スパイディのことが大大大好きなマッドサイエンティスト幼女   作:サイリウム

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(本日は2話連続投稿です。こちらは2話目になります。)


11:恐怖

 

 

 

彼女の装備のおかげで、以前の僕よりも格段に早く対処できたのは事実だ。しかしそれでも大切なデートを中断したのは紛れもない事実なのだ。

 

故に開口一番、謝罪の言葉を口にしようと思っていたのだが……。

 

 

「お疲れ様です、ピーター。」

 

「ごめん、レノラ!」

 

「うん? 構いませんよ?」

 

 

戻ってきた僕に対し、いつも通りの笑みを返してくれる彼女。それどころか急いで脱ぎ捨てた服を畳んでくれていて、こちらに手渡してくれる。正直、未だに彼女が内心何を考えているのか解らないが……。少なくとも、表情に出すほどの事ではなかったようだ。

 

い、いやでも。僕が悪いのには変わりないわけで……!

 

 

「本当に気にしていませんよ? むしろ我が夫が活躍する姿を近くで見られた訳ですから。心躍る気分です。さ、ナノマシンで周囲は阻害していますから。ささっと着替えてくださいな。まだ、デートしてくださるのでしょう?」

 

「そ、それは勿論!」

 

 

そう返しながら服を受け取ると、嬉しそうな笑みを浮かべてくれる彼女。

 

その笑顔に、とりあえず胸をなでおろす。レノラの前で考えることでは無いのだが、昔付き合っていたMJとはスパイダーマンの活動のせいで破局したようなものだ。色々と機会はあったのだが、最後まで正体を明かす決心がつかなった僕は、彼女にとって『いつも急にいなくなる男』のように見えていたことだろう。今考えてみれば、そりゃ振られるよな、って男だ。

 

けれどレノラには、全部知られてしまっている。それがいいのか悪いのかは僕に判断することは出来ないが、『とてもやり易い』のは確かだ。

 

 

(そして彼女は、僕の両方を尊重してくれる。)

 

 

多分だけど、こんな人は早々現れない。

 

実はデート相談の合間にトニーやペッパーさんに恋愛相談させてもらったんだけど、2人とも今の僕の生活を聞くなり『早く結婚しろ』って言っていた。まぁ、僕にはもったいなさ過ぎるくらい良い人なのは間違いないのだ。顔を隠している僕に対し親身になって考えてくれた2人が、そう言うのもおかしなことでは無いのだろう。

 

……でも、何故かその場にいたドロッセルは腹を抱えて笑ってたんだよね。日本語で『外堀埋まり切ってて草』みたいな事言ってたんだけど、結局どういう意味なのか解んなかったし、何があったんだろ。

 

 

(っと、早く戻らなきゃ!)

 

 

思考を取りやめ、スーツを脱いで元の服に着替えようとする。

 

これ以上彼女を待たせるのは失礼。そう考え、路地裏の陰に移動しマスクを脱ごうとするが……。それよりも先に、スパイダーセンスが反応する。

 

これは……、ッ!

 

 

「レノラっ!」

 

「どうしましたか、ピ」

 

「ごめんッ!」

 

 

即座に彼女の傍に走り寄り、抱きかかえる。

 

そしてウェブを近くのビルに発射することで、レノラを抱えて一気に空へと退避する。

 

直後、僕たちがいた場所を一瞬にして飲み込む砂たち。物量差をもって、全てを押し潰そうとするソレ。しかし対象がいないことに気が付き、途中で攻撃を辞めたのだろう。下水道から徐々に集まっていた砂たちが人型を形成していき……。見慣れた男が、そこに現れる。

 

『サンドマン』のフリント・マルコだ。

 

確かに、物理攻撃の効かない厄介な相手。

 

だが、彼だけならば……。僕のセンスがこれほどまで“大きく”鳴り響くわけない。

 

 

「今日に限って団体さんだなんてッ!」

 

「ほぅ、よく解ったなスパイダー。」

 

 

その瞬間、僕たちの身体を支えていた糸が切れる。

 

視界に一瞬だけ映ったのは、小型のディスク。僕をクモの怪物に見立ててハンティングしようとする『クレイブン』の武器だ。その射線の出元に視線を向ければ、再度こちらに向かって吹き矢のようなものを打ち込もうとしているのが見える。

 

即座に彼に向かってウェブを射出し、牽制。自由落下し始めた体を支える為に、他のビルへと糸を張り付けスイングを行う。勢いを付けてそのビルの屋上に着地しようとするが……。

 

足元が、消える。

 

幻覚だ。

 

 

「流石スパイダーマン、彼女連れとは私も嘗められたものだね?」

 

「ミステリオ! 彼女とはそんなんじゃないからね!」

 

「えぇ、夫婦です。」

 

「レノラ!?」

 

 

十数人の金魚鉢を被った男が出現し僕を惑わせようとして来るが、センスの言う通りに糸を打ち出し何とか幻覚を解除する。

 

あとレノラ! 色々と早いし、勘違いされると大変だから黙ってて! あとこれから結構揺れるよッ!

 

僕が彼女にそう伝えた瞬間、大きな駆動音と共に、視界の端から高速接近して来る物体。即座に『浮遊板』を展開させ防御に使えば……。案の定ぶつかって来たのは、巨大な翼を背負った『ヴァルチャー』。お手製の翼メカを背負って暴れるお爺ちゃんヴィランだ。

 

そして彼がぶつかって来たってことは……。

 

 

「君も来るよね、マックスっ!」

 

「“エレクトロ”だ、スパイダーマン。」

 

 

センスに従ってウェブのカートリッジを誘爆させ、“絶縁体”の蜘蛛の巣を空中に出現させる。

 

そしてそこに近くの電線を伝って飛び込んでくるのが、全身電気のビリビリヴィラン。マックスこと『エレクトロ』だ。正直、レノラが用意してくれていたこの特別製のウェブが無ければ本気で相手するのが面倒な相手。というのも以前は両方のウェブシューターが電気で爆破されちゃって、確保するのに本当に苦労した相手だ。ほんと、この前彼女に頼んで『すべての環境に適応できる』ウェブシューターの改良をしておいてもらって良かった!

 

だってこの5人がいるってことは、もう1人とっても厄介なのがいるってワケだし……!

 

 

「となると最後はオクタビアス博士!? もう貴方の太陽炉は僕が川に沈めたでしょ! というか制御チップは!?」

 

「よく解ったな、スパイダーマン。あぁそれと、君が私に植え付けていた“余計なモノ”は撤去させてもらったとも。」

 

「あぁもう! また暴走中ってわけね! 了解!」

 

 

メカメカしい機械音と共に現れるのが、4本の工業用アームを操るオクタビアス博士。もとい『ドクターオクトパス』だ。僕が大学時代お世話になっていた人で、アームに宿ってるAIに取り憑かれちゃった可哀想な人。

 

毎回毎回制御チップ作り直して“元に戻してる”のに、また戻っちゃうなんて。普段の博士ならもっと理性的なのに……!

 

 

「……あぁなるほど、これが貴方の宿敵たる『シニスター・シックス』なるモノですか。」

 

「正解レノラ! あと巻き込んで本当にごめん!」

 

「いえいえ、構いませんとも。……ですがこのままだと私が邪魔になりますね。何処か適当な所に落としてもらって結構ですよ?」

 

「流石に無理ッ!」

 

 

6人のヴィラン達の攻撃をよけながら、レノラの言葉にそう返す。

 

いや落とすとか駄目だからね! どこかに“降ろす”ならまだいいけど、今空中戦の真っ最中だよ! 落ちたら即死! ダメ絶対! というかクレイブンとヴァルチャー! 積極的にレノラ狙うのマジでやめてくれない! レディは大切にするのが紳士でしょ! 『シニスター・シックス』じゃなくて、『マナーの欠片も無い・シックス』って名乗れば!

 

 

「ふん、普段の冗談のキレがないな。スパイダーマン。」

 

「弱点を狙うのは狩りの基本だろう?」

 

「あぁもう! 君たち大っ嫌い!」

 

 

突撃して来るヴァルチャーの羽をレノラを抱きかかえながら何とか回避し、クレイブンが打ち込んでくる多種多様な武器をウェブで何とか撃ち落としていく。

 

元が紳士なクリントことサンドマンと、オクタビアス博士はレノラがいる限り攻撃してこないのは解ってるんだけど、マジで残りの四人は容赦ないから本当に困る! というかトニー! 今日は僕の代わりに親愛なる友人してくれるって言ったよね! ならなんで6人もヴィランが僕の前に現れるのさ! さっき倒したトラップスター合わせたら7人だし! 救援呼ぼうにも、こんな状況じゃ電話すら出来ないし……!

 

……ッ!

 

 

「そこッ!」

 

 

近くのビルから電気を伝って、突撃して来るエレクトロの姿を視界に納める。

 

絶縁体のウェブを使用すべきかと思ったが、これ以上特殊ウェブを使ってしまうと今後の捕縛に影響が出てしまう。普段ならばレノラが家から支援してくれるおかげでウェブの残量に気を掛けなくてもいいが、サポートの彼女は今も僕に抱きかかえられたまま。今ある装備だけで、何とかしないといけない。

 

そう考え、近くのビルにウェブを伸ばし回避しようとするが……。

 

糸か、すり抜ける。

 

 

「残念、幻覚だ。」

 

 

ミステリオっ!

 

回避が不可能と判断し、レノラの防御に回していた『浮遊板』を突っ込んでくるエレクトロに向ける。レノラが作ってくれたナノマシンであれば、電力すら無効化することが出来る。故にそれで受けようとするが……。

 

エレクトロの機動が、変化。板を回り込むようにこちらに。いやレノラに突っ込んでくる。

 

 

「悪いな、嬢ちゃん。」

 

「ッ!」

 

 

即座に体を捻り、彼女に当たるはずだった電撃をこの身で受ける。

 

エレクトロを構成する電気が僕の身体を走り抜けるが……。レノラがアップデートを重ねてくれたおかげで、スーツにも多少の電気耐性がある。直撃した僕はちょっとキツいが、抱えてるレノラまで電気に蝕まれることは無い。

 

だが、その硬直がいけなかったのだろう。

 

 

「……。」

 

「そこッ!」

 

 

方向転換してきたヴァルチャーの翼が僕たちに襲い掛かろうとし、クレイブンの放った毒矢がレノラに向かって飛来する。

 

おそらく、両方とも“受けきる”ことは出来る。

 

でもそれは僕だけの場合で、レノラを抱えたままだと不可能なことだ。『浮遊板』は有るが、相手達の攻撃を全て受けきるには“範囲”が足りない。そして彼女を庇いながら相手の攻撃を受ければ……。その後レノラを守ることが出来なくなってしまう。僕のセンスが叫んでいるように、ヴァルチャーの攻撃が直撃すれば肉も骨も砕かれてしまうだろうし、クレイブンの毒は確実に解毒方法がない。

 

せめて、彼女だけでも。

 

なんとか着地できるように背負ってるナノマシンを彼女に渡し。今ウェブシューターに付けているカートリッジを取り外し地面に投げつけることで、クッションにしようとするが……。

 

こっちが行動するよりも早く。

 

 

 

彼女が、僕を、突き飛ばしてしまう。

 

 

 

全力で押し飛ばされたおかげか、僕たちはヴァルチャーとクレイブンの攻撃を回避することは出来た。

 

けれど、空中に浮かんでしまう僕ら。

 

常人であれば、確実に死んでしまう様な位置に、放り出されてしまう。

 

 

「レノラっ!」

 

 

彼女を助ける為に動こうとするが、それよりも先にエレクトロが突っ込んでくる。

 

回避しようにも、レノラを助ける為にシューターからカートリッジを取り外してしまった。再度ハメ直そうとするが、クレイブンの追撃によって弾き飛ばされてしまう。もう片方のウェブは残っているが、エレクトロの攻撃を受け止めきることは出来ない。

 

そしてナノマシンも、さっきレノラを守るように命令を送ってしまった後。再度防壁として使うには、板の形として再構築する時間が必要になる。

 

 

間に合わ、ない。

 

 

ヴィラン達の攻撃を受けながら。地面に落ちようとするレノラに向かって手を伸ばそうとするが、届くわけがない。その場からほぼ動くことが出来ず、見る事しかできない。

 

そんな状況で、彼女の名前をもう一度叫びそうになった時……。

 

世界に、異変が起きる。

 

 

 

「……せっかくのデート。なのですが、ね。」

 

 

 

空中で地面に向かって落ちようとしているのに、彼女は何でもないような顔で、指を鳴らす。すると即座に地面から青い光が溢れ、彼女に向かって隆起し始める。

 

ナノマシンだ。

 

即座に素材を書き換えたソレは、クッション状に。レノラを柔らかく受け止めたソレは、ゆっくりと元の形に戻りながら彼女を地面に届けることに成功する。そしてその直後、隆起した地面から打ち出される、赤と青のカプセル。

 

空を飛ぶエレクトロとバルチャーに命中したソレは、2人を近くのビルに叩き込んだ後……。こちらに向かってゆっくりと飛来。開かれることで、僕に新しいナノマシンを届けてくれる。そしてその直後に開かれる、聞き慣れた通信。レノラだ。

 

 

「れ、レノラっ!? 大丈夫!?」

 

『もちろん、この程度でダメージを受ける様な存在ではありません。先程の“補給”は、補給用カートリッジと、医療用ナノマシンです。折角の時間を邪魔されたわけですし……。いつも通りサポートしますので、手早く済ましてしまいましょう。』

 

「……だねッ!」

 

 

さっきよりもほんの少しだけ声に怒気を含ませた彼女が、そう口にする。

 

あ、うん。これは速攻で何とかしないと不味そうなやつだ。

 

相手はシニスター・シックス。数だけを見れば大いに不利な状況だけど……。これまで彼らの相手は何度もしたことがある。なんの機能もないスーツと、タダの蜘蛛糸しかなかった状況で、だ。それが今はもっと発展した装備に、ナノマシンがある。何よりとっても頼もしい彼女もいるのだ。

 

これで負けちゃったら、今日告白しようとしていた『男』として途轍もなく恰好が悪い。

 

 

「ごめんねみんな! ちょっとだけ本気出させてもらうよッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、『スパイダーマン』。」

 

「レノラ、ケガは!?」

 

「全く。貴方のおかげですね、ピーター♡」

 

 

なんとかシニスター・シックスの相手を終わらせ、全身拘束した後。ナノマシンで生み出した椅子に座っていたレノラの元に降り立つ。

 

そんな彼女は、やってきた僕に抱き着きながら耳元で名前を呼んで、感謝の言葉を伝えてくれるのだが……。

 

 

(……ナノマシンって凄いね。うん。)

 

 

これから告白する女性に耳元で囁かれるドギマギよりも、さっきの戦闘の光景が頭に浮かんでいた。

 

何せ彼女が僕を突き飛ばした瞬間、本当に生きた心地がしなかったのだ。

 

レノラ自身は『無事に着地できる』という確証があったからこそ、突き飛ばしたのだろう。互いに余計なダメージを受けない方法を考えれば、それは間違った選択ではなかった。ただ僕からすれば、レノラがこんなこと出来るなんて知らなかったわけで……。

 

うん、ほんと生きた心地がしなかった。

 

僕のせいで、また大事な人が死ぬ。それだけは何としても避けなければならない。

 

 

「……レノラ、本当に危ない事はしないでね?」

 

「心配してくれるのですか? ふふふ、では控えないといけませんね♡」

 

 

嬉しそうに笑いながら、そう返してくれる彼女。

 

ちょっと不安ではあるが……。もし何かあった時は、僕が何とかすればいい。そう考え、一旦思考を取りやめる。

 

 

(それにしても、色々すごかった。)

 

 

レノラの装備のおかげで格段に戦いやすかったのは事実だが、流石に6人全員の注意を引き続けるのは難しい。そのせいで地上で支援してくれる彼女にも何度か攻撃というか。クレイブンとミステリオが積極的に彼女に攻撃を加えていたのだが……。

 

そのすべてが、ナノマシンによって防がれていた。

 

 

(途轍もなく慌てたけど、ビル丸ごと上から叩きつけられても無傷なんて。)

 

 

クレイブンが持ちうるすべてのハンティング用具でレノラを攻撃していたが、彼女はどこ吹く風。ナノマシンで作り出したのであろうお茶会セットを広げながら、優雅に座って紅茶を楽しみながら僕のサポートをしてくれた。それに怒ったミステリオが魔術を使ってビルを浮かせ、彼女に叩きつけるとかもしてたんだけど……。全部無効化。

 

こっちがエレクトロとか、オクトパスとか、サンドマンの相手にかかりっきりで身動きできない時にソレが起きたから、ほんと生きた心地がしなかったんだけど……。無傷だった時も、色々と恐怖だった。

 

あ、安心ではあるんだけどね?

 

とと! 彼女の技術レベルに引いてる場合じゃなかった! デートがまた僕のせいのようなもので中断しちゃったわけだし、謝らないと!

 

 

「本当にごめん! せっかくのデートなのに、またこんなことになって……。」

 

「気にしないでください。貴方のせいではないですから。ただ少し、時と場合は考えて欲しいですがね?」

 

 

彼女は微笑んでいるが……、目がちょっと笑ってない。

 

見るからに僕に対しての怒りではなく、シニスター・シックスのみんなに対してのモノだ。そこはちょっとだけ安心できるが、色々と苛烈な面がある彼女のことを思えば……。今レノラとあの6人を近づけるのは不味いかもしれない。流石にその場でやっちゃう、なんてことは無いだろうけど、拘束しているのをいいことに大事なところを全力で蹴りつけて破壊しちゃいそうな怖さがある。

 

こ、これ。早くデートに戻らないと……!

 

そう考えながら、もう一度着替えられそうな場所を探し始めた瞬間。

 

 

 

 

 

空が暗くなる。

 

 

 

 

 

最初は雲だと思った。けれど違う、それならば反応しないはずのスパイダーセンスが、聴いたことないレベルで鳴り響いている。雲よりも巨大な何かが、空を覆っている。

 

思わず空を見上げれば……、見えてしまう巨大な艦船。

 

ひとつではない。SFのCGでしか見たことの無いような宇宙戦艦が。数え切れないほどのそれらが、ニューヨーク上空に出現していた。

 

 

「……なんだ、これ。」

 

 

次の瞬間、轟音が街を震わす。

 

思わずレノラに覆いかぶさり、何とか彼女の身を守ろうとするが……、意味など無かった。戦艦から降り注いだ光が、近くの建物に直撃。世界が一瞬にして真っ白に染まり、僕たちを爆風が襲う。レノラがナノマシンを展開してくれたのだろう。繭のようなものが僕たちを包み込み、地面を転がることでほぼノーダメージに抑えることが出来たが……。

 

さっきの砲撃が着弾した地点。建物1つどころか、1ブロックが消し飛んでいる。そこにいたはずの人たちごと、消滅してしまっている。

 

そして空を見上げれば……。

 

同じような砲撃が、何発も。雨のように頭上の戦艦たちから降り注いでいる。

 

 

「何、が……。ッ!」

 

 

僕の困惑に応えるように、空に映し出されるホログラム。

 

見るからに宇宙人な皺枯れた薄紫の存在が、こちらに語り掛けて来る。

 

 

『聞け、そして歓喜しろ。貴様たちは偉大なる“サノス”によって救われる栄誉が与えられた。既に石のありかは解っている。最後の石であるタイム・ストーンを差し出すか、我々の手によって消滅するか。好きな方を選べと仰せだ。』

 

 

おそらくあちらの技術によって翻訳され、伝えられた言葉。

 

あの宇宙戦艦に乗って侵略しに来たヴィラン達たちはこの町にある何かを求めていて、それを奪いにやってきた。それは理解できたのだが……。『タイム・ストーン』と宇宙人が発言した瞬間。頭が割れそうになるほど、スパイダーセンスが反応する。

 

つまりそれを渡してしまうことは。僕にとって、いや地球にとって最悪の未来が待っていることに他ならない。大それたことだと笑われてしまうかもしれないが、絶対に間違ってない。それほどまでにセンスが反応している。ここで負ければ、全てが終わる。

 

 

(他のヒーローたちと合流しないと!)

 

 

ともかく、敵が攻めて来たのだ。動かなくちゃならないと思い立ち上がろうとするが……。

 

抱きかかえていた彼女が、震えていることに気が付く。

 

一瞬恐怖によるものかと思ったが、違う。

 

 

 

怒り、それも特大の。

 

 

 

そして僕のセンスが、あの宇宙人たちよりも脅威だと。目の前にいるただ一人の女性の方が、恐怖であると叫んでいる。ただひたすら、彼女の機嫌を直すことに全力を尽くせと、叫びつくしている。このまま放置するのは不味いと、警鐘を叩き潰すほどに鳴らして続けている。

 

こ、声を、かけ、なければ。

 

 

「れ、レノラ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………貴様らは、私達の、邪魔を」

 

 

 

するのですね?

 













カノンイベント
「が、頑張って色々用意したぜ! これなら流石に何とか……。あれ?」
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