杵築ねつきの愉快で苦痛で普通の日々   作:だいすくり~む

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八日目

 

何時もの通り、ざわめく教室へ門司と共に入ると、そのざわめきは水を打ったように静まる。刺さる視線が何時もより多いのは、その後ろに不良と俗に言われている門司が付き従っているからだろう。

その視線を無いかのように扱いながら自身の席まで歩いて行くと、今日も、椅子は剣山のようになっている、といったわけではなく。色々な種類の罵詈雑言の落書きで机まで綺麗に埋められていた。

 

「…素敵な机ですね、ねつきちゃん。」

 

「あはっ、ありがとう。門司君もいずれこうなるよ。」

 

己にとっては、恨み言やこういった罵詈雑言は褒め言葉と等しい。故に、門司から羨望の声が上がり、己は嬉しそうにゆうらり微笑むと礼を言うのだ。丁度、己の席は門司の後ろ。二人仲良く椅子に座る。

 

マジックペンで書かれた落書きは、もう乾いているし、其処は昨日よりも楽に座れる。相変わらず教室は静まり返ったまま。原因の一つとして、昨日よりがらりと雰囲気が変わってしまった門司があがるだろう。何故なら、己と全く同じ目をして、気色の悪い空気を纏っているからだ。

 

予鈴も間近になると、漸く呪縛が解けたのか、一人の女子生徒が彼に声を掛ける。その一方で、ねつきは気にも留めずに今日の新聞を持ち込み読み耽っている。

 

「ね、ねぇ、門司君……、そんな奴と一緒にいないほうがいいよ。門司君までキモくなっちゃうよ…?」

 

連載小説は中々に良い所まで進んでいて、時期に佳境に入るだろう。ねつきのお気に入りのこの小説は、中身が身の毛がよだつほどの内容で、一定のファンがついている。今度、文庫化も決まっているほどだ。

 

「俺が何処の誰といようが関係ねぇだろ。……っは、最っ高の褒め言葉

だな。」

 

題名は、「心中」。その名の通り、色々な堕落した人間たちが出て来て、心中するだけの話だが、その心中の内容が中々に凝っているので飽きが来ない。門司と女子生徒のやり取りは、ねつきには最早聞こえておらず、無関係のものとなっていた。

 

門司が何を喋ろうと、ねつきには関係の無い。例え、一生徒相手に歪みまくった自分勝手な負(マイナス)の主従関係を語っていようと、ねつきには一切責任は無いのだ。

 

今日も、また二人の人間が心中する様を読み届けた所で、丁度良く予鈴の鐘が鳴る。いつの間にか門司とねつきの周りだけ人がいない。

 

新聞をぐしゃぐしゃに折り畳み、机の引き出しに仕舞う。

もう一度、鐘が鳴ったところで席を外していた生徒達が恐々と椅子に座っていく。その中でも、門司の隣の女子生徒だけは、酷く泣きそうに顔が歪み震えているのがねつきからは見えた。如何でも良さそうにそれをみていると、漸く少し遅れて担任が入ってくる。

 

「おはよう。……あ?門司がいるじゃねえか。雪でも降んのか、珍しい。んで、杵築は…まあ、いいか。HR始めるぞ。」

 

相変わらず肝の据わりきった先生だと思う。此方が笑顔を浮かべたら、手を払う仕草をして目を逸らす様は、慣れ切った様子でHRを始めた。流石は箱庭学園の一教師といった所か。

 

そして、何時もとは少し変わった授業風景が流れる。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

お昼頃、トイレでの弁当を済ませたねつきが廊下を歩いていると、不意に耳にした噂。剣道部の復興、部員募集の話。くす、と笑いを零してから、噂を耳にしたねつきは歩き出す。

 

「次は、なににしよっかなー。あ、理事長が呼んでるんだっけ。ま、それは後回しでいいや。」

 

その日の昼休みが終わる直前、教室へねつきが帰ると、嬉しそうに剣道部の入部届けを出し終えた門司が笑みを浮かべて迎えてくれたという。

 





ああ、中々話が進みません…。
慣れるまでご辛抱お願いします…。

次回、放課後です。
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