パラレル・バーチカル・ウロボロ   作:馬憐狼詩

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第二十七話 【アルカナ編】地元のギャングを撲滅させよう【ファントムテン、魔法継承、トロフィー】

第五層六界-アルカナ

世界歴 104679年5月25日

──────

 

──ッダッガァァァアァアアァァン!!!

「ほらほら! 私を殺してみろよ!」

 

──ドガガガガァァァァガァアアァン!

フラッキーが光魔法と闇魔法を無理やり圧縮し、悍ましい勢いのレーザーがラピスとウルトを襲う。

 

「クソ女がぁ! ウルト、暴発させて!」

 

ラピスとウルトがレースさながらに、箒をバンクさせながら低空を並走し声を掛け合う。

 

「わかってる!  暴発する炎(エクスブレイズ)!」

 

──ッバダァァアァ、ッボワァ!

空気魔法で上空に仁王立つフラッキーめがけて 暴発する炎(エクスブレイズ)を放つ。

しかし、フラッキーが暴風を起こし、発動した直後から 暴発する炎(エクスブレイズ)が吹き飛ばされる。

 

「クソ! あいつ、何なら効くんだ!?」

 

──ダガッダガッダガッダガッ!

ラピスとウルトを突き刺さんと、槍が何本も襲う。

速度を上げて逃げる双子。

 

「ラピス、槍なんとかしてくれ!」

「ロン毛の時と違って、ちゃんと槍にマナを纏わせ続けてる! 操作したくても触れない!」

 

防戦一方の双子と多彩な魔法を使うヒットマン。

ラピスの『上!』の一言で、2人同時に天高く箒を飛ばす。

 

「動きながら状況整理! 箒のマナ残量と索敵状況!」

「70パーセント! 索敵は半径2メートル! これ以上広げるのは今は無理だ!」

 

ラピスの広範囲索敵、停止した月達(フリーズムーン)がフラッキーのマナを検知する。

 

「上! 散!」

 

箒をバンクさせ、左右に散る双子。

 

──ッドッガァァァァァアアァァアン!

空中から落雷が突如として発生。

雷系統と見切ったラピスが避雷針を生成し近くのビルに雷を逃す。

 

──バリリリッバリン!

圧倒的な電力にビルの窓ガラスが割れて飛び散る。

 

「ラピス! ジャンヌ使えよ!」

「結構しんどいけど、まだ使わない! 肉を切らせて骨を断つ! その瞬間を作るよ、ウルト!」

 

再び合流した双子が作戦を練るため飛び続ける。

 

──中央区 広場前ビル

「うおー、スゲー。スゲーじゃん、ラピスとウルト」

「すいません、中央区のど真ん中でドンパチが始まると思ったんですけど。結構、距離ありますね」

「いいよいいよ、見えてるし」

 

ビルの屋上から、ラピス達の戦闘を見守るエリザベス達。

ミウラが双眼鏡を覗き込みながら観戦を楽しむ。

 

「ちょい押され気味じゃない? 2人とも、手の内隠してんじゃないの?」

「さすが先輩。そうですね、2人にはいざって時に本気出すように言ってましたから」

 

国防の部屋にいた時とは変わって、しっかりと元帥の服装に着替えたミウラ。

双眼鏡から手を離さず、凝視し続ける。

 

「フラッキーって、いろんな魔法使う奴だっけ?」

「そうですね。十面走(ファントムテン)のフラッキー。魔法継承魔具で武装して様々な魔法を使う。もっぱら部下達に魔法継承させては、死地に送ってるそうです」

「マジか、趣味わる」

「その魔法継承魔具ってなんなんですの?」

 

エリザベスとミウラの会話にヘラクレスが食いつく。

 

「なにって、ヘラちゃんの上羽にラピスとウルトの魔法継承の烙印があるじゃない。それを押した本体が魔法継承魔具よ。聞いてないの?」

「そうなん? ワテはなんも聞いとらんで」

「ヘラちゃんのお母さんは言葉足らずね。ラピス達が身につけてるリングは魔法継承魔具なの。2人はヘラちゃん同様、お互いの魔法を少しだけ使えるくらいに思ってるようだけど」

 

エリザベスが常に身につけているネックレスのトップを、服の中から出してヘラクレスに見せる。

綺麗なオレンジ色の鉱石に刻印が刻まれている。

 

「継承魔具は継承元の人間が死ぬと、その人の魔法が完全に補完されるの。これを身につければ自分の魔法以外も使えるってわけ」

「なんや、聞きたいことが沢山出て来たわ」

「私の継承魔具は補完されて長いから、この人のマナはもう感じないけどね」

「女将さんの継承魔法っt」

 

『あ!』と突如ミウラが叫ぶ。

 

「おい、やべーぞ! 俺行くか!?」

「大丈夫ですよ。統率の取れた阿吽の呼吸の2人組が最強って言うのは古今東西の事実です。1人より2人、100人より2人」

「……ならいいけど。2人が最強ね。……ベティと誰かさんみたいにか」

 

──中央区 イブリーン通り

「フンッ、こんなもんでしょ。おい、そっちの男! お前も癖毛の女みたいにぶっ飛ばしてやる!」

 

土埃が一帯を覆う。

広場前ビルから観戦していたミウラが声を上げたちょうどその時、まさにラピスが地面に吹っ飛ばされたタイミングだった。

 

「フンッ。お前、ファウストって知ってる? ベルモントの犬。あいつの雷魔法は貰ってて正解だった。雷自体を操るのはもちろん、筋肉操作の電気信号を増幅させて体術強化を図れるからね」

 

フラッキーがラピスをぶっ飛ばした術は、単純な高速の殴打だった。

高速で動いたかと思ったら、フラッキーの右ストレートがラピスの鳩尾に綺麗に決まったのだ。

 

「かの国防元帥、雷蹄(らいてい)と同じ原理さ。とはいえあっちは、雷放出のエn」

「お前、この土埃が舞う中で俺達から目を離したな。命とったぜ」

 

──キュィィィイイィィイィン!!!

土埃の中からラピスがジャンヌの状態で飛び出した。

右手を大剣にし、切先をフラッキーに向け突っ込む。

 

「鉄のアーマーか! 勉強になる、ッヨ!」

 

フラッキーが光魔法と黒魔法を圧縮したレーザーを放つ。

 

──弾指

──キュゥゥン!ダンッッッ!!!

フラッキーの背後から、三叉に先端が分かれた槍が貫く。

そのままフラッキーの体をビルに打ちつけた。

 

槍がビルに突き刺さる。

体を貫かれビルと槍のサンドイッチ状態のフラッキー。

勢いよくビル外壁に打ち付けられた衝撃で、曲がってはいけない方向にありとあらゆるモノが折れ曲がっている。

 

槍の貫通、全身への強い衝撃、即死だ。

 

「うーん、もっと上手く連携できたかな」

「そうか? 俺は十分だと思うけど」

 

ジャンヌの状態で突っ込んだラピスは、フラッキーが観測した時点でウルトの作った虚像だった。

本体は、槍がフラッキーを仕留め損ねた時に備え、背後上空に旋回していた。

 

「まあいいか。伝説を作りましょ」

 

合金魔法で操作し、槍をビル外壁から引っこ抜いた。

槍を右手に持ち、見るも無惨なフラッキーの死体を掲げる。

 

すでに双子を囲むように野次馬、もとい街の住人数百人が動向を見守っていた。

 

声高らかにラピスが叫ぶ。

 

「いいか! 我々ポアロファミリーは、この街からギャング、及びそれに付随する悪を殲滅する! 1人残らずだ!」

 

それに合わせてウルトも隣に立ち並び、左手でラピスの持つ槍を一緒に掴む。

続けてウルトも叫ぶ。

 

「みんな、見えるだろう! ここにあるフラッキーの骸は、我々の武力を語るに十分な証拠になるはずだ!」

 

『だからなんだ人殺し!』『街を壊しやがって!』『ギャングがいるから秩序があんだろうが!』と想定以上に罵詈雑言が飛び交った。

 

そりゃそうだ。

ギャングにチンピラ、いない方がいいとされる者たちも人間だ。

人が人を殺めれば、それはどんな正義でも許されない。

 

と、されるのが一般的だが、ポアロファミリーにとってはその範疇ではない。

 

良しとされる正解が自分達の心にはある。

 

「よく聞け! 我々の目的は安寧だ! 純粋な安寧だ!」

「たかが子供、たかが一家と侮ることなかれ! 我々は街のためなら、この身を粉にして生きる所存だ!」

 

フラッキーの死体をトロフィーの如く掲げる双子。

滴る血が顔にかかるが動じない。

 

── 中央区 広場前ビル

「ラピスとウルト、有望すぎるなぁ。国防に来てくんねーかな」

「うちの子達を引き抜かないでくださいよ」

 

ミウラは口角を上げると、体勢を少し低くし踏ん張った。

 

「本人達の意思に任せなよ」

 

──ドッ! バリリリッ!!!

怒号、衝撃、稲妻

一瞬でビル屋上の床が爆心地のようになり、そこにミウラの姿は無かった。

 

「うわ! ミウラの旦那はどこ行きはったんや! んん? あそこの閃光、もしかしてウルトはん達のとこかいな!?」

「ええ、衝撃が走った頃にはついてるでしょうね。なんせ、アルカナ最速の人間だから」

「最速ったって、あんな速度は人間ミサイルもええとこや! 体が無事なわけないやろ!?」

「それが無事なのよ。圧倒的フィジカル。あの人が移動すれば、暴牛が地団駄を踏んだが如く、地面がめくれる。ついた異名が雷蹄(らいてい)よ」

 

──中央区 イブリーン通り

──ダガンッッ!!! バリリッ!

怒号、衝撃、稲妻。

 

双子が振り向くと、そこには重厚な衣服を身につけた軍人がいた。

青白い光が『バチッ! バリリッ!』と音を立てる。

 

爆心地のような地面の真ん中に、稲妻を纏った男が仁王立つ。

 

『カツン、コツン』と正装用ブーツのヒールが音を立てながら、男がラピスとウルトに近づいた。

 

「あら、国防のトップがどうしたんですか?」

「何か俺達に用ですかね?」

 

アドレナリンのせいでライディングハイな双子が軽口を叩く。

静まり返る群衆。その視線の先で、双子を睨む雷蹄(らいてい)

 

その場の雰囲気を手中に収めたミウラの動向を、固唾を飲んで群衆が見守った。

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