SSSS.GRIDMAN 始まりの声 作:アレクシス同盟
ガリ、ガリリ…………
暗い部屋に音が響く。
まだ夕方で、外では太陽が昇っていた。
周囲には怪獣のフィギュアが入った棚が置かれ、物が散乱したその部屋に太陽の光は差し込まず、明かりは一つしかなかった。
ガリ、ジジ……と、何かを削る音と、PCのファンが回る音だけが部屋を支配していた。
PCのモニターだけが光り、暗い部屋を照らした。
骨組みがゆっくりと覆われていく。
それは、何かのフィギュアを作っているかのようだった。
『また怪獣かい? 何か嫌な事があったんだねぇ。どうしても嫌な事が』
真っ黒の姿で、赤い尖った目。
PCに映ったその人影。
人間と呼ぶには違和感があるその姿に対して、言動はとても紳士的だった。
「…………」
返事を返さず、その人物はただ黙々とその作業に没頭する。
ただ人形を作るには、どこか異常な様子だった。
『学校で何か……』
「……静かにして」
ぴしゃり、と声を遮り、ただひたすらに人形を作り上げていく。
眼鏡が光る。
ため息を吐くと、手を降ろした。
『完成が楽しみだねぇ』
「……」
赤い目が光る。
本当に楽しみにしているのか、まったく動かない表所を見ても分からなかった。
黒い影を無視して、視線を外に向ける。
閉じられたカーテンの向こう。
嫌な程に広がる青空。
その景色を見ながら、カッターナイフの刃を出した。
三人で下校した。
帰る時も内海が気を利かせてくれて、自分の準備が終わるまで待ってくれた。
家族には連絡をいれた。
まさか、転入初日に友達と帰るとは思っていなかったのか、既読から返信が少し遅かった。
『楽しんで来い』
それだけだった。
楽しむも何も、一緒に帰るだけだ。
親の心情は分からない。
このメッセージにどんな意味があるのか、僕には分からなかった。
「なんか今日、色々と大変だったな」
内海が呟いた。
どちらかというと、自分たち二人に向けて話しかけているように感じた。
「うん……でも、新条さんは優しいね」
「優しい? 優しいっていうか、哀れみみたいなもんだろ~?」
「そんな線引きしなくても……」
新条アカネ。
紫色の髪の、可愛らしい少女。
友達も多く、同学年でも有名な少女。
内海の言う通り、彼女は優しいというか……もっと。
それ以上の何かが、彼女にある気がした。
「大田くんはどうだった? 転入初日で大変だったでしょ」
「まぁ。でも二人と仲良くなれたから」
「お前……よくそんな照れくさい事を真顔で言えるな………」
少し恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうな顔でこっちを見る内海。
そんな内海の様子を見て、楽しそうに笑う裕太。
青い空を見上げた。
病院で目覚めた日も、確かこんな天気だったか。
あの時と同じ空でも、気持ちは全然違った。
こんなのも悪くない、そう思った。
「……新条さんって、いつもあんな感じなの?」
「あんな感じって?」
「なんか、分かんないけど……周りを達観して見てる感じ」
「何言ってんだ渚。新条アカネは才色兼備才貌両全の最強女子! クラスでも全員に好かれる奇跡みたいな女だぞ? 今日だって、飯を忘れた裕太にあの気配り! 普通の奴じゃできないって」
熱く語る内海の様子を、裕太と二人で眺める。
裕太も苦笑いを浮かべていた。
僕と考えている事は同じだろう。
「内海、新条さんの事好きなの?」
「えっ、俺はいや、その、なんだ。これは客観的な意見であって、近寄りがたい雰囲気もあるとかないとかもあるけど……」
段々と尻すぼみになっていく言葉。
話を無理やり切り返るように、声を張り上げ裕太へと近づいた。
「それより! グリッドマンっていう奴見たいんだけど!」
「……グリッドマン?」
グリッドマン、何かのアニメだろうか。
頭に?マークを浮かべながら、裕太を見る。
裕太もこちらを見て、少し困った顔を浮かべている。
「なぁ、グリッドマンって?」
「ん? あぁ、大田は聞いてないか。グリッドマンっていうのはな、朝……」
「あっ」
裕太の視線を先を見る。
一人の少女が歩いてきているのが見えた。
イヤホンを付けた、今時の女子って感じの子。
……うちの学校の制服だった。
「あの人知り合い?」
「えっ、あぁ、まぁ……うん」
「知り合いってか、同じクラスだぞ~?」
「そうなんだ。そういえば、居たような……」
挨拶してきた中にはいなかったような気がする。
少女が目の前で立ち止まった。
「……なに、三人とも。こんな所で立ち止まって」
「あぁ、いや……これから裕太の家に行って、グリッドマンを見せてもらうって話をしてたんだ。なぁ?」
「えっ、あ、いや……」
「グリッドマン?」
何かを思い出すような顔をした後、思い当たったように「あぁ」と呟いた。
見た事のない一人がいるのに気付いた用で、少女の目線がこちらを向いた。
「えっと……確か、大田くん、だっけ」
「うん。えっとごめん、名前……」
「ごめんね。挨拶行こうと思ってたんだけど、タイミング逃しちゃって。宝多六花。六花でいいよ」
「分かった。僕は大田、大田渚。大田でも、渚でも」
「ん。じゃあ太田くんで。それで……グリッドマン、だっけ。それって、前の?」
前の、という事は、前に二人に何かあったという事だ。
内海も興味あるのか、裕太の顔を覗き込んでいた。
「おい、どういう事だよ。なんで女子が知ってる」
「色々あったんだよ……」
「てか、グリッドマンってなんだよ」
謎しかないグリッドマンについて聞くと、裕太は内海の手を降ろして、話始めた。
先日、六花さんのお母さんが経営してる店のパソコンに、機械の戦士みたいのが現れたと。
使命を思い出せ、と言われたと。
けれど、立花さんはそんなの見えなかった、と。
「……幻覚じゃないの?」
「だよね! 思うよね」
「幻覚、なのかぁ……それにしては、はっきりと……」
「まぁどちらにしろ、確認して見ない事には分からないだろ? 宝多、という事で……」
「えぇ、何、という事でって」
「いいからいいから。確認しないと、裕太も不安だろ?」
「それは……そうだけど」
「えーっ、これってまさか来る感じ?」
自分が巻き込まれ、少し嫌そうに返事する立花さん。
どちらかというと、嫌というよりめんどくさいという方が勝っている様子だった。
「ごめん、立花さん。こんな事になっちゃって」
「いや大田くんのせいじゃないから。……はぁ。それ、裕太くんの記憶に関係してるの?」
「えっと……たぶん?」
再びはぁっ、とため息を吐くと、付けていたイヤホンをカバンにしまった。
「……分かった。じゃあ付いてきて。遅いと置いてくよ?」
「よっしゃ! 行こうぜ裕太、渚! グリッドマンってやつを見に行こうぜ!」
裕太本人よりもテンションが上がっている内海。
彼はどうやら、ヒーローとか、戦士とかそういう物が好きらしい。
そういえば、ウルトラマン好きだって言ってたな。
特撮オタクな気があるみたいだった。
俺達四人は、グリッドマンが映ったらしい、彼女のお母さんの店へと向かう事になった。