現代転生!1989年開始の平成を超能力と未来知識で駆け抜けろ! 作:ユビキタス
「君、来月から来なくていいよ」
「え?」
働いていた会社からもう来なくていいと言われた。
解雇である。
就職氷河世代真っ只中の俺は今年で45歳。
バブルが弾けた学生時代。
そこから大学を卒業してもどこにも行く当てが無かった就活時期。
苦労して入った会社では毎月100時間近く残業をして、休日返上で働いていた。
その結果がこれ。
会社の業績悪化、効率を良くするため人員を整理してAIを活用。
君の仕事はAIでも事足りる。
人事から言われたその言葉がひどく頭の中に残っている。
失意のうちに、会社を出て自宅に向かう。
「はは、そうか……社宅に住んでいたから住む場所も変えないといけないのか……」
仕事も住む場所も失って、俺は途方に暮れた。
「もういっそのこと……トラックでも突っ込んできてくれねぇかな」
願いというのはどうしょうもない時には叶えてくれるもので、信号が青になり横断歩道を歩いていると、横からトラックが俺めがけて突っ込んできた。
激しい衝撃の後に、中に舞う体。
空中でトラックの行方を目で追うが、トラックも電柱に突っ込んで運転席がぺしゃんこになっていた。
ありゃ運転手も即死だろう。
すると俺は頭から地面に落ちていき、そこで意識は途切れた。
幸いなのは痛みが無かったことだろうか。
『というわけであなたは死にました』
「でしょうね」
俺が意識が覚醒すると、そこには天使っぽい存在がそこにいた。
頭の上にリングがあって、瞳は椎茸の切れ目の様にキラキラしていて……中性的で男か女かは分からないけど。
『えっと、輪廻転生って知ってますか?』
「そりゃまぁ……日本人で多少の教養があれば知ってるんじゃないでしょうか」
ちなみに俺は市役所のカウンターみたいな場所で、目の前のスーツを着た天使と1対1で話している。
俺の方も視線を下に向けると死ぬ前に着ていたスーツを着ている。
体に触れようとすると、スカスカって空振ってしまうが。
『ああ、もう魂だけの存在……幽霊みたいな感じなので、体を触れることはできませんよ』
「やっぱり死んだんですか」
『そりゃまぁ凄惨に』
輪廻転生って話が出ているくらいだ。
ここは死後の世界ってことだろう。
輪廻転生だと、魂は巡るってことだから、何者かに俺はまた転生するってことになるんだろうか?
赤ん坊からやり直しってことは記憶を引き継ぐこともできないんだろうな。
俺という存在は消えて、新しい存在に生まれ変わる。
あんまり徳を積むようなことはできなかったし、犬や猫……いや、虫とかに転生する可能性もあるか。
地獄行きってならないだけマジか?
『実は今キャンペーンやっていて、並行世界の日本が大変なことになってしまって……それを〇〇さんに助けてもらうってこと出来ませんかねぇ』
「しがない会社員ですよ俺は」
『ええ、でも努力する才能はありますし、何より私がその世界に干渉できる魂の格的に〇〇さんが丁度いいんですよ』
「丁度いい……とは」
『お、興味湧いてきましたか? 実はその世界は平成になったばっかりなんですが、令和になる時に異世界からの侵略を受けてしまうんですよ』
「異世界って……どんな? SFみたいな宇宙人的なの?」
『いえいえ、ファンタジー的なゴブリンとかドラゴンとかそういうのでして……』
「それだと銃で撃退することができるんじゃないの?」
『できなくはないですけど、相手は魔法を使っていますので、通常の物理攻撃が効かないとか、銃弾を剣で切り裂けるみたいなことができたり……』
「どうやってそんな敵と戦えば?」
『それは勿論技術力を高めるしかありません。ロボット技術だったり、武器の技術だったり……でも〇〇さんにはそんな技術を発展させられるだけの力は無いですよね』
「そりゃありませんね」
『なので、我々は転生特典として超能力一式をあなたに付与しようと思います!』
すると目の前の天使は超能力一覧として幾つか能力を見せてくれた。
未来予知やテレポート、パイロキネシスといった無難な物から重力操作やバリアと他にも色々揃っている。
『今なら特典で子宝に恵まれるのもつけちゃいます! 童貞だった〇〇さんでも女性を満足させられる絶倫野郎に大変身ですよ!』
「それなら……まぁ……」
『契約成立ですね!』
「あ、あとちょっと待ってくれ」
『何でしょう?』
「俺をハネたトラックの運転手がもし地獄行きとかになるようだったら減刑してやってくれないか? ハネたくてハネた訳じゃないだろうし」
『優しいですね……わかりました』
その後細々とした契約に目を通すが、俺は平成初期の1989年に20歳に到達した時に現在の意識が覚醒して、動けるようになるのだとか。
それから30年間で準備を整えて、異世界からの侵略に備えなさいとのことだった。
『それでは契約は成立しましたので、新しい人生を楽しんでみてください。それではごゆっくり〜』
俺の意識は再び暗転する。
こうしてパラレルワールドの日本での俺の生活は始まるのであった。
目が覚めると6畳の畳が敷かれた部屋の布団の上で俺は目が覚めた。
「いて……」
前世の記憶と今世での記憶が混ざり合っていく。
「今世での俺の名前は宮本敦(みやもと あつし)か」
キッチンと寝室が一緒になっているタイプの部屋で、部屋にはトイレしかない。
風呂なしの安アパート。
カレンダーを見ると、天使が言っていたように平成元年……1989年1月8日。
本能に平成が始まった初日に俺は転生者として意識を覚醒させたらしい。
「1989年……」
前世では学生をしていたが、俺は今バブル期真っ只中にいる。
とりあえず手持ちの品を確認する。
現在の俺は失業中。
公共職業安定所(現在のハローワーク)に通っていている状態で手元には現金15万円と普通運転免許。
一応職安に月2回通っていれば失業手当として3カ月間は15万円のお金が入ってくる。
その後は自力で何とかしなければならないが、仕事も自己都合じゃなくて会社都合になっていたから経歴には傷はついていない。
「バブル期だから一応仕事にはありつけるだろうけど……」
待っているのはバブル崩壊からの平成不況である。
それに平成が終わると同時に異世界からの侵略が始まる。
それまでに金を貯めて、異世界からの侵略に耐えられる技術か組織を作らないといけない。
「俺にできるのか……そんなことが……」
前世はただの会社員。
しかもAIに仕事を奪われるような替えの効くどこにでもいる会社員だ。
「弱気になっていたらダメだ。新しく生まれ直したのだから、今ある知識と、天使から授かった超能力の力を使って今度こそやり遂げてみせるんだ!」
俺は財布を握りしめ、まずはどのような超能力が使えるのかの確認を行っていくのだった。