現代転生!1989年開始の平成を超能力と未来知識で駆け抜けろ! 作:ユビキタス
超能力が使える……と言っても、そんな直ぐに上手くいくとは俺も思ってなかった。
「出でよ炎!」
ポっと指先から小さな炎が出てくる。
「これじゃあライターにしかならないな」
右手の人差し指に灯っていた炎を息で吹き消すと、窓を空けて周りの景色を見る。
「懐かしい」
まだ日本中が騒いでいた一番活気に満ちあふれていた時代。
誰も彼もが夢や希望に満ち溢れていて……もう少しでこの狂乱のバブルが終わるとも知らずに。
「未来予知とかできないかな? それができればだいぶ楽になるんだが……」
俺は頭で念じてみるが、ぼんやりとした何かのイメージが浮かんでくるだけで、明確には見えてこない。
修行が必要ってことだろうか。
「とりあえず飯でも食いに行くか」
6畳の部屋に住んでいる様な人でもカジュアルなスーツを数着持っていて、着こなす時代。
流石にブランド物ではないけれど、身だしなみを整え、髪型もワックスでオールバックにしてから外に向かう。
「うん、今世は結構イケメンじゃん」
結構眼力があるタイプの顔をしている。
体つきは細マッチョって感じ。
細マッチョが流行るのは2000年代中盤からだったはずなので、今の美意識的には微妙にズレている感じか?
漢らしさ、たくましさが受けていた時代だもんな。
財布を持って、部屋から出る。
エアコンも無いようなアパートであるが、まぁ安物件はまだエアコンが無い時代。
それこそスマホの前であるガラケーの様な携帯電話も一般に浸透してない時代。
どちらかと言うとポケベルが一番流行っていた時代である。
ゲーム機で言うとファミコンが主流の時代。
確か1990年……来年にスーパーファミコンが発売されたはず。
「スーファミかぁ……懐かしいな」
令和の時代でこそレトロゲーの定番となっているけど、スーファミは当時の時代だと革新的であった。
近くにあった町の電気屋を覗くと、ファミコンが1万4800円で売られていた。
「ファミコンで1万4800円の時代か……」
ぶらぶら歩きながら牛丼屋が目に付き、牛丼並盛を注文する。
値段は1杯400円。
令和だとギリギリ500円切ってるくらいで今とそんなに変わらないように思えるが、こっからバブル崩壊によるデフレが始まって10年ちょっとで牛丼価格が280円前後まで落っこちる。
インフレの方が景気的には良いとされるが、物価がそれだけ落っこちれば景気がどれだけ冷え込んでいたかよく分かる。
というか、自分はその冷え込んでいた時代に就活をしていたから余計にね。
牛丼を食べ終えてコンビニで今週のジャンプを購入する。
「そっか……ジョジョの1部がこの頃か」
他にもドラゴンボールや聖闘士星矢、こち亀などのラインナップがズラリと並ぶ。
懐かしさすら覚える。
ジャンプを読み終えてからどうやって稼ぐか頭を悩ませる。
超能力がしょぼかった以上、自力である程度は稼いでいくしかない。
ここから儲けるとしたらIT系。
パソコンの普及が徐々に始まった段階であるが、情報技術……ITを活用したシステム構築だったり、パソコン系の製造部品などに入り込むことができれば、巨額な富を手に入れることができる。
「となるとまずはパソコンを手に入れるところからかね……今のアパートだと電話回線引っ張ってくる工事入れるの難色示されるし、引っ越ししなきゃいけないか。なににせよ元手になる金が必要か」
となると覚えている限りで金になりそうなのはやっぱり競馬。
1989年の競馬はウマ娘の漫画にもなっていたからよく覚えている。
ちょうど今年から始まる平成三強(オグリキャップ、スーパークリーク、イナリワン)の時代。
そして来年には復活の有馬記念が待っている。
覚えている限りの古馬路線で単勝転がししても、結構な金額になるだろう。
(この頃は単勝、複勝、枠連の3つしか賭け方が無かったもんな。三連単で万馬券ってのも難しいか)
一番近いレースだとイナリワンの春の天皇賞まで待たないとダメか。
そのレースが行われるのも4月下旬。
それまでは軍資金を蓄えなければならない。
「うーん……それまでの間は超能力を鍛えるとしますかね」
町は天皇の崩御で暗い雰囲気の中、平成の元号が電気屋のテレビから発表され、俺はそそくさとアパートに戻るのだった。
超能力を鍛える為に俺はコピー用紙を買い込んできた。
始めたのは念写の超能力の練習。
コピー用紙を持って念じると、徐々に文字が浮かんでくるから、それで未来の情報を引っ張ってこられれば、大きなアドバンテージになる。
ただまずは未来の情報を引っ張ってくるってよりは今日の新聞とかを念写して引っ張ってくる。
「うーん、一応新聞の見出しだけとかを転写して引っ張ってくることはできるけど、やっぱりカメラとかの方が良いのかな?」
使い捨てカメラは手頃な値段で買えるが、現像するのに時間がかかったりするため、転写の練習をしてから使い捨てカメラを購入して写真の現像を超能力の力を借りてしようと考えていた。
ちなみに現像の時間が1時間以内にできる機械が登場するのはもう数年後で、デジカメも一般人が手に届く値段になるのは10年は先のことである。
「とにかく練習をしていこう」
そんなこんなで1ヶ月の間、働きもしないで、未来予知に繋げるための超能力の練習をひたすら繰り返していくことになるのだった。
「超能力の力を使って頭を良くすることってできないのかな?」
未来予知の練習を繰り返している時、俺はそんなことを考え始めた。
いや、普通にパソコン系の勉強はするのであるが、学習能力を高めることができないかについて考えてみることにした。
「とはいえ、学習効率をよくするって超能力使ってやるってどういうことだろうか?」
俺はそんなことを考えながら押し入れに何か無いかと漁ってみると、そこからタブレット……の様な物が出てきた。
「これは?」
試しに電源を入れてみると、タブレットは点灯し、画面の中から俺を送り出してくれた天使がそこに映っていた。
『あ、繋がった。ようやく気がついてくれた』
「天使さん、どうも。無事に転生して、意識が覚醒しました」
『それは良かった。いや、平成になったばかりの日本はどうだい?』
「今日は皆模に伏しているので、暗い感じですけど、町に活気がありますね」
『バブルが弾ける前夜……日本が一番勢いがあった時期だからね。さて、超能力は使ってみたかい?』
「ええ、滅茶苦茶しょぼくて……現状だとライターの代わりくらいしかできませんが」
天使は申し訳なさそうに、
『いやぁ、こっちが送り出せる器の総量的に、最初から最強……みたいなのは無理だった。だからお詫びとして学習教材用にタブレットを送っておいたから、それで超能力だったり、勉強の役に立ててよ。一応令和までの技術についてはそれで学べると思うからさ。あ、ただそのタブレットは特別製で、令和までは壊れないようになっているけど、そのタブレット他の人には見えないようになっているからね』
と、懇切丁寧に天使は教えてくれた。
超能力を鍛える方法もこのタブレットの中にデータが入っているらしい。
俺は天使にお礼を言ってから、通話を切るのだった。