラー服を着て、血のように赤いリボンを胸元に結べば、出かける準備は完了したも同然。

 

静かな、誰もいない家の玄関口に立つと、ローファーを履き独り言のように行ってきます、と口の中で転がすように呟く。こればかりは、何年経とうと治らない癖と同じだと、ねつきは思っている。

そして、午後。晴れた空の下、学園へ向かい歩き出した。長い女のような銀髪を靡かせて。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

学校の門をくぐらずに、低い塀から敷地内に入る。これは、風紀委員に見つかると面倒な為だ。トン、と芝生の上に着地すると、其の儘校舎へ、向かう筈も無く。

学園を囲む塀に沿って歩きながら、どんどんと人気の無い方へ歩き出す。例えば、不良の溜り場となっていそうな剣道場だったりを目印としして。

薄暗い剣道場の、入り口前へ立つと、ねつきは唇に笑みを浮かべる。

 

噂が確かだと、今日だった筈だ。

あの女が来るのは。

 

ねつきは迷い無く剣道場の門を開ける。ゆうらり、笑みを深めつつ開いた扉の向こうから香る、煙草の香りに赤く濁った目を細め。そして、元気良く、気色悪さの滲んだ声を張り上げるのだ。

 

「不良の皆さん、こんにちはー。ええっと、いきなりで申し訳ないんですけどぉ、今すぐ剣道場から出て行くか、一生物のトラウマを刻み付けられるか、選んでくださーい。」

 

そう言うと、一瞬の静まりの後、金髪の如何にも不良といった格好をした同級生らしい男がねつきの前に立ち塞がる。

 

「おいおいおいおい、いきなり出てきてお嬢ちゃんよぉ。俺らが誰だか分かってって言ってんのかよ。俺ら不良だぜ?はい、そーですかっつってお嬢ちゃんの言葉に従う奴がいるかよ?」

 

その声を皮切りに、他からも声があがる。

 

「ってか良く見たら可愛くね?連れ込んじまってもいいんじゃね?」

 

勿論、ねつきの言葉に対する声も。

 

「ぎゃはは、トラウマだぁ?逆に刻み付けてやろうかぁ?」

 

下世話な笑い声が、鼓膜を揺らす。人の性別すら区別がつかない生き物に、ねつきの笑みが醜く歪んでいく。性別を間違えられる格好をしているねつきも悪いのだが、それは棚に上げて。

 

実に残念そうに、けれど楽しそうに。ねつきは再び口を開く。

 

「あー、素直に出て行ってくれたら楽だったんだけどなぁ。ま、僕らにイージーモードなんて似合わないし、べつにいっか。……言っておくけど、こんなところで遊んでいた君たちが悪いんだからね?……僕は、悪くなんてないんだから。」

 

その声が、言葉が、徐々に負に満ちていく。

 

其処からは、この世の地獄をかき集めて体現したかのような、目も当てられない凄惨な残虐劇の始まりだった。

 

ねつきの体から、ぎりぎりまで普段は押さえ込まれていた負のオーラが溢れ出す。次第と、不良達から笑い声が途絶えていく。

 

にたぁ、と自身の口端が裂けんばかりの笑みを描いた。

 





次回からは、いよいよねつきの過負荷と異常の出番です。
ねつきのスキルがどのように役に立たないのか、如何使うのか、注目してくださると嬉しいです。

ちなみに不良の最初の台詞を喋ったのは、門司先輩です。さようなら、門司先輩(その他大勢)……と、なってしまうのか、途中で救いの手が差し伸べられるのか、次の展開はだいすくり~むにも判りません!←

次回、「仲間が増えたよ!やったねねつきちゃん!」お楽しみに!
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