俺は今、騒音鳴り響く建物の中にいる。失敗したら終わりに近づき、成功してもまた成功を祈り続ける場所に。
(やめとけばよかったかな・・・)
後悔を抱きながら、どうしてこうなったのか現実逃避のように思い出す。
「当てたら勝ち、当てたら勝ち・・・!!しゃあ!勝った!」
テレビの画面ではミミッキュのじゃれつくが当たりガブリアスを倒している。彼が今しているのはポケモンチャンピオンズ、そのシングルバトルだ。
「負けたら寝ようと思ってたけど中々今調子いいな!もう少しやるか!」
時間は現在夜中の2時。明日も学校があるというのにまだ辞めない。
「あ、マッチした。相手の手持ちは・・・あ!テレビ落ちた!接触不良かな」
唐突にテレビの画面が真っ暗になる。慌ててテレビに繋いでいるSwitch2を取りに行こうとする・・・が
「あれ、ない・・・え、あれ?」
何もない。Switch2どころか先程まで画面を見ていたはずのテレビも握っていたはずのコントローラーも部屋の輪郭すら何もない真っ黒な空間に彼は居た。
「・・・夢?もしかして連勝も夢?!あー!いい調子だと思ってたのに!」
やけになったのか寝転び出してしまう。そのまま目を閉じて夢だと思っているところで寝てしまった。
眩い光が彼の目に当たる。
「まぶし、朝か・・・?知らない天井だ・・・」
そこは真っ黒な空間でもなく今まで彼が使っていた部屋の中でもない。部屋だとはわかるかあるのは今彼が寝ていたベットと机、そして出入り口だけだ。
「いや、マジでどこだよ・・・誘拐されたにしては拘束もされてないし・・・まだ夢か?」
適当に部屋の中を歩いてると机の上に鞄と紙が置いてあった。
「『図鑑を完成させろ』・・・・・・?は?」
意味がわからず混乱している。そのまま鞄の中を漁り出す。
「財布と図鑑、あるな・・・・・・何図鑑、だ」
恐る恐る図鑑を操作していく。図鑑に表示されたのは
「カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラ、ガラル、パルデア、ヒスイ・・・・・・はは、ポケモン、かよ」
分類だけが記載されており、他のデータは全く表示されなかった。それを見て彼はその場に崩れ落ちる。彼だってファンタジー小説を読む。転生や転移は空想の中だから面白いのであって実際に体験すると恐怖に陥ってしまうだろう。
「さ、財布の中は・・・」
出てきたのは身分証明書として使えるであろうトレーナーズカードと3000円。ポケモンの世界だというのにモンスターボールの一つもない。
「3000円でどうしろってんだよ・・・!」
トレーナーズカードには自分の顔写真と聞いたことない名前が書かれている。
「カラレスって誰だよ・・・俺の名前は、名前、名前は・・・・・・」
自分の名前が思い出せず、思わず泣き出してしまう。
「は、はは・・・なんだよ。俺は誰かのおもちゃか何かかよ・・・・・・いいさ、やってやる、やればいいんだろやれば!!」
吹っ切れたのか空元気か。誰も聞いてないのに叫び出す。
「そうと決まれば情報収集だ、ここは何処でどんなポケモンの世界なんだ」
荷物を纏めて部屋を出ていく。どうやら2階だったようで階段を降りていくと昔よく見た顔が視界に入ってくる。
「ジョーイさんだ・・・ってことはポケモンセンターか」
ピンクの髪に側にはラッキー。昔アニメを見たことがある人ならよく見たことがあるであろう顔だった。
ジョーイさんの目があっても不審に思われていない以上、自分は不審者ではないのだろう、そう決めつけてポケモンセンターの外を覗く。
「うわぁ・・・!」
彼の視界に入ってくるのは綺麗な自然、大きな建物、そして人とポケモンたちの生活だった。
「すげえ・・・って感動してる場合じゃない、色々調べないと。まずここは何地方の何処だ?」
辺りを見回しながら散策していくと一つの看板が目に入った。
「『ここはタマムシシティ。タマムシにじいろゆめのいろ』、ねえ。カントー地方確定であのでかい建物がタマムシデパートか」
タマムシデパート、それはカントー地方において1番と言っても過言ではないほどの大きなデパート。ここに売ってなかったら他のところでも売ってないというほどの品揃え。そこには当然ポケモントレーナーの必需品である・・・
「モンスターボール売ってるよな」
図鑑を完成させるにはポケモンを捕まえなければならない。そのためにモンスターボールを買いにタマムシデパートに向かう。・・・がその足が唐突に止まる。
「・・・野生相手に生身で捕獲チャレンジ?俺マサラ人じゃないぞ」
マサラ人・・・それはポケモン世界における超人。木の枝でポケモンと戦い周りを燃やすような攻撃や電撃を喰らっても耐え抜き高速移動でトラックに追いつくことも可能なのである。
「でも他にポケモンの入手方法なんて・・・・・・あったな、タマムシには。今もあるかは知らんけど。でもなあ、生身チャレンジの方が現実的か?」
呟きながら目的地へと向かっていく。彼の向かう先にある建物は
「ゲームコーナー・・・ここの景品にポケモンがいたはず」
景品交換所の景品一覧を見る。そこには
「いるな・・・ポケモンの交換はお一人様一回までってあるけど確かに、いる」
ケーシィ、ピッピ、ミニリュウ、ポリゴンといったポケモンの名前が書かれている。
「・・・・・・・・・やるか」
ゲームコーナーの中にあるのはスロット台、つまりギャンブルである。
命を危険に晒してポケモンを捕まえるかお金を使って成功したらポケモンを捕まえるか。その二択で彼は後者を選んだ。
そういった経緯があり、冒頭に戻る。
(貰ったコイン30枚と拾ったコイン20枚、そして初期投資として1000円で買った50枚合わせて100枚のコインで勝負・・・!)
たかが100枚。普通に考えたら当たるわけがない。そんな都合良くスロットで当たるのならスロットをやってるギャンブラーは大金持ちだ。
(目標は500枚のピッピ。一応残りのお金も使えば150枚でケーシィは交換できるけど技がテレポートだけの可能性あるしなあ。・・・失敗したら生身で捕獲チャレンジか)
失敗しても次の作戦があるとはいえそちらに手を出したくないのも事実。できればこれで決め切りたい。そう言う思いを込めて彼はスロットを回す。
(1プレイ3コイン、だいたい33回遊べる計算だけど・・・・・・33回じゃ流石に無理か?)
何度か回してみるが絵柄は揃わない。
「目押し、狙えるかな」
スロットの目押し、現実ではあり得ない話だ。だがここはポケモンの世界。ゲームではあり得たこと、ならば
「タイミング見て・・・外れ、外れ、外れ」
何度も回してタイミングを掴んでいく。コインの残り枚数を10枚切ったところで三つのリールのうち二つに7が揃った。
「当てたら勝ち当てたら勝ち・・・!」
祈るように最後のリールを狙って止める。その絵柄は・・・
「っし!」
周りの目も気にせずガッツポーズを取る。7だ。7が三つ揃ったのだ。
「しばらくは7が当たりやすいはずだけど、油断せずに狙って行こう」
スロットは性質上、一度当たればしばらくは当たりが出やすいというのもある。確実性はないがそう思い込んでいるようだ。
「目押しの意味あったかはわからないけど当たるとやっぱり嬉しいな」
そのまま順調に当て続け目標の500枚・・・・・・を超えて
「6450でストップか・・・」
悩んでいるのには理由がある。目標であったピッピには余裕に届く。しかし
「あと1000円で50枚買えば6500枚のポリゴンに届くんだよなあ・・・!」
ポケモンが交換できるのは一回のみ。それ故に1番高いポリゴンと交換するかを悩んでいるのだ。
「ポリゴン、ポリゴンかあ・・・他にもストライクとかいミニリュウとか安いのがあるけど・・・ポリゴン他で入手出来るかあ?」
ポケモン図鑑を完成を目標にするのであれば入手が困難であるポケモンを狙った方がいい。しかしそれを狙うと手持ちのお金が少なくなると言うジレンマ。
「・・・・・・ええい!男は度胸!交換はポリゴンだ!」
決めるとお金をコインに交換して交換所に向かう。
「これ全部とポリゴンを交換してくれ!」
そうして彼は初めてのポケモンを手に入れました。ここから先ポケモン図鑑を完成させることは出来るのか。それはまだわからない。
カラレスの冒険は続く・・・
To Be Continuation・・・