パラレル・バーチカル・ウロボロ   作:馬憐狼詩

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第二十八話 【アルカナ編】地元のギャングを撲滅させよう【クリーン活動、拍手喝采、世界の救世】

第五層六界-アルカナ

世界歴 104679年5月25日

──────

 

『……おい、あれ雷蹄(らいてい)ミウラじゃないか?』『国防のトップがなんで?』『おいミウラ! そのガキ共が暴れてんだ! やっちまえ!』

双子を睨むミウラに、群衆が動揺しながらも野次を飛ばし始めた。

 

ミウラが双子に問う。

 

「何やってる」

「見てわかんない? 街のクリーン活動よ。しかも自主的に」

 

ラピスの答えに頷くでもなく、ミウラがウルトの方を見る。

 

「俺も同じだ。ギャングを殲滅してる」

「なぜ」

「この街に不要だから」

 

──パチ、パチ、パチ

ミウラが拍手し始めた。

その光景をラピスとウルト、その場にいた野次馬も含め凝視する。

 

「礼を言う、ありがとう。その骸は十面相(ファントムテン)と恐れられているフラッキー=ディスウィズだね?」

 

国防のトップからの唐突な謝辞に群衆が息を呑む。

 

『今、国防がこのドンパチを肯定した』と、野次馬が面食らう中、ミウラは続ける。

 

「君たち一家がギャング達から一方的に、生活妨害や恐喝を受けていたことも聞いている。気持ちは察しよう。しかし、街を破壊したことは厳正に処分しなくてはならない。」

 

『どう言うことだ?』『双子はギャングの被害者なの?』『ほら、この子達は探偵で、依頼で捕まえたのがギャングとかで、家ボロボロにされてたじゃん』

 

徐々に群衆の声が罵倒から擁護の声に変わっていく。

 

「ただ、難しい。ギャングとの1件がなければ君たちがこんなことをしなかったのも事実。釈明の余地があるとすれば、破壊された街に対して群衆がどう捉えるか、だな」

 

ミウラが双子に、『声出すならここじゃない』とウィンクでサインを送る。

 

「確かに私達、ポアロファミリーはギャングの脅威に晒され、家を破壊された! だがしかし、これは私怨からの報復か、否! 改めて身に染みた、ギャングという街の癌を取り除かんという気持ちからだ!」

「そうだ! 我々はこの街に生き、生かされている! この街を跋扈する悪を、これ以上は野放しにできない!」

 

双子の気持ちがノって来る。

 

「我々がこの街に平穏と安寧をもたらす!」

「悪は殲滅する! 必要な悪など、この世に存在しない!」

 

──パチパチパチパチパチパチ!

ミウラが拍手を始めた。

そして双子を異端と扱った群衆さえも、拍手喝采となりビル街に拍手の音が鳴り響く。

 

「なるほど! ここにいる生き証人達は拍手をしたか! 国にはそう伝えねばな」

 

ミウラが群衆に『この双子への拍手は検証材料とする』と暗に示した。

 

「後ほど君たちを事実確認と、報復からの保護の名目で拘束する。それは心しておくように」

 

ミウラが双子に近づき耳打ちをする。

 

「ラピス、ウルト。10年前に見たきりだったけどスゲーじゃん。戦士になるの勿体無いと思うよ、俺は。……2人共、国防に来たらいいんじゃない?」

 

笑ってそう言うと数歩下がり、群衆に手を挙げて挨拶をした。

 

「では」

 

そう言うと、『ダガンッ! バチチッ!』と衝撃を走らせ、雷蹄(らいてい)ミウラは去っていった。

 

「ねえ、ウルト。今、ミウラが『戦士』って言わn」

「ヤーマン! ラピス! ウルト!」

 

群衆の中からロックスが駆け寄って来た。

怪我をし、フラッキーの血をふんだんに浴びた双子を、普段は陽気な男が悲壮な顔で見つめる。

 

「なんだよ、ロックス。俺達に落胆したか? 俺達はn」

「頼む! 俺達(アイアンドアイ)の世界を救ってくれ!」

 

ロックスがドンドンと自分自身の胸を叩く。

思いもよらぬ言葉に固まる双子。

 

「アイアンドアイは第二層二界、ウィンクルムから来たんだ。……我々の世界を救ってほしい」

 

血のついたウルトの服を掴み、目を覗き込みながら懇願するロックス。

 

ウルトはロックスから視線を外し、震えるようにラピスを見る。

ラピスもただならぬ顔でウルトを見ていた。

 

「頼む! アイアンドアイの世界は15年前、地底人に……『アガルタ人』に地上を占拠されたんだ! ウヌらの力が必要なんだ!」

 

ロックスは何を言っているんだ?

いつもは愉快な奴じゃないか。

みすぼらしく、金に不便しながらも楽しく生きている、そんな奴じゃないか。

 

ポアロ姉弟は以前から、ロックスが外界から来た存在だと暗に気づいていた。

しかし、飛び出した言葉の規模に思考が追い付かない。

 

「……なんで、俺達なんだよ。……お前は何者なんだよ、ロックス」

「アイアンドアイはウィンクルムの地上人であり、革命軍の人間だ。革命軍とアガルタ人との間にある絶望的な戦力差を補うための、そのための戦士を探しに来たんだ! セーラ!?」

 

──ピロピロピロピロピロピロ!

ポリスの馬車のサイレンが鳴り響く。

 

「君たちがポアロ姉弟か!? その死体がフラッキーだな!? ん、君は? 双子の知り合いか?」

 

複数のポリスが慌ただしく、現場に介入してくる。

 

「あ、いや。こいつはそn」

「何がなんだかわからないが、君たち双子は国防に身柄を引き渡す。ったく、お上は何を考えてんだか。ドンパチを傍観して容疑者を保護だなんて」

 

ポリス達がフラッキーの死体を確保し、双子を馬車に誘導する。

群衆も、『双子は無罪だろ!』『あんた達、ありがとうね!』なんて叫びながらそれを見送る。

 

双子が振り向くと、取り残されたロックスが肩を落としてこちらを見ていた。

 

「ウルト」

「ああ」

 

ウルトとラピスが立ち止まる。

 

「ロックス! ちょっと待ってろ! 後で話を聞くからな! ダチとして!」

「そーゆーこと!」

 

ドレッドヘアの男が涙を拭う姿が見えた。

 

「……ヤーマン!!!」

 

──中央区 広場前ビル

「先輩が移動で破壊したこのビルの外壁なんかは、一体どう処理するつもりですか?」

「全部、ギャングのせいでいいでしょ」

 

ミウラの移動に伴うビルの損傷を、笑いながらつつくエリザベスと適当にいなすミウラ。

 

「ところでや。ラピス姐さんとウルトはんは劣勢だったやろ? なんで勝てたんや? ワテも参戦しようか正直迷ったで」

「簡単よ、勝因は1つ。フラッキーがバカだったってこと。だって基礎がまるでなってない。ただの応用の塊」

「そうなん? ワテは魔法の手数が多すぎて、勝たれへんと思ったわ」

「どんなに手札の層が厚くて、応用が効いてもダメ。索敵をしないんじゃね。それが敗因よ」

 

『あ、確かにやで』と、そこでヘラクレスがフラッキーの敗因を整理できた。

 

「うん、楽しかった。とりあえず、ポアロファミリーによる一連の騒動は、国防がお咎めなしにするから」

「ありがとうございます。さすが、ミウラ元帥」

「ヘラクレスも、ありがとうね。マジで楽しかった。ラピスとウルトは3日ほど国防で預かるから。その間に2人の英雄譚を街に流さないとね」

「そうします。先輩に借りが出来ましたね」

 

ミウラが口角を上げ、真っすぐエリザベスの目を見た。

 

「お返しに、国防にポアロ姉弟を入れてよ。もちろんヘラクレスも」

「ッフ。それは丁重にお断りします」

 

ミウラの眼光は曇りのない純粋なものだった。

が、エリザベスの回答で目線を下に逃がした。

 

「ま、本人達の意思に任せよう。じゃあね」

「この恩は必ずどこかで返します。ヘラちゃんの空間魔法で国防までお送りしますよ」

「せやせや」

 

三人はビルの屋上を後にし、帰路についた。

 

──ポリスの馬車内

「ウルトさ、ロックスの件、どう思ってる」

「正直、面食らってる。それに、あいつの言葉だけじゃ何も想像できない。情報がなさすぎる」

 

ポリスが国防にポアロ姉弟を輸送する中、双子はロックスの言葉を頭の中で反復していた。

 

「15年前、地底出身のアガルタ人に地上を占拠された、か。意外と最近だな。それでロックスは革命軍の戦力を探しに来てたと」

「ウルトさ、もっとおかしな話があるでしょ。グランティは過去に四層に行ってる。その時はウィンクルムの技術を使ったんでしょ? おかしくない?」

 

窓の外を見ていたウルトが、勢いよくラピスの顔を見る。

 

「そうだよな! ロックスは自然エネルギーを体に帯びてない、リアリス人みたいに。なのにロックスはどうやって来たんだ?」

「なるほどね。グランティの使った技術も、ロックスがここに来た方法も、そのアガルタ人とやらの技術が関係ありそうね」

「少なくとも、ロックスは生身。魔法や能力が使えると思えない。そこに地底人の技術か」

 

ウルトが口に手を当て、考えを巡らせる。

 

「ま、堂々巡りね。ロックス本人に聞くしかないか。それかグランティに聞くか。でもこっちは戦士とやらにならないと教えてもらえないし。……ウルト、ウィンクルムに行くでしょ?」

「あたりめーだ。世界を助ける云々より、あんな必死なダチの願いを聞けないわけないだろ」

 

馬車は走り続け、フロントガラスから眺めるその先に国防が見えてきた。

 

「お前達すごいな。てかポアロファミリーさ。どんな手使ったから知らねーが。少なくともポリス管内では、なんの罪にも今のところ問われてないぜ?」

「私達、探偵なので」

「え、探偵ってそうなのか? 国防にも、お前達の保護が理由で向かってんだぜ?」

「そうですよ。探偵ってそういうものなの」

 

ラピスがポリスの話を適当に流しながら、物思いに耽る。

 

「ライディングハイなのに。ライディングハイじゃないな」

「……その気持ち、わかるぜ」

 

その後、国防に三日間保護されている間に、双子が街中で英雄とまつり上げられることになるのだった。

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