第四層五界-テリオン
世界歴 104679年4月5日
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──ピロリン♪
「おう、ノスタ。ほらよ」
笑みを浮かべながら、葉巻を咥えたマイクがケータイをノスタに見せる。
「んん? なんだぁ!? ハッハッハ! おい、これお前んとこの若いのがやったのか!? スゲーな。オイラでもここまで出来ねーよ、バケモンがいるのか?」
「おう、悪いが部下の口から言わない限り、俺は
「おいおい、こいつそうだよな。ウーディーだよな? ひでぇ死に様じゃねーか。ま、ツラは生で拝んでやるか。おい、オイラがご馳走してやるからよ、美味い店を予約しろよ」
マイクがグレイを呼んで耳打ちをする。
ドナドナを予約しろと。
マジかよ、昨日食ったばっかなのに。
まあ、前祝いって言って食いに行ったわけだし、今日がその本祝いでも問題ないか。
「何人でもいいよ。少なくとも実行役の3人とお前ら2人は来るよな。家族とかも呼びな、ツラ覚えてやろうってんじゃねーんだ。あぁ、オイラの運転手は数えなくていいから」
「おう、キリト。ドナドナにいきながらシファとメリカールにも声かけてこい」
「わかりました」
マイクとノスタは煙を燻らせながら今後の話しをし始めた。
正直、すでにいっぱいいっぱいだ。
ここであの会話に混ざるくらいなら、安堵に身を任せながらパシられた方がマシだ。
ドナドナに行くと牛が1人で仕込みをしていた。
8人で席を予約した。
だが、言葉を発しない。
牛が蹄で器用に、紙に予約のメモを書いた。
メリカール家に寄りカノンに声をかけ、シファに任務完了の報告をした。
2人とも安堵の表情を浮かべると共に、ノスタとの会食に多少怖気付いているようだった。
──グレイが事務所に戻り、30分後
キリト達が到着した。
事務所にいた3人が外に出る。
実行役の3人が車から降りる時、全員ノスタを見て一旦固まった。
帰路に着く車の中で、キリトがシオンとティータには説明していた。
サンベイが殺されたこと、殺したのはノスタであること。
ノスタが今、事務所にいて自分達の任務完了を待っていること。
しくじったら親族ともども、屠られていたこと。
それでも、重鎮ノスタを目の前に3人の顔が強張った。
なぜならノスタは、いくつもの組を潰して成り上がった、裏社会の伝説的な問題児だからである。
「おう、ご苦労だった」
「ええ、なんとか無事、完遂できました」
「いやー、写真見てよ、オイラ感激したよ。こんなスゲー奴らが地方にいたとはな。早速、弟分のガラ見せな」
キリトがトランクを開ける。
ビニール袋をその場で開く、死体の顔が見えた。
「間違いねぇ、ウーディーだ。このバカ、可愛がってやったのによ。着く側を間違えたんだよ。アホじゃなくサンベイに着くって。それがこの様だ。そのサンベイも死んだしな。どいつが本当のアホなんだろうな」
ノスタが葉巻を地面に落とし、靴で踏んで消化した。
「おう、大事な工場に何しやがる」
「え? あぁ悪い。ついな」
ノスタが屈んで葉巻を拾う。
聞くのと見るのとはレベルが違う。
これがあの、数々の震え上がる程の武勇伝を持つノスタ。
紳士的で穏やか。しかし確かに黒いモノがある。
一同がノスタの一挙一動に目を奪われた。
「にしても、こいつとその部下をボコボコにしたのはどいつだ? オイラもよう、
ティータの血の気が引いた。
『最悪。自分、絡まれたんだけど』と言わんばかりに。
「おう、言いたくねーなら言わなくていいぞ」
しかし、ノスタの
この世界で自身の
──
人の中に存在するナニカ。
解放すると、人はそのナニカになる。
観測されている限りは全て動物で、中には架空の存在になれる者もいる。
誰の中にも
一族相伝もあれば、その人だけもある。
故に、自身の
髪の毛や目の色と同じ、個人の属性情報だから。
「あ、自分がやりました。その、自分の
「巨人!?
──
この世に存在する、又はしていた既存種の
架空の存在がストルム。
「おう。これで無事、俺達は解放ってことでいいか? ノスタさんよ」
「そうだな、上出来だよ。最初は全員ハジいてやろうかと思ったけど、やらしてみたらすげーな。ホント、オイラ久しぶりにびっくりしちまったよ」
この言葉で、全員が真の安堵を感じた。
しかし、誰もノスタに安易に話しかけなかった。
『いやーよかったです』とか、『かなり緊張しました』とかは御法度。
まずは雰囲気でやりきったと、安堵はあるが気はまだ張り詰めてると匂わせる。
なぜならノスタは仲間じゃない。
ノスタのブラックリストから、一時的に名前が消えたに過ぎない。
すぐにリストに名前を連ねたいバカだけが、軽はずみな発言をする。
「なあ、オイラ腹減った。もういい、飯に行こう」
太陽は西に傾いているが、燦々と輝いている。
「……ハァ。おう、グレイ。悪いがドナドナに言ってみてくれねーか」
「わかりました」
20秒程でドナドナに着いた。
牛の他にホール担当のスタッフがいた。
「すいません、マイクさんとこのグレイです。食事の時間を早めたくて。できれば開店前と言うか、無理言って申し訳ないですけど、なんなら今とかって……」
顔面蒼白でスタッフが応える。
「あの、あそこにいるのってノスタ……さん、ですよね? あの、あのノスタ。さん。もしかして、あの人もここ来ます? いや、牛からヤバい人がマイクさんの所に来てるから一応早くって連絡来て、それで。豚と鶏も来てるんですよ。あ、とりあえず中には入れます。料理は遅くなりますが生ハムやチーズとか前菜はお出しできるので」
なんてできた店なんだ。
できた? いや、これもノスタの影響力か?
本来、こんな片田舎の街にいるはずのない存在。
しかも、周りの人達が何かあったらまずいと気を利かせる始末。
「ドナドナに言って来ました。今すぐ入れるそうです。コースは遅くなるけど、すぐツマミは出せると」
「おう、さすがドナドナだな」
──10分後
シファとカノンも加わり、全員テーブルを囲んだ。
「正直言ってよ、オイラはここにいる全員をハジこうと思ってた。けど考えが変わった。まずは飯を食おう。後でオイラの絵図を言うよ」
ノスタの口から吐かれる、不穏な言葉のオンパレード。
皆、怖気付くことすらできずに真顔でグラスを持った。
「喜ばしいオイラ達との出会いと、ハジいてやったサンベイと弟分達に、乾杯」
ノスタの乾杯の音頭でグラスを掲げる。
店の端ではホールスタッフが絶望にも似た表情でこちらを見ていた。