モブ令嬢に転生したみたいですが私は推しカプの幸せを見守る以外に興味ありません 作:九ツ森とむ
このお話は、来週から始める長編連載に先立ってサイトの機能や解析の仕組みを確認するために書いたお試しの短編です。こちらの他、アルファポリスなど複数のサイトに同じ内容を掲載しています。
なお長編の方は「小説家になろう」ほかサイトで既に完結している作品で、今週末からあらためて連載を始める予定です。
よろしければ、そちらもお付き合いいただけると嬉しいです。
またあらすじにも書いてありますが、内容は先日一度公開した同じタイトルの短編と全く同じです(実験的に更新頻度を変えて再投稿しています)。ご理解いただけると幸いです。
「うわ……マジか…………」
頭を打って意識を取り戻した私が最初に口に出した言葉。侍女が涙ぐんで目の前で『お嬢様!! お目覚めになったんですね……!!』とか言ってるんだけど、その声がなんだか遠く聞こえる。
というのも、私の脳内は今とても混乱していた。だって今、とんでもないことを思い出してしまったから。
私は前世で『
私が何年か前に大好きだった、同人サークルが自主制作で販売している同人ノベルゲームがあった。
いわゆるナーロッパ世界観もの。貴族令嬢のヒロインが選択肢によって色々な攻略対象のイケメンたちと結ばれたり、結ばれなかったり……そのうち王国の秘密や世界の真理に近づいたり……という感じの、最近では割と定番になった雰囲気のストーリー。
元々前ジャンルで少年漫画の二次創作界隈にいた頃からフォローしてた神絵師が、キャラクターデザインとか立ち絵、イラストスチルを担当したってことで体験版をやってみたらめちゃくちゃよかったんだよね。
ダウンロード版もあるというのにわざわざ即売会イベントまで買いに行って神絵師の手渡しでそれを手に入れた私は、残業明けにコンビニ飯片手に、もしくは土日には朝から晩まで外出せずにパソコンに齧りついて、スチル完全コンプリートするまで全ルートをプレイした。
体験版をやるまでは正直ビジュ目当てでストーリーはあんまり期待してなかったんだけど、私はその作品の中でとあるキャラにドハマりしてしまったの。いわゆる最推しができた。
それが、プレイヤーでありヒロインであるユリアの義弟リカルド君ね。本当に健気でずっとユリアを支えていて、彼女のことを一途に想い続けていて……。
なのに彼は、ユリアが親しくなる攻略対象に嫉妬した結果道を踏み外し……自滅してしまう。
私はそれが悔しくて悔しくてほんと……なんでさあ!? あんないい子が報われないなんておかしくない!? リカルド君のルートがあってしかるべきよ!! ないんだけど!! なんで!? って泣いた。部屋で一人で。
まあそれは今の会社に入ったばかりで新人だった頃の話だから結構メンタルも追い詰められてて、涙腺緩かったってのもあると思う。
さて。改めて今の状況を整理しよう。
私の名前はヘルミーネ=ジルバー。領地なし子爵の令嬢だ。
まだ頭の中はまだ混乱しているけど、よくよく集中すれば確かに美音としての記憶と並行するようにこれまで16年間ヘルミーネとして生きてきた記憶もしっかり思い出せる。
王国の名前やひとつ上の学年に在籍するハルトムート王子殿下の名前がヘルミーネの記憶にあって、それが美音の記憶にある『あのゲーム』の設定と一致していた。
ただ困ったことに、美音としてはヘルミーネって名前に憶えがないんだよなぁ……。
ヘルミーネとしての記憶をたどれば、貴族学院で同じ教室にいるユリアの姿が思い起こされる。つまりユリアと同学年の生徒ではあるみたいなんだけどなぁ、モブか……?
だから名のある、いわゆるよくある断罪回避しなきゃいけない悪役令嬢とかではないと思う。
なんだけど……私は自分の断罪じゃなくて、リカルド君の破滅を!! 回避しないといけないんだよ!!
そしてあわよくばリカルド君がユリアへの想いを実らせるところを見たい!
推しカプが幸せになるところをこの目で見たい!!
というか思わず前世って言ってしまったけど、美音として
かといって、足元に魔法陣が現れて光った覚えもないし……だから異世界
そうなるとやっぱり異世界
それはさすがに落ち込む。
最後の記憶は、確か仕事からの帰りだったと思うんだけど……はっきりとは思い出せないなぁ……。