幼少期に誘拐されたかっちゃんが、死神の後継者として帰ってきた話 作:月光舞詐称者姫
オールマイト、言わずと知れた日本のNo.1ヒーローであり、1人で日本の犯罪率を大幅に軽減。ある時は拳一発の余波で周囲の天候を変える、時には沖縄まで一瞬で飛んできて事件を解決しては、はるか北の事件を同じ日の内に解決して見せるなど単なる超パワーの枠を超えた規格外の力と、それを世のため人のために使い続ける底抜けた善性、そしてどんな窮地でも諦めない熱いスピリットを持った、史上最高のヒーロー。
世界一の大国、アメリカNo.1のヒーローですら、彼に憧れヒーローを志したと言えば、その強烈な光の強さが伝わるだろうか。
『私が来た』そんな言葉と共に人を救う、世界最高のヒーロー。では、そんなヒーロー史上最強の敵とは誰か。裏社会の闇を知る者は、表には名の知られていない、今は都市伝説扱いとなった
だが、その巨悪ともう1人、オールマイトを死ぬ寸前のギリギリまで追い詰め、あわや世界を滅ぼしかけた大悪党がいる。
あの戦いを知る世界各地の市民達は、こう応えるだろう。
「DETROIT……」
「ひっ!?」
「SMASH!!」
太く、力強い声が響く。先ほどまで敵はいないとばかりに暴れていた、全身がヘドロで構成されたヴィランは、その言葉に顔を青ざめさせるが、遅かった。
降り注ぐ右ストレート。その圧倒的な風圧は、物理攻撃を寄せ付けないはずの彼のヘドロを吹き飛ばし、無数の細切れへと変貌させる。
「HAHAHA!皆、もう大丈夫!何故って……?」
ビチャビチャと飛び散り、抵抗ができなくなったヴィランを前に笑いながら立ち上がる。今その場に到着した瞬間に事件を解決した男。
青を基調にした三原色カラーのコスチューム。頭からピョンと飛び出た二本の触覚のような髪型、1人だけ他の人々と異なるアメコミ風の陰影が強調された画風であるかのように感じる風格、
「私が来た!!」
「「「「オールマイトだぁ!!!!」」」」
英雄の到着に、市民達が歓声を上げる。いままで恐怖で震えていた市民達の顔が輝き、歓声が上がる。
「すげぇ、俺たちが苦戦してたヴィランを……」
「パンチ1発で……なんつぅ力技……」
ヒーロー達も戦慄する中、オールマイトは気づく.ヘドロヴィランの所持品だろうか、周囲に散らばった物の中に、細長く四角い物体があることに。
「む?」
近づき拾い上げたそれは、大型のUSBメモリのようなアイテム。『VENOM』の文字と液体でVを模ったようなマーク。間違いなくこれは
「ガイアメモリ……だめだよ君こんなもの持っちゃ……」
そう言いながらヘドロヴィランに向き合おうと気を取られたその一瞬。飛来した青い光弾がガイアメモリを撃ち抜き、機関部を砕いて破壊する。
「ッ!?」
遅れて響いてくる銃声に市民が悲鳴を上げる中、卓越した動体視力で弾道を捉えていたオールマイトは、それが指し示す方向に向き直る。フード付きのコートで顔を隠しておりそもそも遠くて詳細な顔立ちは視認できない。
だが、狙撃銃を置いて立ち上がった男が、右腕を横に広げてくるりと半回転。背中を向けて、手で作ったgoodサインの頂点を、くるりと下に向けてサムズダウン。その動きに、致命的な程見覚えがあった。
「待てッ!」
そのまま自分の視覚の外へと消えていくその男に、思わず全力で跳躍し追いかける。だが、オールマイトがたどり着いた時、その場所には既にその男はいなかった。はっと振り返れば、そこに置いてあった狙撃銃も忽然と消えている。
「sit!ゴホッ……!」
全盛期に比べればだいぶ衰えたと、舌打ちして咳き込む彼の脳裏から、はためくマントと、腕の青い炎の残像が離れない中。
一方、都内某所。薄暗い洋館の一室の中にバチバチという音が響き、紫色のワームホールが出現する。そこから顔を覗かせたのは、フード付きのコートを纏い、その下に黒に赤のラインの入ったジャケットという、季節外れの厚着姿の青年。
「見てたわよ、
ソファに腰掛ける、同じ色のライダースーツ姿の少女、"蛙"の個性を持つ蛙吹梅雨がそう声をかければ青年、爆豪勝己は、コートのフードを取り払い、そのツンツンした髪型と鋭い素顔を曝け出す。
「わざわざあんなポーズをして挑発して、後ちょっとで間に合わなかったんじゃないかしら?」
「間に合ったんだからいいだろ。」
彼女の叱責に、ぶっきらぼうに返す爆豪。
「貴方がどうなろうと別にいいんだけど、ここのアジトがバレたらジェントルが大変になるんだからね!」
それに抗議をするのは、赤い髪にツインテールの小柄な少女。否、子供に見える身長とは裏腹に爆豪よりも遥かに上の年齢を持つ彼女は、ラブラバという名前で活動し、各地で犯罪行為の動画を撮影しては動画サイトに投稿するヴィラン、ジェントル・クリミナルの相方だ。
当のジェントルはと言えば
「まぁまぁ、いいじゃないかラブラバ。彼にも何か考えがあってのことなのだろう?」
そういいながらミトンに包まれた手で焼きたてのアップルパイを持って来ていた。
「ちょうど、アフタヌーンティーの時間だ。ゆっくり聞かせてはもらえないだろうか?」
そう言って食事の準備をする。すると扉がガチャリと開き、
「ようリーダー、帰ったぞ。」
爆豪達と同じ、黒のジャケット姿の白髪の青年が現れた.
「収穫は?」
その問いに肩をすくめて、ポケットから3本のガイアメモリを取り出した。
「これだけだ。」
「シケてんな。」
その言葉に舌打ちをすれば、青年も肩をすくめる。
「この世界に何本ガイアメモリが散らばってるかわかってるだろ?みつかりゃラッキー。それが手に入るかと言われれば……」
「確かにな。」
そう言ってまたそっぽを向く爆豪に、アップルパイを手に取り白髪の青年もソファに腰掛ける。食べカスが……というジェントルの嘆きはスルーだ。
「で、俺にも聞かせてもらいたいねリーダー。なんだって今更オールマイトなんだ?」
あの人の仇撃ち、ってわけじゃ無いんだろ?という彼の言葉に触発されたのか
「オールマイトは……」
ぽつりと、爆豪は語り出す
「俺の憧れだった。」
「そりゃそうだろ。この国のガキでオールマイトに憧れない奴がいんか?」
「
父であるNo.2ヒーローに憧れ、拗らせ、行き着いた先が中東に拉致られてのガイアメモリの実験台。この国に到着していの一番にやったことは父の非公式ファンクラブの会員カード作成。そんな白髪の青年、No.2ヒーローエンデヴァー、轟炎司の長男坊、轟燈矢はジト目でそういう蛙吹の言葉に肩をすくめた。
「ガキの頃は、オールマイトを超えるNo.1ヒーローになるって豪語してたモンだ。」
「よく知ってるわ。二人の喧嘩に巻き込まれたもの。」
燈矢と爆豪がまだあの場所に連れてこられたばかりの頃、未来のNo.1ヒーローはどちらかで盛大に喧嘩したものだ。勝者?泣きながらそれぞれの足で取っ組み合う二人の頬に同時にドロップキックをかましたそこのカエル娘である。
「じゃあなんだ?八つ当たりか?どうしてあの時守ってくれなかったんだっつう」
「そんなんでもねぇよ。」
燈矢の質問に首を振る。そうだ、そんなんじゃ無い。これは
「宣戦布告だ。アンタを超えるヒーローになる。コイツを使ってな。」
真っ白一色で、文字の刻まれているはずの部分に修復されたような跡を残すガイアメモリを手にそう言う爆豪。
「じゃあやっぱり、二人は受けるのね。雄英高校……」
ラブラバの言葉にこくりと頷く。リスクのある道なのは理解している。自分たちに、この国のまともなヒーローができるのか怪しいのも。だがそれでも。
「受けてやるよ雄英高校ヒーロー科。」
そう言う彼の手に握られている赤いアイテムの名を、ロストドライバー。かつて日本の歴史上最恐といわれたヴィラン、仮面ライダーエターナルの象徴とも言えるアイテム。これは、死神と恐れ語られた、男の後継者たる青年が、真の仮面ライダーとなる物語である。