四番隊副隊長は夢を見ている   作:逆ギレ伯爵

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倫理観の欠如

隊長三名の離反という尸魂界史上類を見ない大事件から数週間、現世で起きた旅禍襲撃事件により藍染一派が破面(アランカル)の作成を可能としている事が判明。これを重く見た山本元柳斎重國は、日番谷冬獅郎を筆頭とした戦力を旅禍への援軍として現世へと派遣した。

 

それが今朝の出来事である。

 

「いやでもさぁ、その中に松本副隊長まで混じってるとは思わないじゃん?ただでさえ日番谷隊長と阿散井副隊長っていう大戦力を送ってるんだからさー」

「そ、そうですね。あの、それより治療を・・・」

「隊長格二人だよ?ならあとはせいぜい席官を二、三人送れば十分だと僕は思う訳よ、それなのに僕に優しい女性ランキング第五位の松本副隊長まで送るとか意味わかんないよ。僕も現世行っちゃおうかな?もういいよね行っちゃっても!?」

「はぁ・・・、良いんじゃないですか・・・?」

「良い訳無ぇだろ!!僕が尸魂界を離れたら誰が卯ノ花隊長を守るんだよ!?!適当言ってると切り刻むぞテメェ!!!!??!!?!」

「り、理不尽だ・・・!?」

 

これだから十一番隊のお猿さんはさぁ・・・、後そろそろ鍛練で怪我するのやめてくれない?いや、怪我するのは良いけど四番隊に来ないでくれ。

 

 

 

僕は今、四番隊舎で怪我人の治療を行っている。本当は今日も今日とて書類を届けるふりをしてサボろう思ってたんだけど、どうやら届けるべき書類がないらしい。そういうわけで、業腹ではあるけれど、腸は煮えくり返ってはいるけれど、こうして真面目に四番隊副隊長としての業務に従事しているわけだ。なんか新鮮だね、誰かを治療するのって。

 

「その治療が四番隊の基本業務なんですけれどね」

「だから心読むのやめてくださいよ、卯ノ花隊長。何かご用ですか、真面目にやってますよ。まだ逃げ出してないです」

「逃げ出す事を前提にしないで下さいね。・・・貴方にお客様です」

「男ですか、女ですか」

「男性の方です」

「仕事が忙しいので帰ってもらって下さい」

 

全く、信じられん馬鹿共だよ。人命を救うという崇高な任務をこなしている僕にアポもなく会おうだなんてね、僕に用があるなら可愛い女の子を連れて来いってんだ。

 

「・・・そういう訳にもいかないんですよ、こっちも仕事なんでね」

「誰ですかー!神聖な治療現場に命を弄ぶマッドサイエンティスト入れたのー!?」

「どうせサボるのですから、せめて他の隊の役に立ってきたらどうですか?」

 

おのれ卯ノ花隊長!僕の事を信用できないというのか!!

 

「ええ。・・・それでは阿近三席あとはご自由に」

「ありがとうございます、卯ノ花隊長」

 

十二番隊第三席阿近、僕が十一番隊と並んで苦手としている十二番隊の三番手にして、技術開発局副局長を務めている眉無し男。倫理観を母親の胎内に忘れてきたことで有名なあ(・)の(・)涅隊長の右腕を務めるだけあり、これまたかなりのマッドサイエンティストなのだ。

 

・・・蛆虫の巣出身ってだけで正直関わりたくないよね。

 

「うちの隊長が榊花副隊長に研究の手伝いをしてほしいらしいんですよ。ほら、旅禍の中に滅却師が居たじゃないですか?そこで気になったことがあるらしくて」

「なに当然の様に説明しだしてるのさ。行かないよ?僕は卯ノ花隊長に変な人についてっちゃダメって教わってるんだ」

「変な人って・・・、俺もそれなりの役職に就いてるんですけど・・・」

 

どっからどう見ても変じゃないか。眉毛ないし、十二番隊だし。角生えてるし、蛆虫の巣出身だし。何で当然の様にシャバを歩いてるのさ。殺すぞ蒲原喜助ぇ!!

 

「とにかく、僕は君達には協力しないよ。君たちの研究ってあれでしょ?人間を生きたまま溶かしたり、剝き出しの神経に直接塩酸掛けたりするやつ。僕はまだ人の道を外れる気はないんだ」

「いや、流石にそこまでの事は・・・、あんまりやってないですよ」

 

ほら見た事かちょっとはやってるんだよ!誰だ技術開発局なんて作ったのは!!蒲原喜助ぇぇええ!!!

 

「それに手伝いって言ってもちょっと意見が聞きたいだけらしいですし・・・、はぁ、しょうがねえな。ちょっと待っててください」

「溜息吐きたいのはこっちだが!??勇音ぇ塩撒いとけぇ!!!」

「撒きません」

 

僕に味方はいないのか!多分今回に関しては僕が正しいぞ!!?

 

「おはようございます、榊花副隊長。研究のお手伝いをしていただけませんか?」

「勿論!僕に出来る事なら何でも言ってよ、ネムちゃん」

「・・・何なんだよ、俺いらないじゃん」

 

だから最初から言ってるじゃん、僕に用があるなら可愛い女の子連れてきてって。

 

 

 

 

「マユリ様、榊花副隊長をお連れしました」

「やぁ、お義父さん。なんか僕に研究を手伝ってほしいんだって?」

「次にその癇に障る呼び方をしたらバラしてホルマリン漬けにするヨ」

 

怖いよ、ただの冗談じゃないか。

 

ネムちゃんに連れられやってきたのは、十二番隊舎に併設された技術開発局の一室。研究設備が有るわけでもない、いたって普通の部屋だ。・・・パっと見た感じ罠とかは無さそうだね、どうやら意見が聞きたいだけってのは嘘じゃないらしい。・・・今のところはね?

 

「さぁ、斬魄刀を出したまえ。榊花副隊長、これは十二番隊長としての命令だヨ」

「脈絡ないなぁ・・・、嫌ですけど」

 

怖いよ、一切の説明もなく命綱である斬魄刀を渡すわけないじゃないか。それも涅隊長の胎の中で、自殺願望者でも嫌がるでしょうよ。

 

「ではしょうがないネ、力ずくで行かせてもらうヨ!」

「マジかよ・・・!!?」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・何故眠らないのかネ・・・?」

「眠くないからですけど・・・、あっ!さては今睡眠ガス的なの出してるな!!」

 

あっぶねーー、念のために始解しといて良かった。気付かない内に解毒してくれてたらしい、ありがとね。

 

「・・・なるほどネ、君の斬魄刀の能力か。・・・似ているが少し違うか・・・」

「へへへへへ、形勢逆転だなぁ・・・、涅隊長さんよぉ?覚悟はできてるんだろうなぁ?」

「ネム」

「はい、マユリ様」

「えっ?ちょっネムちゃん!?人前でそんなぁぁぁぁあああ・・・・・・・」

 

・・・卯ノ花隊長ごめんなさい、僕汚されちゃいました・・・。

 

 

「旅禍の中に滅却師が居たのは知っているネ、その滅却師が使用した能力に少し気になるものがあるんだヨ」

 

涅隊長が様々な情報が記されたボードを示しながら普通に説明を始める。最初からそうしてよ、何だったのささっきまでの流れは。

 

「その能力の名前は分からないが、起こす事象は単純明快!霊子の隷属だ!この私をして初めて目にする現象だ、少なくともこれまで実験に使ってきた滅却師は使えなかった!この感動が君に分かるかネ!?ああ!できる事なら今すぐにでもあの滅却師を捕らえて、神経を、腸を、脳髄を!全てバラしてバラしてバラしてバラしてぇ!!その全てを解明したい!!!ああ、忌々しい。何が道徳だヨ。人道に沿って得られる「あのぉ!」・・・なんだ、まだいたのかネ」

「今の独り言だったの!!?!」

 

怖ぇよ、本当にこの人隊長にして良かったの?

 

「・・・ああ、そうだ。馬鹿にもわかりやすく言うとだネ、似ているんだヨ。その滅却師の能力と君の斬魄刀の能力がネ・・・」

 

 

 

 

「我々死神は自らが保有する霊圧を操作し様々な現象を起こす、鬼道であったり、斬魄刀の解放であったりネ」

 

「しかし、それは霊子その物を操っているのと同義ではない。例えるのなら、霊圧とは手ですくった土であり、霊子とは土を構成する砂粒一つ一つなのだヨ」

 

「けれどあの滅却師は尸魂界の建造物を構成する霊子を分解し、自らの矢として再構築せしめた。これは明らかに人の力の領域を超えている」

 

「確かに元々滅却師は漂う霊子を操る、しかしそれは自らの霊圧を型として用いたもので、霊子はあくまでも燃料として扱ってるにすぎない」

 

「なに、別に君が実は滅却師なのではないかという下らない質問をするつもりはないヨ、しかし無関係とも思えないのも事実だ。建造物の霊子を矢へと再構築する滅却師と、死神の体を構成する霊子を再構築し傷を治す斬魄刀。まるでど(・)ち(・)ら(・)か(・)が(・)模(・)倣(・)し(・)た(・)かの様ではないかネ?さぁ吐き給えヨ、君の持っている情報を全て!!」

 

・・・ようやく涅隊長が黙った。確かに、涅隊長が疑問を抱くのも無理はない。何せ僕自身、自分以外で霊子の、それも生きた死神の霊子を操れる能力何て聞いたことがない。けれど・・・、

 

「・・・いや、何も知らないです・・・。」

「・・・・・・・・・・ほう・・・」

 

いや、多分涅隊長的にはすごい発見で、僕がその答えを持っていると思ったのかもしれないけど知らないものは知らないよ。そもそも、霊子の隷属を滅却師が出来るってこと自体今知ったもん。

 

「申し訳ないですけど、僕の知ってる限り滅却師が霊子を意のままに操ったことは無いと思いますよ?少なくとも千年前と二百年前の戦いでそんなことをやった滅却師はいないはずですし・・・。あの眼鏡君の固有の何かじゃないですか?」

「・・・・・・・・・・ほう・・・」

 

ほう、しか言わなくなっちゃったよ。えー、気まずい。これって僕がわるいの?

 

「・・・いや、確かに君の言う通りかも知れないネ、榊花副隊長。やっぱりあの滅却師を調べるべきだ。・・・でも、その前に君の事も調べさせてもらおう」

「えー、結局そうなるのかー。・・・まぁ、良いですよ。暇な時間でよければ・・・、なんていうと思ったか!馬鹿め!!どうせこっそりと爆弾とか仕掛けるつもりだろ、騙されないぞ!!!」

「勘のいいガキは嫌いだヨ、やはり力「いいえ、そこまでです」卯ノ花隊長・・・」

 

あら、なんで卯ノ花隊長がここに?・・・はっ!まさか僕の事を心配して迎えに来てくれたの!?もー、ツンデレなんだから!

 

「あまりわたくしの部下を苛められては困りますよ、涅隊長」

「・・・・・これはこれは、私としたことが少し熱くなってしまったようだネ。榊花副隊長。もう帰ってもらって構わないヨ」

「帰りますよ、霊司」

「あばよ!変態科学者!!」

 

 

こうして僕は卯の花隊長のお陰で十二番隊から生きて脱出することができたのさ。ありがとう卯ノ花隊長、すごいぞ卯ノ花隊長。でも僕を十二番隊に行かせたのも卯ノ花隊長だぞ。

 

「はて?」

 

可愛い子ぶっても騙されません。




千年前は滅却師最終形態がなく、二百年前にはあったけど霊司は把握してないって設定です
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