モブ令嬢に転生したみたいですが私は推しカプの幸せを見守る以外に興味ありません 作:九ツ森とむ
それから私はすぐに行動を開始した。
まずは目前に控えた一学期の中間試験の範囲を確実に頭に叩き込むことに集中したおかげで、なんとか学年二位の成績を取ることができた。
ちなみに一位は攻略対象の一人であり、将来天才研究者になる眼鏡イケメン。彼を抜くことはできなかったんだよ、私としてはなんなら一位をとってもいいかなってくらいの気持ちだったんだけど。
ゲーム中でヒロインとして何度答えたかわからない問題だから、もう問題文の最初の何文字かを見た時点で完璧に正答を選べる私に死角はないと思ってたのになー。最後に記述式の問題が出てくるとは聞いてなかった……一位と差が出たとしたらあそこしかないんだけどね。
もちろん私だってそれなりの点を取ったんだと思うよ、そうでなければ二位も取れなかったと思うもの。
そして私は生徒会役員への切符を手に入れた。
この学園の生徒会役員は自己推薦が可能なの。
私が美音としての記憶を取り戻す前のヘルミーネは地味でこそあれそれなりに品行方正だったおかげで、私は学年二位の成績をもって先生方や生徒会のメンバーにも生徒会の新しい役員として快く受け入れられた。
女子生徒の自己推薦は珍しいみたいで驚かれはしたけどね。ただうちは領地なし伯爵家で父が文官だから将来はそういう進路に進みたい、と抱負を述べれば納得してもらえた。 はーこれでとりあえず一安心だね。
なんでかって? リカルド君が来年には学園に入学して、そして役員として生徒会に入ってくるからだよ!
彼との接点を作るため……というかこれ以外に学年が違う彼との接点を作る方法が思いつかなかった。
彼が破滅しないように導いてあげないと!
それから1年生の間にクラスメイトのユリアとも意識的に親睦を深めた。
さすが原作のヒロイン……健気で素直で可愛い。
私は前世でゲームをプレイすることでユリアの視点で物事を見ていたわけで、彼女の好みや興味があること、起こる大体の出来事も予想がつく。だから彼女が困っているときに手を差し伸べたり彼女の喜ぶ贈り物をしたりしていたら、そのうち私とユリアは親友といえる間柄になった。
……まあ、ちょっとずるいかなぁなんて思ったりもしたけど、とはいっても友人を助けたり喜ばせているだけだもの。前世チートを自分の利益のためとか悪いことに使ってるわけじゃないもんね?
特に嬉しかったのは、彼女の家でのお茶会に呼んでもらえたこと。
そう、リカルド君に遂に会えたの……!
生リカルド君は、とにかく最高だった。可愛い少年らしさもあるのに同時にそこはかとない色気もあるんだよな……本当にどういうことなの? 本当に存在が危険です、もちろんいい意味で!
それでもってもう、彼のユリアを見る目がね……すごく優しくて。ユリアも『とても優秀で、自慢の義弟なの』と嬉しそうに言っていてものすごい幸せ空間だった。
……ああもう……二人、絶対に幸せになってほしい……!
そんなこんなで月日は流れ、早くも私たちは2年生になった。
今年入学してくるリカルド君が生徒会に入る前に……私の生徒会改革は、なんとか間に合った。うん、結構必死だった!
というのもリカルド君の破滅ルートのうち最大のものである王子殿下不正冤罪事件は、この生徒会で発生する。
生徒会役員であるリカルド君は会計処理でわざと不正を行って、生徒会長のハルトムート王子殿下にその罪をかぶせようと画策するの。逆にそれがバレて罪に問われてしまう、というのが事の顛末だ。
リカルド君を唆すのは、王子の弟であるまだ幼い第二王子殿下を担ぎ上げようとしている反第一王子派の貴族たち。
第二王子殿下の乳母の実家の公爵家が元締めで、ハルトムート王子を追い落として第二王子殿下を傀儡にして自分たちの都合のいい政治をしたいんだろうね。
原作でのリカルド君はユリアと接近する王子殿下に嫉妬して、悪い大人の甘言に乗ってしまうのだった。
そんなことが起こらないように、私は生徒会の事務の流れを徹底的に改革した。
そもそも……不正が起こるとかそれ以前に無駄が多すぎ……。現代日本OLとしての知識がある私は、何度頭を抱えて叫びそうになって我慢したことか……そりゃこれだけぐだぐだでチェック機能もスカスカなら、ミスも不正もガンガン見過ごされるわ……。
そう、事務の流れをわかりやすくしたら、意図的な不正だけじゃなくてミスも防げるんだよ。人間はわざとじゃなくてもどうしたってミスを犯すものだから。
ちなみに美音は文房具沼の住人でもあったのでついつい『あの文房具があればな……』なんてつぶやいたらそこから新しい文房具が何個も作られてしまったんだよね……。
さすがにパソコンとか表計算ソフトはないよ? でも、かなりよくなったと思うよ。
いや、地味だよ。そろばんとか付箋紙とかホチキスとか……本当にその程度のものなんだけど。
それでもいちいち生徒会長であるハルトムート王子殿下がおもしろがって、しかもその権力を使って頭のいい人たちに丸投げして開発させちゃうもんだからなぁ……。
正直私はそろばんって形しか知らなかったの。でもこういう形の道具で計算ができるはず……って簡単な図を書いただけで、国の頭のいい人たちが使い方まで考えて作ってくれたからね。
だから私もものすごく恩恵にあやかってます。
ちなみに、一番皆にほめられたのがスタンプとスタンプパッド。
いわゆるお洒落文房具のさ、シーリングワックスはあったんだよ? でも、書類に押すゴム印みたいなのがなかった。
だから私はここでも王子殿下にお願いして、少し弾力のある木を加工した木彫りのスタンプと、木箱の表面に張った綿の布に水性インクを垂らして、中に入っている綿からインクが染み出すスタンプパッドを作ってもらった。
そこで、決裁欄とか、可決・否決とか、それから書類ごとに毎度使う予算項目とか……そういうスタンプを作ってもらったらこれがすごく好評でね。逆にこの時代のこの世界にはなかったんだ……って感じで驚いたよ。
まあ、インクがなかなか乾かないから書類をすぐに重ねられないのは面倒かな。スタンプパッド上では乾きにくく押した後は乾きやすい、そういうインクとか、さらに便利にする道具も現在進行系でどんどん研究開発されてるみたい。