第四層五界-テリオン
世界歴 104679年4月5日
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──ロルストン
「ボス、聞こえますか? 例の時間から30分経ってますが、ノスタは現れません」
──ウィンデル
「……おう、引き続き頼む」
事務所のマイクが椅子に座り込む。
ロルストンにいるキリトからの報告内容が芳しくない。
──ロルストン
「マジ、全然現れないっすね」
「ま、こんなもんだろ。なんせあのノスタだ。トップが時間通りに来なくても、普通だろ」
「でもキリトさん。かれこれ2時間は見張ってるすよ。時間通りに来てくんないと、そりゃ疲れるくね?」
上下真っ黒のスウェットに、真っ黒のバラクラバ。
身元がわからない格好をした3人組がターゲットを見張る。
「2人とも、緊張の糸を緩めるな。ノスタが来て、事務所に入ったらそこで皆殺しだ」
「にしても、サンベイもイカれてるっすね。サンベイに寝返った、ここの組長も殺せとか」
「サンベイからしたら、簡単な2択なんだよ。土産を持ってきたアホを仲間にするか、土産だけ貰ってアホを殺すか。兄貴分を一回裏切ってるやつを信用できるか?」
キリトが二人に言い聞かせる。
裏社会の道理は、上納された物の良し悪しではないと。
「……ハァ。ウチらの事務所にはサンベイが来るし、こっちはノスタが来るし。なんかこう、スーってしてきた」
「俺達は役目を果たす、いいな。あっちは『ボス達』に任せよう」
──ウィンデル
事務所の前、自動車屋の敷地に一台の車が停まった。
太陽の光を鋭く反射させ、黒光してるボデーが高級感を演出する。
──ガチャ、バン
後部座席から一人の男が降りてきたのが見えた。
マイクに緊張が走る。
「……おう、俺もここまでか」
ガラス越しに見た男の顔に、つい弱音を吐くマイク。
右手の葉巻はそんな動揺を気にも止めず、ユラユラと紫煙を燻らせる。
「よう、お前がマイクか? オイラの顔見てビビっただろ。まあ茶でも出せや」
事務所に入ってきた男は、本来ここにいるはずがない存在だった。
「おう、悪いな。サンベイはコーヒーが好きだって聞いてて、茶はないんだ。コーヒーなら出せるけどよ、どうする『ノスタ』?」
白髪で短髪、顔に傷を負ったスーツの男に問いかける。
歳はマイクの一回り上そうだ。
「なんだ、茶はねーか。まあ、いいよ。じゃあ、オイラにコーヒーくれろよ。ここ、座っていいか?」
『おう』と返し、コーヒーの準備をし始めるマイク。
ソファにゆっくり座り、事務所を見渡すノスタ。
「自動車屋やってんのか? 表の稼業もやるってのは利口だよな。ただその分、事務所がパッとしねぇじゃねえか」
「おう、俺はこのくらいでいいんだよ」
湯気を立たせたコーヒーが、ノスタの鼻先をくすぐる。
「いい香りだな。上等品じゃねえか? サンベイの接待用か、ただ品がいいのか。……ズッ、うん、上手いな。オイラはあんまりコーヒー飲m」
「おう、いつ俺のタマ取るんだ? やけに喋るじゃねか」
「オイラが喋ってる途中だろうが」
マイクが葉巻を嗜みながら、ノスタを凝視する。
やけに落ち着いた男が、アウェーでゆっくりコーヒーを楽しむ。
すでに場の雰囲気はノスタの手中だった。
「ところでよ、お前んとこの若いのはいつ動くんだ? オイラの弟分の組がまだ襲われてねえけどよ。早くやっちまえよ」
「おう、まずは俺の知らないことを教えてもらおうじゃねえか。俺はy」
「ガタガタうるせぇよ馬鹿野郎! ぶっ殺すぞ!」
なおも、場の雰囲気がノスタに傾く。
「見りゃわかんだろ、馬鹿野郎! サンベイはここに来ねえよ、オイラが殺したからよぉ!」
雰囲気、流れ、それらをノスタが操る中でマイクは冷静だった。
なんでノスタが来たかは知らねえ。
だが、外の車には運転手が一人、ここいら一帯もこいつの部下はいねえらしい。
一人で乗り込んで来たならワケがあるはずだ。
しかし、だからと言ってノスタの動向を探るわけではない。
この世界はやるかやられるか、弱肉強食それだけだ。
『フゥー』と煙を吐き出すマイク。
「やれ、グレイ」
──弾指
上下黒のスウェットを着た『狼』がノスタを裸締めした。
そのまま、ソファから立ち上がらせる。
「よう、ノスタ。テメー、俺達を嵌めたのか? ロルストンの仲間に何しやがった」
「グッ!……へへ、オイラはサンベイをハジいた以外、何もしてねえよ。弟分から連絡がないから、いつ組事務所を潰すのか聞いただけだ」
グレイが
急に
マイクが葉巻を咥えながら席から立ち上がり、ノスタに近づく。
「……フー。おう、そもそも俺達はサンベイの依頼で、オメーのタマを取るのが目的なんだよ」
「なら良かったな。オイラをハジかなくても、よくなったじゃねーか。サンベイはもういねえんだからよ」
「おう、証拠は」
車の方を見て、ノスタがクイっと顎を動かした。
ノスタを拘束したまま、外に出る。
「おう、ゴラ! テメーら親父に何してんだ!」
「うるせぇ、コノヤロー! さっさとトランク開けて、こいつらにサンベイ見せやがれ!」
運転手が慌ててトランクを開けた。
そこにはノスタ同様、散々メディアで見てきた裏社会の重鎮、サンベイの死体があった。
トランク一面に敷かれたビニールシートの上に投げやりに放置されている。
顔は傷はなく綺麗だが、断末魔を放って果てたことが悠に想像できる表情をしている。
腹には大きな穴が開いていた。
血が飛び散っているのはもちろん、内臓が破壊され背中側に飛び出ているようだった。
「オイラの
「おう、何が目的だ」
「さっさとオイラの弟分を潰せよ。そしたらお前ら全員見逃してやるよ」
何考えてやがる。ボスはどう出る?
「おう、グレイ。どう思う。俺はノスタの言う通り、キリト達を動かす」
「確かに、この状況でノスタが嘘ついてるとも思えません。
『ハッハッハ!』とノスタが笑う。
「オイラが今
「おう、やるか?」
緊張が走る。
「ガキが、やらねぇよ。どんな連中がオイラのタマを取ろうとしてんのか見にきたんだよ。裏切った弟分殺すのも面倒くせぇしよ。お前らが潰してくれたら、この件を水に流してバックについてやるよ」
「おう、上納金は月に100万か? 200万か? 邪魔な首輪付けられるなら今ハジくに決まってんだろ」
「金なんていらねぇよ。そんなにオイラはちっちゃく見えるか? お前ら気に入ったから生かしてやるって言ってんだよ。その代わり、なんかあったらオイラのために動いてくれよ」
マイクが一口、葉巻を吸った。
「おう、グレイ。解放してやれ」
「ハッハ、利口じゃねーか。じゃあ今すぐ組を潰してもらおうか。とはいえ成功報酬だ。弟分の首で、水に流してバックにつく」
運転手含め、一同が事務所に入る。
キリト達がしくじったら、結局俺達は殺されちまう。
マイクがケータイを取り出しキリトに電話した。