SSSS.GRIDMAN 始まりの声 作:アレクシス同盟
その日、僕は学校に残っていた。
何でも転入手続きの書類に書いてもらう物があるらしく、それを書くために学校に残っていた。
職員室の扉をノックし、開ける。
中を見渡すと、担任の先生が座っているのが見えた。
相変わらずスマホを眺め、周りの先生とも話さず何の準備もしていなかった。
思わずため息を吐いた。
ゆっくりと近づくと、こちらに気づいた。
「先生、書類取りに来ました」
「あぁ……そこにある」
こちらも見ずにスマホを触り続ける。
デスクの上を見ると、乱雑に書類が置かれていた。
「……先生、流石に……」
少しだけ苦言を言おうとした。
今日のアカネさんだって、危なかったんだ。
いつか事故が起きるかもしれないし、それに心象も悪い。
声を掛けようとしたその瞬間……。
地鳴りがした。
ついで校舎が揺れ、大地が歪んだ。
何かの叫び声が響き渡る。
今までに聞いた事のない声。
新たな怪獣が現れたと、すぐに分かった。
窓へ近づくと、遠くに白い怪獣が立っているのが見えた。
腹の中心には紫色の窪みがあり、そこを中心として岩のような模様が広がっている。
顔はカプセルのような物に包まれ、そして二つの赤い目が光っていた。
怪獣がこちらを向いた。
窪み盛り上がり、その先端が光輝いている。
「……ッ、まずい!」
先生を引っ張る。
とりあえず、遠くに避難しないと。
何が何だか分からず動かない先生を引っ張る。
そうしている内に、窓の外が眩しく光輝いた。
激しい衝撃と音。
そして視界を染める閃光が、僕の意識を刈り取った。
「ちょっと雑すぎ~! ちゃんと狙って撃ってよ~!」
吹き飛ばされた学校を、アカネはドローンを通して笑いながら見ていた。
遠くから打ち出された青白い光線は、学校の直線上の建物を崩壊させながら突き進んだ。
そのため完全には学校を吹き飛ばせず、一部の校舎は残っていた。
画面をズームすると、職員室が粉々になっていた。
この時間、担任の先生があそこから動かない事は知っていた。
怪獣はゆっくりと学校へと足を進める。
光線を乱射し、建物を破壊しながら。
「……先生ちゃんと死んだかな……」
別に死んでも死ななくてもどっちでも良かった。
怪獣を出現させて暴れさせた時点で、既に関心は失っている。
それに今日はそこまでイライラしていない事を、彼女自身が気づいていなかった。
特に理由はなかった。
怪獣が壊した建物を眺め、職員室を映す。
ボロボロになり崩れ落ちた校舎。
その中から、一人の男が起き上がった。
「なんだ~先生死んでないじゃん。ビームの精度悪すぎだよ」
『あちゃあ。怪獣毎に能力には差が出るからねぇ』
眼鏡をかけた、さえない男。
あの時自分に謝らず消えていった事を思い出す。
楽しそうに見ていたアカネだったが、段々とイライラとしてきていた。
「早く殺してよ~。思い出したらイライラしてきた~!」
タブレットの画面越しに映る先生を叩く。
抜けな顔を晒して怪獣を見上げるその顔に、またイライラした。
そんな中、画面の端で、瓦礫が動くのをアカネが見つけた。
「職員室に誰かいたのかな……どうでもいいけど」
直ぐに興味が失せ、怪獣へと画面を切り替える。
怪獣の腹に光が集まり、今度は至近距離で狙いを定めた。
死ぬところを見るため、画面を戻す。
「……あれ、この人……」
画面に映っていたのは、先生を連れてその場から離れる一人の男の子。
この学校の生徒のようだった。
拡大する。
そこにいたのは、例の転入生だった。
「あっ、ちょっと……」
『うん? どうしたいんだいアカネくん』
思わず声が出てしまった。
今日の出来事を思い出す。
少し話が合う転入生。
今のところ恨みもないし、自分の事を変な目で見ている訳でもない、普通の少年。
少し考えて言葉が止まるが、直ぐに結論は出た。
「……まぁ、いっか」
たった一日、少し会話しただけの人に、そこまでの興味はなかった。
ここで死ぬならそれでいいや、と。
特に止める事もなく、怪獣の攻撃が放たれるのを見守った。
そして……その攻撃は。
新しく現れた「お客様」に防がれた。
機械の戦士が姿を現した。
怪獣を蹴り飛ばし、地面に着地する。
目の前には怪獣と、そしてグリッドマンの姿。
……なんだか姿が違う。
前のような姿ではなく、赤い鎧をまとった戦士のようだった。
「……あっ、先生! はやく、こっち!」
「あっ、あぁ……」
先生を連れてその場から逃げる。
怪獣はグリッドマン……いや、裕太に任せる事にしよう。
僕にできる事は何もないのだから。
「いいね~! そのまま倒しちゃえ~!」
青白い光線を受け、吹き飛ばされるグリッドマンを見て大はしゃぎ。
先生を殺すという目的も忘れ、自分の怪獣がグリッドマンを追い詰める様子を楽しそうに見学していた。
そんなアカネを見守りながら、アレクシスは画面に映りながらその映像を……見ていなかった。見ていたのは、ドローンに表示されていた画像のアーカイブ。
先生を連れて逃げる一人の少年。
アカネから聞いた話では、ただの転入生だと。
確かに普通の少年のようだった。調べても出てくる情報は、記憶喪失を除けば普通の事ばかり。
『……面白いねぇ』
「ん~? アレクシス、なんか言った?」
『アカネくんの怪獣は面白い攻撃をするなぁと感動していたんだよ』
「えへへ~でしょ~。私が作ったんだから、弱い訳ないよ~」
『そうだねぇ。……本当に、面白い』
そう呟くアレクシスの声は、いつもとは違う『熱』があるように聞こえた。
機械的な目が、その姿をじっと見つめていた。