平日はやはり投稿は難しいですね…
一週間に1、2回は投稿できるようにしますので、応援よろしくお願いします!
それでは、お楽しみください
ステイルマグヌスは、動揺していた。
動揺の対象は、目の前にいる、魔術などとは無関係であるはずの、ツンツン頭の学園都市の少年。
(魔術を…打ち消されただと?)
ステイルは、この年齢でも様々な戦闘を経験してきた。時には、自分では敵わないだろう魔術を扱う敵とも相対してきた。
魔術というものは、千差万別である。
魔術師それぞれによって、どのような魔術を使うかは違いがあることが多い。
これまで戦った強敵たちには、想像もつかないような魔術を使用してくる敵もいた。
それらを倒してきたステイルは、大きな自信を持っており、どんな魔術だとしても対応できる、順応力も持っていると自負していた。
しかし、
14歳の天才魔術師にとって、魔術を打ち消されたということは、初めての体験だったのだ。
問答無用でこちらの魔術を打ち消す。
もしもそんな魔術を扱う奴がいたなら…
(そいつは…魔神の域に達している…)
魔神。その名の通り、魔術の神と言える存在。
その可能性は全くないながらも、規格外の事を考えてしまう。
そう、ステイルは、かつてないほど動揺していたのだった。
しかし、そんな迷いを浮かべるステイルの目の前には、
顔に怒りを浮かべながら、向かってくる、上条当麻の、拳。
「うおおおおおおお!!!!」
叫びながら、目の前の敵に向かう、当麻。
敵は、もうそこまでせまっている。
(落ち着け…奴が魔神であるはずがない!ここは…)
「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。」
ステイルは、呪文を詠唱し始める。
だが、上条当麻は止まらない。
「それは命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。
その名は炎、その役は剣。
顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ……ッ!」
轟!という音と共に上条当麻の目の前には、ステイルの修道服の内側から飛び出た、巨大な炎の塊が現れる。
それは、ただの炎の塊ではない。
形容するならば、魔人。
炎は、灼熱に燃える魔人の形を模していた。
名は、魔女狩りの王《イノケンティウス》。
その意味は、「必ず殺す」。
しかし、
「邪魔だ」
当麻はその一言と共に、目の前の魔人に触れる。
すると、右手の効果により、灼熱の魔人は呆気なく消え去った。
隙を伺っていた聖澤聖真は、当麻が右手で魔人を消す光景を見ながらも、一つの違和感を感じていた。
そう、魔術師の顔は、笑っている。
おそらく切り札であろう魔術をあっけなく消されたというのに、その顔は、笑っていた。
「当麻!!止まれ!!」
「!!?」
聖真の声に反応し、慌てて足を止める当麻。
とその目の前では、
ビュン!という音が、四方八方から響き渡っていた。
「なんだ!?」
驚きの声をあげながら、目の前の光景を見る当麻。四方八方から音と共に戻ってきた黒い飛沫は、空中で集まり再び人の形を作り上げていた。
(幻想殺しで消した筈なのに…?)
幻想殺しは、異能の力であれば神様の奇跡てあろうが問答無用で消す能力。
確かに、右手は灼熱の魔人に触れて、敵を消したはずだった。
しかし、敵は元の姿のまま、再び現れている。
敵は、さらに形を変え、両手に剣を持つかのように変化した。
いや、剣ではない。
それは、十字架である。
まさに、異教の徒を裁かんとする、巨大な十字架であった。
十字架は、当麻に襲いかかってくる。
当麻は、とっさに右手でそれを止めた。
それは、反射。
自分の命のために当麻の細胞が瞬間的に反応し、間一髪で受け止めたのだった。
右手と十字架がぶつかり合う。
だが、消えない。
目前の魔人は、何の変化もなく轟轟と燃えながら当麻を睨みつけてくる。
聖真は、注意深く敵を眺めながら、その魔人が消えない理由に気づいた。
「当麻!そいつは消えてないわけじゃない!再生しているんだ!お前の右手に反応したとほぼ同時に、再生を繰り返している!」
「再生を繰り返しているのか…?」
当麻は、焦った。自分の右手では、消せない存在がいた事に。
ステイルにとって自分の魔術を消されたのが初めてであるように、当麻にとっても自分の右手で消しきれない異能の力は初めてだったのだ。
ステイルは、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、上条当麻と魔女狩りの王の激突を眺めていた。
長期戦は不利。そう当麻が思った瞬間だった。
「ルーン…」
耳に聞こえるのは、血まみれで倒れている本来言葉など発せないはずの、インデックスの声。
「神秘、秘密を指し示す二四の文字にして、ゲルマン民族により二世紀から使われる魔術言語で、古代英語のルーツとされます。」
淡々と言葉を話すインデックス。
だが、聖真と当麻はその声を発しているのがインデックスとわかっていても、どこか信じることができなかった。
なぜ、こんなボロボロで血まみれなのに、冷静に話すことができるんだ?と。
「魔女狩りの王を攻撃しても効果はありません。壁、床、天井。あたりに刻んだルーンの刻印を消さない限り、何度でも蘇ります。」
「おまえ…インデックスだよ…な?」
聖真は、恐る恐る少女に尋ねる。
当麻も、目の前の攻撃を止めながら、耳だけは傾ける。
「はい、私はイギリス清教内、第零聖堂区必要悪の教会《ネセサリウス》所属の、魔導図書館です。呼び名は、禁書目録で結構です」
淡々と話すインデックス。
その声には、先程まで聞いていた少女然とした無垢な声はなかった。
「話を戻しますが、ルーン魔術とは、簡単にいえば、夜の湖に映る月と同じ…いくら水面を傷つけても意味はありません。水面に映る月を傷つけたければ、まずは夜空に浮かぶ本物の月に対象を変えなければ」
聖真と当麻は、理解する。
(要は、この魔人は魔術の本体じゃなくて、本体はどこかでルーンを形作っている…ということか?)
「探さなければ、だめだ」
そう、どこかにあるルーンを潰さなければ、二人に勝機はない。
そこで、聖真は、こう言葉を漏らす。
「当麻。ここは任せていいか…?」
「ああ。行け!!」
敵の相手を一人で務めさせるという酷な提案でありながらも、当麻は、すぐに返事をする。
聖真は、後ろに向かって走り出す。
そう、これでいい。
あの戦場にいても、自分は足手まといなだけだ。
ならば、ルーンを見つけ、少しでも当麻の勝利に役たつ……!
そう決意をし、走る聖真。
後ろでは、無慈悲な爆発音が響いた。
ーーーー
ルーンを探すために走る聖真。
さっきの爆発音からして、あまりいい状況ではないのは確かである。
「どうすればいいってんだ…」
ルーンは、あっけなく見つかった。床の上、天井、ドアの前、至る所に発見された。
ルーンとは、テレホンカード大の、紙切れであった。
しかし、問題はその数。この建物中に貼られているとしたら、推定でも数は何万にもなるだろう。
それらすべてをはがしているほど時間に余裕はなかつた。
「くっそ!!」
そう言いながら、考える聖真。
(一々剥がしていては効率が悪すぎる、なにかいい方法はないのか…!?)
ふと、自分のポケットを確認する。
出てきたのは、少ない小銭と、携帯電話。
「そうだ、警察…」
そう、学園都市は、能力者を要請しているため、自然とその能力者に対抗する集団が必要となる。
それは、警備員《アンチスキル》と呼ばれる、特殊部隊である。
そう、わざわざ聖真が死の危険を冒す必要はない。学園都市への侵入者は、警備員のような専門家に任せればいいのだ。
そして、携帯電話で電話をかけようとする。
(これが最善の選択なんだ。所詮俺は無能力者。何もできない。なら、さっさと他の奴に任せた方がいい…)
そう言い聞かせる。
だが、
脳裏に浮かぶは、銀髪の少女と、親友の少年。
そう、少女が傷を負っているのは、自分達のためだということを、再び思い出す。
(私と一緒に地獄の底まで着いてきてくれる?)
(ああ!行け!!)
二人の言葉を思い出す。
「そうだよな…」
聖真は自分に言い聞かせるよう呟く。
「あいつらは、待っている。こんな無能力者の俺を、信じて。それに、決めた筈だろ…?アイツを助けるって」
再び、呟く。
強い意志を込めて。
「俺だけ逃げるわけには…いかない!!」
そう決意を新たにし、聖真は、頭を焼き切る程に考え始めた。
(考えろ…この状況をひっくり返す、逆転の一手を!!)
周りを見渡す。
なにか役立つ物はないかと。
何も役立つものはないように思えたが、
聖真は、逆転の一手に通じる、それを、見つけた。
ーーーー
「はぁ!!」
ステイルは、炎剣を目の前のイノケンティウスとぶつかり合っている当麻に投げ込む。
イノケンティウスの手を受け止めながらも、横に思いっきり飛びこむ当麻。
間一髪。炎剣は先程まで当麻がいたところに直撃した。
だが、すぐさま向かってくるは、灼熱の魔人。
息付く暇もなく、当麻は魔人を受け止める。
「しぶといね。君」
と、余裕の表情で言葉を発するステイル。
そう、そのようなギリギリの攻防。いや、当麻に攻める機会はない。紙一重のままで当麻は敵の攻撃凌ぎ続けていた。
「でも、そろそろ終わりにしないとね」
ステイルの手に顕現されるは、三つの炎剣。
当麻の逃げ道がなくなるように放ってくるのは、明確であった。
「くっそ…」
力なく呟く当麻。
彼は既に、精神的にも肉体的にも限界が来ていた。
「行くよ…」
そう言い、炎剣を投げ込もうとしたその時だった。
ジリリリリリリリ!
という音が学生寮中に響きわたる。
それと同時に、上に取り付けられたスプリンクラーが水を一面に撒き散らした。
それを不信に思ってか、炎剣を一度消滅させるステイル。
ステイルは、この学生寮の学生はみんな出払っていて、この少年たちしかいないことがわかっていた。
とすると、必然的に、火災報知器のボタンを押したのは、もう一人の少年ということとなる。
だが、何の為になのか?
まさか、この小さな雨で、イノケンティウスを消そうとでも考えたのか?
馬鹿馬鹿しくて、笑いにもならなかった。
「君のお仲間は、スプリンクラーの水程度でイノケンティウスを消せると思うほどおめでたい頭をしているらしいね。」
だるそうに、呟くステイル。
「……」
当麻は、何も言わない。
ただじっと真剣な顔をしている。
が、何かを察したかのように、顔をあげた。
すると、後ろからエレベーターが到着する音が聞こえた。
ーーーー
エレベーターから出てきたのは、聖真。
火災報知器を鳴らした、もう一人の少年だった。
「アッハハハハハ!!仲間だけ置いて逃げて、結局スプリンクラーの水程度でイノケンティウスを消そうとしたバカが今更なにしにきたのさ!」
笑いながら、ステイルは言う。
しかし、エレベーターから出てきた聖真は、無言でイノケンティウスを指さし、言った。
「それ、消えるぞ」
その瞬間だった。当麻の右手に触れていたイノケンティウスは、間抜けな音を立てて四散した。
ステイルは、驚きの表情を浮かべ、突然のことに訳がわからないまま叫び出した。
「な、バカな!?あの程度の水で鎮火するわけがない!」
「ああ。そうだ。この程度の水でお前の魔術を消せる訳が無い」
聖真は、静かに、だが力強く言葉を発する。
「だがな。お前のルーンのカードはよく見させてもらったよ」
「まさか…紙!?紙を水で溶かしたとでもいうのか!?」
紙は水に弱い。それは誰でも知っている理屈である。
だが、
「僕のカードはそんな水程度で溶けるほど弱くは…」
「インクならどうだ?インクは、水で溶けるだろう」
聖真は、ハァと息を吐きながら、ステイルに近づいていく。
対するステイルは、驚愕の表情を浮かべながら、立ち竦んでいた。
「いのけんてぃうす…イノケンティウス!出てこいイノケンティウス!」
もはややけくそ気味に灼熱の魔人を呼ぶステイル。だが、何も現れない。無慈悲な沈黙が流れるだけであった。
「灰は灰に!塵は塵に!吸血殺しの紅十字!」
吠えるように呪文を詠唱し、炎剣を生み出し投げ込むステイル。
だが、
「俺を忘れてもらっては困るな」
と、真っ直ぐな表情のまま、右手で炎剣を消す当麻。
「行け!聖真!!」
力強くその名を呼んで、前に向かわせる。
(サンキュな)
と、心の中で呟きながら、聖真は走り出す。
なんの能力もない、聖澤聖真。
その右手には、上条当麻のような異能の力を消す力もない。
でも、聖真は、強くその手を握り締める。
目の前のクソ野郎を思いっきり殴ることができる。
聖真には、それで充分だった。
「うおおおおおおおおお!!!!!」
聖真の拳は、何の狂いもなくステイルの顔面を突き刺す。
ステイルの体は、回転しながら後ろに吹っ飛び、金属の手すりに激突した。
第3話読んでくださりありがとうございます!
今回はステイルとの戦いで一話を終えました。
次の話もよろしくお願いします!