第四層五界-テリオン
世界歴 104679年6月13日
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「ヤーマン。ほら、あと数時間で満タンさ」
ロックスがポアロ姉弟にポータルを見せる。
細長いモニターに映る充電のインジケータが、あと少しで満タンになりそうだった。
テリオンに来て13日目。
2回目の金曜日も体験し、徐々にテリオンの、正確にはウィンデルの法則のようなものを理解しつつあった。
「もはや次の世界か。グランティが言ってた通り、テリオンは自然エネルギーと高次元では共存してなかったね。生活に取り込むとかさ。でも、生活水準はリアリスみたいだけど、ちゃんと
「え、グランティ? ああ、師範の方のグランティか。たまにわけがわかんなくなるぜ」
「それならまだええで。ワテなんか、ウルトはんのアクセサリーのフリしすぎて、ブローチにでもなったんか思う時あるで」
『ヘラクレス、それやばすぎだろ』『ハッハ! じゃあもうブローチとして生きな』『姐さん、それは堪忍や』
ポアロ姉弟が冗談を言い合う中、ロックスがポータルを起動し次に行く世界を確認する。
「ヤーマン、次はここだ」
ロックスが指を刺すが、ポアロ姉弟が慌てて咎める。
「バカ! なに堂々とこの世界に存在しない技術をひけらかしてんの!」
「そうだよ、しまえよ!」
『ワ、ワッダー』とロックスが引き気味で相槌を打つ。
「ラピス、そりゃないぜ。なんでアイアンドアイだけ? この間、アブラヤでシオンとティータにマナケー見せつけてたじゃないか」
──時は少し遡り
第四層五界-テリオン
世界歴 104679年6月9日
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テリオンJKコンビとシファがアブラヤで女子会をしていた。
「ラピとウルトっち、連絡先教えてよ!」
「ス、まで言えば? まあ、なんだって良いけど。私達って通信機器持ってないんだよねー」
「え、マヂ!? ラピはウチらと同い年のJKなのに!? どうやって生きてんの!?」
「デジタルデトックス的な? 自分には無理だなー」
双子とテリオンJKコンビが奇しくも同い年ということもあり、ここ数日で距離が近くなっていた。
「は?」
JKコンビの発言を『え? JKなのに枯れてんねー』風に捉えたラピス。
眉間に皺を寄せながらタバコの煙を吐き出す。
「いやいや、持ってるよ? ただ私達の通信機器って最先端でさー。規格的に連携できないんだよね。ホラ」
ラピスがマナケーを取り出して見せる。
手のひらサイズでカードのように薄い金属。
ラピスが金属のカードを左手で持ち、親指で縦にスワイプすると、光沢のある金属がディスプレイに代わった。
さらに操作を重ねる。
ディスプレイをタップしたりスワイプしたりして、金属のカードの斜め左上と右上に、ディスプレイが更に現れた。
そのディスプレイは空中に浮き、金属のカードから投影されているらしかった。
左画面にはウルトとのチャット、右画面にはテリオンには存在しない乗り物らしき画像とそのパラメータが表示されている。
なおも金属カードの操作を続ける。
「おい!」
ウルトがラピスを静止する。
「おっと、ごめんごめん。ウルトったら、怒んないでよ。確かにこれ、非公開の最先端だから見せちゃいけなかったね」
ラピスの一連の行動に対して、JKコンビの顔色が変わった。
物凄いお宝を見たかの如く、目を輝かせている。
「ちょっと! ラピのそれなに!? ほんとにケータイ!? 2億! 2億出す! 買ったぁ!」
「……シオン、あんたこれに2億って。流石にそこまで価値なくね? じゃねーよ! なんだよこれ!」
「え。シオンあんた、金持ってんのね。ま、このケータイは許された人間しか持てないから」
ラピスが得意げにマナケーを操作し、表示を消した。
「ゴメンネー、連絡先交換できなくて。これは譲れないし、シオン達は買えないよ。そういうもんなの」
この会話の中でもラピスは観察を怠らない。
シオン達より年上、見たところ20代半ばのシファの表情を伺う。
シファの表情はJKコンビ同様に目を輝かせ、興奮しすぎてある種の変顔のようになっている。
「(シファとか言うこの女、アルカナを知ってる風だったから鎌かけたけど、マナケーを知らない? この間のは偶然か?)」
ラピスが思いを巡らせながら、JKの二人が落胆する。
「っちぇー。ラピと連絡先交換できないわ、凄いの見せつけられるわ。金あっても手に入らなきゃ意味ないね」
「自分も痛感するわ。金の意味のなさとかさ。ラピと連絡先交換できないの辛いけどしゃーないか」
「だからごめんって。この街を出てっても、また遊びに来るからさ」
──。
「あれとこれと状況が違うでしょ。なんでロックスは別世界の技術を見せたら、他も見せてオーケーになんのよ」
「ヤーマン?」
「あん時は状況が閉塞的、かついくらでも適当言えたでしょ。それに、シファに鎌をかけたかったし」
「ホンマ、姐さんはしっかり見てはるわ。シファはんってそんな怪しいかいな?」
「うーん、俺も少し怪しいような気はするけど。それって他の世界があることを知ってるかもってだけだろ?」
「バカね、その知ってるかもを知ってたら大問題でしょ。この世界の発展レベルでは、ここの人間は絶対に他世界の存在を知るハズないんだから」
ロックスの起動したポータルから、話題はシファへ移ろう。
ラピスでなきゃ見逃してしまう小さな言動の違和感を発端に、シファを観察対象に置いていたポアロ姉弟。
そんな話をしながらいつものミーティング場所、ウィンデルの河川敷にある高架下に移動した。
「早くしてくれよ。買い物袋重くて、俺は手が痛いぜ」
「ヤーマン。すぐ済ますさ」
周囲に人影がないことを確認し、ロックスがポータルを起動する。
「ヤーマン、次はここだ。『第三層三界』の
ポアロ姉弟が画面を見つめる。
ラピスはタバコに火をつけて、ウルトは腕を組み、ヘラクレスはウルトの肩から見上げる。
「ロックスはんが通ってきて、安全やったからここなんかいな?」
「ヤーマン、その通りだ。第三層の世界には、エイドロン以外に行ったことがない。つくづく、アイアンドアイは運が良かったよ。テリオン人は
「俺は次行く世界が0303エイドロンなのはそれでいいよ。ロックスは前回テリオンに来た時に、なんで金曜の狂気発生イベントを気づかなかったんだ? ドナドナの焼却日が金曜で、それが関係してんだろってグレイ達は言ってたけどさ。金曜はテリオン人がうるさかったろ」
「ヤーマン。金なし、宿なし、飯なしだったんだ。世界移動の最終日にラングと知り合った。それまでは朝に人に声かけて手伝いをして、貰った小遣いでご飯買って、そしてこの高架下で寝て過ごしてたのさ」
『そりゃアルカナのトマトスープで涙流すわけね』と、珍しくラピスが同情する。
「エイドロンも、テリオンと同じくアナログってことね。けど、テリオンでは運良く
「だな。エイドロンでもやることは決まってるな。滞在中は人と話して情報ゲット」
「せやな、ところでロックスはん。エイドロンに宿のアテはありまんの?」
ヘラクレスの問いに、良くぞ聞いてくれたと言わんばかりにロックスが満面の笑みで応える。
「ヤーマン! 問題ない。なぜなら金があるからだ。な、ジーン」
そう言うと、ロックスが見慣れない札束と小銭を出した。
「世界が違うと通貨も違うからな。他じゃ使えないが、エイドロンでなら全員、一週間は余裕な暮らしができる。見てくれ、エンって通貨なんだ。ポータルのアンカーがアズマって国の首都にあってだな、s」
「ちょっと待って! アズマ? エン?」
ロックスの言葉をラピスが遮る。
「アズマってアルカナにもある、あのアズマ? リアリスだとジャパンだけど。アルカナではマグが共通通貨だから、アルカナアズマも通貨はマグだけど。でもジャパンは確かエンだったよね? でもこのエン通貨、知ってるやつじゃない」
「てかさ、そもそもテリオンのここもアズマなんだろ? アズマ国のM県T市
双子が知ってる知識に対する世界間の共通点を見出す。
しかし、世界が違えば通貨も違う、名称が同一であれ他世界の通貨は使えない。
「あー、忘れてた。ここもアズマ国か。アズマのM県T市
「なんや、次の世界のウィンデルに行けばエイドロンのグレイはん達に会えそうやな」
「だな。それよりさ、生モノも買ってるしもう帰ろうぜ」
「そうね。あーあ、リアリスもジャパンじゃなくて、アズマに名前を変更すれば覚えやすいのに。……それにしても、以外と世界の形は同じなのね。」
アルカナ一行がラングの家を目指して歩き始める。
「第五層のペラギアなんて海しかないリゾート地だけど。実は他の世界みたいに昔は陸地が沢山あって、それが海に飲み込まれてああなってたりして」
「何が起きたらそうなるんだよ。異常気象による海面上昇とかか?」
くだらない話しに花を咲かせながら、アルカナ一行は帰路についた。