SSSS.GRIDMAN 始まりの声 作:アレクシス同盟
六花さんについて行った先にあったのは、「絢」と書かれた看板のあるジャンクショップだった。
ジャンクショップ。今時そんなに数はないであろう、割とレアな店。
入る前から、少し興味が湧いた。
六花さんが何やら会話をした後、こちらの方を向いた。
三人で顔を出す。
中は結構広くて、本当に色々な物が置いてあった。
古いゲームから、どこに使うか分からないような物まで。招き猫さえ置いてあった。これは誰が買うのだろうか?
内海が店内を見て回っているのが見えた。
「何かいいもんでもあったか?」
「いんや。例のパソコン探してた」
「パソコン……ああ、グリッドマンがどうのっていう」
周りを見回す。
その中に、中古の人形があるのが見えた。
古い怪獣フィギュアだった。
「お、これは……」
「何々? おおっ、これはウルトラマンじゃねーか! それにこっちは怪獣の……」
「ツインテールだね」
少し抜けたような顔をした怪獣のフィギュア。
帰ってきたウルトラマンに登場した『ツインテール』のフィギュアだった。
頭が下で、尻尾が上という不思議なフォルム。
周囲を見渡したが、グドンの人形は置いていなかった。幸い食われる事はないな。
「へー、こんなものも置いてるのか。俺の持ってない奴だし……買うのもありか」
「目的はグリッドマンでしょ……」
「あ、そうだった」
内海が再び探し始める。
テレビやパソコンが置いてある場所を探すが、よく分からない。
考えてみれば、グリッドマンの声は裕太しか聞こえないのだから、俺達が探しても見つかる訳がなかった。
「裕太~? どれがグリッドマンなの~?」
「そっちのパソコン」
指を差した先にあるパソコンを見る。
そこには、大きな古いパソコンが置いてあった。
ジャンク屋にあるパソコンというだけあって、色々とゴテゴテしている。
少し汚れているし、年期を感じられる物だ。
「昔のパソコンってこんなにデカいの? この寄せ集め感、まさしくジャンクだな!」
「これって動くの? いや、店にあるって事は、販売用なのか……」
「それは、昨日聞いたっす」
ジロジロとパソコンを見ていると、裕太が一人で話始めた。
周りから見れば、空想の存在と会話している異常者である。
「危機って何」
「……誰と話してんの」
「えっ、内海にも見えないの?」
「見えない」
縋るようにこちらを見る裕太。
あいにくだけど、自分も見えない。
顔を振ると、裕太が肩を落とした。
「やばいなコイツ……」
「うん。ヤバい」
皆の意見として、『コイツヤバい』という意見が纏まりつつあった。
……だけど、何故だろう。
こういった現象に、それほど『ありえない』とは思えなかった。
「グリッドマン、何て言ってんの?」
「えっと、『裕太、急いでくれ。危機はそこに迫っている!』……みたいな事。言ってる事は殆ど同じ。俺が聞いても、それ以外応えてくれない」
「……意志がある訳じゃないとか? BOT?」
「でも、俺にだけしか見えないBOTって何……」
「渚……お前、意外と信じてる派?」
「太田くん、そういうの好きなの?」
「……なんか色々と勘違いされてるみたいだけど、僕は普通だから」
少し心配した目で見られた。
誠に遺憾である。
「別に……僕は裕太が嘘をついているようにも見えないなって」
「まぁ……それはそうだけど」
「言ってる事がヤバいよ」
「本当なんだけどな……」
その瞬間、裕太の顔が変わった。
少し悲しそうにしていた顔が、何かを探るような顔になった。
「裕太?」
「……なんか、ヤバい感じが……」
「お前はずっとヤバいよ」
「いや、そうじゃなくて……」
血気迫った様子を見て、何かあると感じた。
裕太がこんな嘘をつく奴ではないのは、短い付き合いだが分かる。
外を見る。相変わらず、太陽の光が照らしている。
夜に近づいているらしく、日が暮れて来ていた。
それ以外に、特に変わった事はない。
「怪獣が聞こえる……」
……周りから見たら、俺以上にヤバい奴だ。
脳内で、この世界から浮いてる気がするなどと考えている俺以上に。
考えすぎだったのか?
「もっかい病院行ったほうがいんじゃない?」
と、六花さんがそう呟いた瞬間、建物が大きく揺れた。
「っ、地震か!?」
頭を守り、物がない場所へ移動する。
直ぐに揺れが収まると、四人で外へと移動した。
遠くの場所から煙が立ち上っているのが見えた。
人の声が聞こえる。叫んで、誰かに助けを求めるような声。
空を見上げた。
少し遠くに、大きな影が蠢いていた。
『おぉ、衝動的で素晴らしい姿だねぇ』
暗い部屋。
一体の人形が、机の上に鎮座していた。
恐竜のような、首が長い怪獣。
ウルトラマンシリーズでは出た事がない、見た事もない怪獣のフィギュア。
PCの中の黒い体の生命体が、感激したかような声で喜んだ。
『今回も力作だねぇ。流石はアカネくんだ』
「でしょ。炎を吐けるような、そんなイメージで作ったの」
暗い部屋にいたのは、新条アカネだった。
カッターナイフの刃をしまい、くるくると手で動かしながら、冷めた目で画面を見つめる。
面倒なのか、半分だけ脱ぎ散らかされた黒色のタイツが、ブラブラと揺れる足の先で床を叩いた。
アレクシス、と呼ばれたPCに映る黒色の人物は、その様子をまるで親が子を見守るような言葉をかけていた。
実際、目のような部分はあるが、本当にこちらが見えているのかはわからない。
『すばらしいねぇ。では、動かしていいかい?』
「うん。やっちゃって。ターゲット、忘れないでよね」
『もちろん。では、動かそう……』
彼の視線の先にあるのは、ただの動かない、なんてことのない普通の人形。
アレクシスの赤い目がギラリと光る。
PCが明滅し、部屋が震えた。
世界を変えるような異常な力が……人形に吹き込まれた。
『インスタンス・アブリアクション』