其処は暗く、底は永遠と続いていそうだった。
自分の周りに有るのは闇だけであり僕は死んでしまったのだと受け入れた。
光も音もーーーそして空もない海の中にうかんでいる。裸で、何も飾らないままで、鬼狩識という人型が沈んでいく。
思った通り果てはなかった。いやはじめから堕ちてなどいなかったのかもしれない。
ここには何もない、空っぽと満杯、死と生の境界なのだから
無という言葉はありえないーーー父さんがそれを証明したから
周りには毒々しい色彩をしている。ここでは「ある」ものは全て毒々しい
「ーーーこれが死か」
呟くことも多分幻想
ただ時間らしきものを観測する。
「」には時間もなかったけれどここには自然とある
ずっと、見続けても、何も見えない
ずっと、見続けても、ただ多分、空から離れていくだけ
とても穏やかで心地がいいーーーまるで揺りかごのようだ。
いやーーーあらゆる意味はないから「ある」だけで満杯なんだ
死者のみが到達できる世界。生者は観測しえない世界
ーーーでも僕は生きている。
四年間という歳月。僕はここで死という概念に触れていた。
それは今まで戦ってきたことよりも激しかったと思う。
夕方になって病院はにわかに忙しくなった。
廊下を歩く看護師の足音がよく聞こえる。
患者特有のスリッパの音はこの病室が奥に有るため聞こえてこない
眼が覚めたばかりの僕にはそんな足音さえうるさすぎた。
そしてすぐに医者がやってきた
「気分はどうかな、識くん」
「ーーーさぁ。僕にはわからない」
感情が乏しい僕の返答に医者は困ったようだ。
「そうですか。ですが今朝よりは安定しているようですね。現在のあなたの現状をお話します。今はあなたが最後に起きていてから四年後の四月九日です。あなたは船の爆発事故に巻き込まれてから今日にいたるまで昏睡状態でした。この事故に見覚えはありますか?」
そんな事故には見覚えは無い。ーーー僕は飛んできたミサイルを最後の魔力を振り絞り「殺した」あとにミサイルの爆風で飛ばされたのだから。ーーー多分、束が作った「IS」関係でのもみ消しであろう。
「......」ーーー覚えが無いから答えようが無い。
「そうですか。あなたは事故に巻き込またものの身体にはダメージが少なかったのですが、頭部へのダメージが大きかったのでしょう」
とかってに推測している医者にはわるいがそれは無い。ーーーだって本当にそんな事故は「無かった」のだから。ーーーまあ言葉を発言しない僕も悪いとは思うが、
今、僕の眼に視えているのは普通の背景と医者ではなく、ひたすら有る、線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線
恐らくは「直死の魔眼」であろう。ーーー万物には全ての綻びがある。完璧なものは存在しない。みんな壊されたいと思う願望がある。「直死の魔眼」にはその線が視えてしまう。「見える」ではなく「視える」だ。恐らく噂どうりだとしたらこの視えている線を切ればあっという間に「崩壊」を起こすであろう。
普通の人ならこの線が視えたときに混乱を起こすであろう。ーーー僕にはこの線が時々だが「視えていた」ので眼を達観にすれば大丈夫だった。
「外の空気を吸ってきていいかな? あと車椅子と松葉杖も貸してもらえるといいかな」
「いいですよ。四年間ぶりの「外」を楽しんできてください。でも早めに帰ってきてください。検査もあるので」
そして数分がたち、車椅子と松葉杖が届けられた。身体が上手く動かせない僕の身体を医者達が支えてくれた。
僕はそのあと病室からでて、外にある草むらが丁度いい具合にある河原へと辿り着いた。
そして車椅子から降りて、松葉杖を頼りに寝っころがる。
眼のうえには「死の線」と重なって視える月が輝いていた。
前にもこんな事があった。「死の線」は視えていなかったが、僕の故郷で
ーーーその時突然顔を蹴り飛ばされた。
一瞬何が起こったか理解出来なかった。でもすぐに理解した。
目の前にいたのはこの「世界」にいるはずがない、「第五魔法」の世界に五人しかいない魔法使いの一人、「蒼崎青子」が紅い髪の毛を揺らしながら佇んでいた