CyberPunk2077_Engram Controller 作:アルファルド・ロマネスク
「ようお嬢ちゃん。酷いじゃないの俺に話し通さないで勝手しちゃってさ」
私は今何をしているのだろう。
知らないおじさんに捕まって、ヘイデンと一緒に椅子に縛り付けられてる。
さっき見たこの展開、どうしてこうなってしまったのだろう。
すこし時を巻き戻そう。
私はあのスカベンジャー、ゴルバチョフを倒したあと元の場所に戻った。
依頼達成を報告して、ヘイデンの足を治すためのお金をもらうはずだった。
でも、いざたどり着いたらなんか既にシックス・ストリートの人達は皆死んでいて、ヘイデンはシックス・ストリートの人達とは別の人に捕まっていて、それに唖然としてたら急に視界が真っ暗になって、で、こうなった。
うん、我ながら自分でも何を言ってるか分からない。
とりあえずこのおじさんは私たちに害を与えたいわけじゃないみたい。
ただ、なんか笑ってはいるけどお怒りって感じが伝わる。
「とりあえずお嬢ちゃん、名前は確かアイビスだったっけ?」
困惑する私をよそ目に、おじさんが話してきた。
私は頷くことで返事をする。
おじさんは納得するように何度か頷いてから話を続けた。
「アイビス、お前は多分ソロとして初めての仕事だったんだろうな。でなきゃこんな酷いことしないよな。俺に話を通さないで勝手に依頼を達成するなんてさ」
「……ヘイデンの足を治すためのお金をくれるって言われたから。そもそもあなたは誰?」
私の疑問におじさんは頷いてから答えた。
「俺はエル・キャピタン。このサント・ドミンゴ一帯の依頼を取り扱っているフィクサーさ」
「フィクサー?」
「裏世界の仕事仲介人ってとこさ。今回の件は別のフィクサーが取り付けてた依頼でな。勝手にお前が依頼のターゲットを殺っちまったせいで向こうのソロが食い扶持困っちまったんだよ。なんならそれを止めれなかった俺にもいろいろ迷惑が来てんのさ」
「……ごめんなさい」
そんな事が起こっていたなんて。
知らなかったとはいえほかの人の仕事を奪っていた。
仕事がないと大変なのはヘイデンを見ていると分かる。
それをヘイデンの為とはいえ勝手にやってしまったのは怒るよね。
他の仲介人経由なら尚更。
謝るしかできない。
だってコレで謝罪のかわりに命と言われたら困る。
私の命が飛ぶのは構わない。
やったのは私だし、死ねと言われてもはいそうですかという感想しか出てこない。
だってもう2人殺した。殺した上で殺したことに何の感情も抱けない。
明らか私は普通の人とは身体だけじゃなくて心も違う。
殺されても文句は言えない人だ。
でも、それでヘイデンまで殺されるのだけは嫌だ。
「安心しな、ルール破りなアイツラと違って殺しはしないさ。お嬢ちゃんは利用されただけだし、そのうえかなり使える人材っぽいしな」
使えるという点が強調された風に聞こえた。
そっか、私が彼から見て仕事に使えそうだから害する気がないんだ。
使えなかったら殺されてたのかなぁ。
ふとヘイデンに視線が向く。
ヘイデンはもう諦めたかのように空を眺めていた。
「それで、どうすれば私は貴方に許してもらえるの?」
「シンプルな話さ、これからはちゃんとフィクサーを通して仕事しろ。たったこれだけさ。アイビスみたいな有能をそのまま引退させるのは勿体無いからな」
あまりにも美味しい提供。
つまり、今度からは自分で仕事を選べて、その報酬はフィクサーさん経由だからある程度安心できるってことかも。
ヘイデンは何か言いたげだけど、何も言わないで今度は俯いた。
「今回は弁償って感じでタダ働きになってもらうが、次ソロとして俺を通した仕事をするならちゃんと払ってやるよ」
そう言って彼は私たちを解放してくれた。
私とヘイデンは彼を何度か見て、頭を下げてその場を去った。
エルおじさんのいた場所から結構離れて、やっと私達がいたゴミ山に戻ってきた。
私は正直クタクタだ。
朝起きたら攫われて、様子のおかしい犯罪者を殺して、殺し終わったらまた攫われて、お叱りをうけて帰ってきたらもう17時を回っている。
もう怒涛の一日だよ。
ヘイデンも連続で攫われて疲れたと思う。
もうこのままダンボールに横になろうかな。
うん、そうしよう。
寝るに早すぎる時間だけど、それだけ私は疲れていた。
ダンボールに横になって、夕焼けを見上げる。
するとヘイデンの声が聞こえた。
「アイビス……また、仕事に行くのか?」
心の底から心配する声だった。
わかってる。ヘイデンは私が危ない目に遭うのが嫌なんだ。
もしくは私が人を殺すのが嫌なんだ。
亡くなってしまった娘さんそっくりの子が、自分のために命を削るのが嫌なんだ。
でも、私はヘイデンに恩を返したい。ゴミ山から助け出してくれた恩を。
記憶がない私にはそれしか無い。
出会ってまだ2日。それでも、私には他に何もない。
ゴミ山に裸で埋まってた。
それはきっと、私が価値のない存在だったからだろう。
でなきゃそんなゴミを不法投棄するみたいに人を捨てたりしない。
捨てた人からすれば、私はゴミ山に埋もれるべきゴミだったに違いない。
そんなゴミに、娘に似ているからとはいえ服も名前もくれた。
私がヘイデンのために色々するにはあまりに十分すぎるんだ。
「うん、行くよ……ごめんね、ヘイデン」
申し訳ないと思いつつも、ヘイデンの足を治したいと思う気持ちは変わらない。
戸籍が多分ない私がヘイデンの治療費を稼ぐ方法は、ヘイデンと同じようにゴミを拾うか、違法なことをするしかないから。
長い沈黙が私たち二人の間を流れた。
ヘイデンは私の答えを聞いてからずっと俯いていた。
でも、やがて顔を私に向けた。
「……お前が自分で考えて出した答えなら、俺はそれを尊重する」
そういうヘイデンは、諦めにも近い、でもどこか覚悟を決めたような表情をしていた。
そんな表情をさせてしまったことを申し訳なく思うけど、私は自分の頭の疲れに抗えなかった。
返事の言葉を返す前に、私はダンボールへ倒れ込んだ。
ヘイデンの私を心配する声が遠く聞こえる。
でも眠いんだ。
「心配しないでヘイデン……ただ、眠たいの」
その一言、ヘイデンの返事はもう聞こえなかったけど、それだけ言い残して私は意識を手放した。