CyberPunk2077_Engram Controller 作:アルファルド・ロマネスク
私とヘイデンはゴミ山に帰ってきていた。
あの後店にいた人たち全員に感謝された。
特にあの親子からは何度も頭を下げられた。
命の恩人だ、恩はいつか返すだとか。
自分がしたかっただけだけど、やっぱり感謝されること自体は気分がいいね。
それが人殺しで得たってことを除けばだけど。
あの強盗を殺した事自体は後悔してないし、そうするべきだと思った。
ただ、世間一般的に不味いんじゃないかなとは思ってる。
殺人は本来許されてはいけない、ましてや感謝なんて。
でも、おかげで私個人が通報されなかったし、そこはちょっと感謝しないといけないかも。
そんな事を考えていると、ヘイデンがドラム缶を椅子代わりに座って、私にその隣へ座るよう促してきた。
今回の件を話したいのかもしれない。
私は促されるままヘイデンの隣に座った。
「まず、さっきの件だが……見過ごせなかったのは分かるが、あんな危険なことはやめてくれ」
かなり切実そうな、腹の底から無理に引っ張り出したかのような苦悶の声だった。
それはそうだよね。自分の娘に似ていたから私にその名前をくれた。
そんな子が目の前で似たような死に方したら、それこそヘイデンは壊れちゃう。
そこまで頭が回ってなかった。
「ごめんなさい」
私はそこでやっと気づいて、深く頭を下げた。
ヘイデンはそれを見ても何かすることはなかった。
「だが……よくやった」
その言葉のあと、私の頭の上に温かな感触。
ヘイデンの手が私の頭を撫でていた。
優しい手つきで、心が落ち着いてくる気がする。
「次に、その体はどうしたんだ……それも覚えてないか?」
撫でながらヘイデンが私の身体に仕込まれたもののことを聞いてくる。
「ナイトシティに身体をいじっていない人間はほとんどいない。俺でさえ失業前は目と胸に強化パーツを入れていた。だが、アイビスお前のは間違いなく軍用だ……普通の人間が入れられるような代物じゃない、いろんな意味でな」
そうは言われても、私は全く覚えていなかった。
なんで私の体に刃が入っているのか、拳銃弾程度だと傷一つつかない身体なのか、なんなら使ってないだけでまだまだ沢山のインプラントが私の中に眠っている。
それらがどうしてあるのか、何処で入れてもらったのか、私は何一つ覚えていなかった。
「ごめんなさい、覚えてないの……」
「……そうか」
覚えてないものを聞いても仕方ないと思ったのか、ヘイデンは聞くのをやめてくれた。
「とにかく、今はもう寝よう。ダンボールなのは申し訳ないが」
「ううん、大丈夫」
ヘイデンがダンボールの布団に入るのに合わせて私もダンボールに身を預けた。
今日は色々ありすぎた、そろそろ眠りたい。
私はダンボールの掛け布団を被り、やがて訪れる眠気に緩やかに身を預けた。
「アドレナリン分泌量が過剰すぎます! バーサーク止まりません!」
声が聞こえる……私の頭の奥から響いてくるような声が。
「制御チップオーバーロード、各種インプラントの稼働停止、停止! 停止、できない!?」
顔が見えない人たちが叫んでいる。
私は裸で腕のマンティスブレードを両方展開して暴れているように見える。
あれ、私が私を外から眺めてる?
「◯◯◯止まれ! 止まれと言っている!! 命令だぞ!?」
一人の男の人らしい人物、やっぱり顔は見えない。
私がそれに目掛けて、何かよくわからない言葉を叫びながら襲いかかっている。
……男の人のお腹が裂けた。
そのまま手足や首を滅多裂きにされて、グッチャグチャになって死んだ。
警報のような音と共にいろんな装備を着込んだ人たちがなだれ込んできて、私に向かって撃っている。
肌を弾が裂いているのに、肌の下から見えたのは金属のプレート。
痛くない、それよりもっと苦しい何かがあるとばかりに叫んで、私はその人たちへ突撃していった。
これは、夢?
違う、あまりに鮮明で、記憶?
もしかして、これは記憶を失う前の私を私が俯瞰しているの?
考えていたら私は装備を着込んだ人たちを全員殺していて……そんな私自身と目が合った。
顔も腕も、目さえも真っ赤に染まって……嗤っていた。
「っ!? ハァッハァッ!!」
目が覚めた。
やっぱりあれは夢?
それとも?
いや、考えてるところじゃない。
ここはどこ?
さっきまで私はヘイデンと一緒にダンボールで横になってたはず。
でも、ここには天井がある。
無機質な白い蛍光灯が私の体を照らしてる。
周りには鉄棚がたくさんあって、いろんな工具や缶スプレーがはいってる。
正面はシャッターもあるし……ここはガレージ?
「よう、目は覚めたか?」
後ろから声。
心臓が跳ね上がるような感覚ともにバッと後ろを振り向いた。
翻る自分の金髪が視界から消えれば、そこにいたのは屈強な男性。
ボディービルダーも真っ青というくらいムッキムキ。
黒のタンクトップに筋肉が浮いている。
黒のタンクトップ……真ん中に描かれている絵、なんだか見覚えがある。
「お前さんたちを探し出すのに苦労したぜぇ? まさかあんなゴミ山で、2人そろってダンボールで寝てるんだからよぉ。眠姦されても文句言えねぇぞ」
男はそう笑いながらシャッターを空けた。
外の眩い光が私の目を強く焼く。
刺激のつよい光に眩みながら目を慣らせば、渋い表情でパイプ椅子に座っているヘイデンと、その前にいる似たような格好をした人たち。
なんだが少し軍人っぽい。
皆、この筋肉男さんとおなじ絵がどこかしらに入っていた。
タトゥー、服のイラスト、銃のペイント、車。
やっとこの絵を何処で見たか思い出してきた、あのお食事処の入り口だ。
そんなに大きくはなかったけど確かにあった。
髑髏が6を加えた絵を。
「手荒い招待ですまねぇな二人とも。ようこそ、アロヨのシックス・ストリートへ!」