CyberPunk2077_Engram Controller 作:アルファルド・ロマネスク
サント・ドミンゴのとある場所、バッドランズと呼ばれる郊外スレスレの場所に私はいた。
今回はちゃんとフィクサーを通したお仕事。
あの後少ししてエルおじさんから連絡が来た。それがこのお仕事のお誘いだった。
今回は私だけじゃなくて、エルおじさんがオススメするネットランナーって人と一緒に仕事をするみたい。
それで仕事現場に向かう前にここで待ち合わせをしていた。
緊張してたのかな。合流時間に対して私は大分早く到着してしまって、結構暇を持て余してた。
なにせ脅されもしないし命の危険もない状態で誰かと話をしたり仕事をしたりするのは何気に初めてだから。
もっとも、自己紹介とかが終わったら命のやり取りになるんだけど。
足元の石ころを片足で踏んで、靴越しの足裏でコロコロ転がして遊ぶ。
靴底から伝わる石の感覚がちょっと気持ちがいい。
バッドランズからたまに吹いてくる砂が少し目に入って煩わしいけど、見渡す限りの荒野と、反対側の不夜城ナイトシティとのコントラストがなんとなく私は好きだった。
そうやって待ってたら、近くで車が1台止まった。
多分あれだ。
私は車に向かってゆっくり歩く。
後部座席から男の人が出てきた。
「……お前さんが今日の相方か?」
「うん。アイビスっていうよ……あなたは?」
男の人は私を見て結構戸惑っているように見えた。
子どもじゃないかって呟きが微かに聞こえた。
私は自分の年齢が分からないから子供かどうかは分からないけど、まあ確かに私はちっちゃいからそう言われても仕方ないのかな。
「いや、ロバート。ロバート・ヘイズだ。今日はよろしくな」
一つ咳払いをしてから彼は名乗った。
出された手を握り返して、私は頷いた。
「仕事内容のおさらいをしよう」
ロバートがそう切り出した。
私も再確認は大事だと思うし、その提案に乗った。
今回の仕事はこう。
荒野に生きる人達、ノーマッドと呼ばれる集団からの依頼。
すっごく大雑把に言うと、車を盗まれたから取り返してきてっていうお話。
なんでもシックス・ストリートの人達と交渉中に乱入してきた別のギャング、タイガークロウズによって車を取られちゃったみたい。
車さえ無事なら連中はどう料理しても構わないって。
車をある程度無傷で返せたならボーナスもくれるそう。
エルおじさん的にはこれを私の試金石としてるみたい。
つまりこれに失敗したら、次のお仕事は回ってくることはなくなるってこと。
それで、タイガークロウズの人たちを殺すってだけなら多分私一人でも大丈夫。
でも車の運転となると私は無理。
だってアクセルとブレーキに足が届かないもの。
運転した事自体ないけど、そもそもその2つに足が届かない時点で私は車を動かせない。
だから変わりのドライバーが必要だった。
それでエルおじさんが彼を当ててくれた。
もっとも、運転だけで終わらせるわけじゃないけど。
エルおじさんの話によると機械いじりとハッキング能力が凄い人みたい。
視界に入れた敵が突如燃えたり電流を吹いたりしたらこの人が私の視界を使ってやったと思えって言われた。
「よし、数の把握と先制攻撃は任せろ。アイビスはその後突撃だ。頼んだぞポイントマン」
「らじゃー」
歩いて少しした先にある廃工場に向かいながら、私達は軽くそんなやり取りをした。
そうしてたどり着いた工場には表に二人、裏に一人って感じ。
中は私にはわからない。
でもなんとなく、外の倍以上は居るんだろうなぁって感じはする。
勿論なんの準備もなく突撃したら大変なことになる気は凄いする。
そこでロバートの出番だった。
「ちょっと待ってくれ。あのカメラを使う」
そう言ってロバートが工場にあった監視カメラを見つめた。
見つめたまましばらく固まってたけど、直後私の視界に情報が流れ込む。
壁越しに敵の姿が見えた。
「クロウズのくせにこんなやっすい
「不思議だね、見えるよ」
「今やつらの位置情報をすっぱ抜いた。俺が監視し続ける以上、ずっと奴らの位置は丸わかり。で、俺が知ったデータをアイビスの視覚情報とリンクさせた」
「……えっと?」
「あー、これからずっと敵の位置がわかるってだけ理解してればいい」
「わかった」
半分くらい何を言ってるかわからなかったけど、とりあえずロバートのおかげで敵の位置がずっとわかるのはありがたい。
位置がわかるだけで立ち回りがすごく楽になるしね。
「じゃあアイビス、俺が合図したら突撃してくれ」
「うん」
ロバートの指示に従う。
きっと私よりも長い間こうやって戦ってきたんだろうし、私よりそういうのはうまそう。
だから言うことを聞けば楽に終わるはず。
「よし、今だいけ!」
ロバートが指示を出した。
私は脚の感覚に従う。
ジェンキンス腱が最大効率で稼働して、私を拳銃弾並みの速度で加速させる。
それだけじゃない。前は分からなかったアドレナリン増加、あれも頭に仕込まれたインプラントによるものだ。
ジェンキンス腱の起動と同時にそれ、アドレナリン変換器が起動する。
増幅された身体挙動はさらに加速を強化してあっという間に見張りの一人の懐へ。
何か叫ぼうとする見張りの一人、でもその声より先に、私が以前に殺したスカベンジャーから貰ったままだったショットガン、テステラを鳩尾にねじ込んで引き金を引いた。
水音と炸裂音が同時に鳴り響いて、見張りの一人の上半身と下半身が泣き別れした。
もう一人がこちらを視認して何かの銃を抜こうとするけど、それより先に銃を持ってない方の腕からマンティスブレードを展開して、その口に刃を突っ込む。
一瞬で声は血の泉に沈んで溺れるような音に変わった。
そのまま刃を下へ一気に力任せに下ろせば、顎から下が綺麗に真っ二つになってそいつも死んだ。
この流れに身を任せる。
正面の扉を、テステラをリロードしながら蹴り破る。
私の足は思った以上にパワーがあるみたいで、ダンボールみたいにドアが軽々とちぎれて吹っ飛んだ。
中にいたクロウズの人間たちが一斉にこっちを向いたけど、彼らが何かをする
前に私の一番近くにいたクロウズの一団の頭部が一斉に発火した。
まるで脳味噌を煮えたぎった油に突っ込まれたかのような見事な燃え方に私は一瞬戸惑ったけど、多分これがエルおじさんが言ってたロバートの業なのだと本能で察して、そいつらは放置して一番遠くの敵へ走り出す。
異常を察した残りのクロウズが一斉に私に銃を向ける。
それより先に私のテステラがうち一人の脳天を計24発のスチールベアリングで叩き割る。
飛び散る赤をよそ目に膝を折ってスライディング&リロード。
私の頭があった場所に鉛弾がとんで行くけどそこは既に虚空。
膝のバネと脚のインプラントの力を使って一気に膝を立たせて再度走る。
もう一発テステラが頭を消し飛ばす。
次は捕捉された。
頭の消し飛んだ死体が地につくより先に私はそれの後ろに回り込んで服を鷲掴みにする。
遅れて肉に弾が着弾する音が伝わってきた。
ミートシールドと呼ばれる技術、身体が覚えていた。
盾にした死体の腰に目が行く。
これは使えそうだ。
腰にあったそれを引きちぎると同時に死体の背を思いっきり蹴り飛ばして相手側へ送る。
飛んできた穴だらけの死体に戸惑った彼らは避けきれずに死体に当たって下敷きにされ、動きが拘束される。
そのめがけてさっき死体から引き千切ったこれ、焼夷グレネードを思いっきり投げつける。
死体に当たると同時にそれは起爆して、死体の下敷きになった連中が一気に悲鳴を上げて燃え盛る。
残った敵は片手で数えられるほど。
とは言え全てに手を出す必要はない。
私の視界越しに見えてる敵、特に私の手がまわらない奴はロバートが片っ端から焼いていた。
パンッと言う軽快な音ともに頭から出火して倒れていくのを見るのは、自分もネットランナーと対峙した際同じ目に遭うんじゃないかという恐怖を感じる殲滅速度だった。
そうやって中にいた連中を全員掃除し終えたころにロバートが入ってきた。
少し疲れた様子なのは多分ハッキングで頭をフル回転させたせいかもしれない。
「よし、あとはこの車だな」
流れ弾に当たることなくピッカピカのターゲット車両。
ロバートが軽快に運転席に乗って、私が助手席に乗る。
シャッターはロバートのハッキングで自動的に開いた。
そのまま車は何事もなくその場を後にするべく進みだした。
そうして進み続ける車、特に問題もなさそう。
少し追撃を考慮したけど、今のところはなさそうで助かった。
「いい腕してるなお前さん」
ロバートが私を横目に見ながらつぶやいた。
私は小首を傾げたけど、ロバートが続ける。
「初めて会ったとき、正直おもりかと思った。エル・キャピタンの紹介とはいえ、どう見ても俺よりかなり年下の子供にしか見えなかったからな。だが、一緒に仕事してわかった。お前さんは一流のソロだよ」
「それは、ありがとう」
なんか認められたみたい。
後頭部をなんとなく掻きながら感謝をいう。
初めてロバートが微笑んだ気がした。
その後私達は無事依頼を終えて、それぞれに報酬が振り込まれて仕事は終わった。
私の本当の意味での初仕事は、無事成功した。
今日出会ったロバート、彼ともう一人との縁は、ここから続いていくことになる。