僕は材料を取りに食堂に行くと丁度夕食の時間ごろなのか人で溢れている。僕が来たのに気がついたのかこっちに視線を向けている。僕をウジ虫と同等の扱いのように見ているのか、笑っている奴もいる。ーーー正直怒りたくないし、こんな奴らに付き合う義理もない。
僕は食堂の人には悪いが少し多めに食材を頂いた。ここの食堂の材料はみな質が良く、どうやら最高級クラスの材料を仕入れており僕も初めて見た当初はそうとう驚いた。しかも材料は和洋折衷となんでもあるのだ。ーーーくっ......少々舐めていたようだなIS学園。
テンションが上がって仕方が無い。ーーーひょっとしたらISとの戦闘よりもテンションが高いのかもしれない。
今日獲得した材料は最高級のわかめ、鰹、それと旬の野菜を貰って来た。ここは学食なのに料亭並みの材料がある。ーーーつまりは今まで試せなかった料理に材料という土台があることで試すことが出来るのだ。ーーー無論、料理のレシピはここ八年の旅に手に入れたものがほとんどだ。なんせ世界中を周ったから古今東西の料理のレシピを手に入れることができた。ーーーえっレシピを教えてくれない料亭とかあるだろうって、そんなの暗示を使えばいくら口が固い料理人でも口を開くだろ? えっ魔術の無駄遣い? 知らないしこれさゼル爺や青姉が美味いもん食べたいから世界中の料理をついでに学んでこいとか言ってきたのが悪い。
現在、そのレシピの塊は三つのファイルに分けている。一つは習得したレシピ、一つはまだ試していないレシピ。そして最後の一つはデザートのレシピだ。
だが今回は皆に味わってもらいたいので、自分が一番自信のある日本料理で勝負する。一つのミスもしないように全力投球だ。メニューは鰹の叩き、わかめの味噌汁、
ホタテの炊き込みご飯、ナスの生姜焼きだ。季節の旬を味わうのが僕なりの贅沢なので簡単に見えるが全て手を抜くことは出来ない。
ホタテの炊き込みご飯には旬である三つ葉を乗せる予定だ。
そうして僕は部屋に戻った。 余談だがこの時、食堂にいた人達の証言は「いつもよりも遥かにテンションの高い識さんが見た。ーーーだけどその後すぐにISでの戦闘の時よりも顔が強張ってた」というものだった。その後から識には「調理魔」、「シェフの魔法使い」などといったあだ名がちらほら囁かれるようになった。
僕は部屋に戻ると足音に気づいてくれたのか光がドアを開けてくれた。ーーあぁありがたい。現在、僕の両手は材料によって塞がれているのでドアを開けることが困難だったのだ。
「サンキュー光、助かったよ」
「どうせ大量に材料を貰ってくるってことは両手がふさがることがだいたい予想出来たからな。あっ一個段ボール持つが? 」
「それは助かる」
そういい僕は二個あるうちの片方の段ボールを光に渡した。材料をキッチン周辺に置くととりあえず今日使う分以外は冷蔵庫に入れ今日使う分はキッチンの近くに置いてある小さなテーブルに置いておく。ーーーその時、自分が食堂の人に頼んだリストに入っていないものを発見した。ーーーむっこれは京野菜の伏見甘長唐辛子ではないか。まさか京野菜まで取り扱っているとは......IS学園の食堂よ、どこまで僕を喜ばせるのだ? これは一品追加だ。酒のつまみにもピッタリな胡麻と甘唐辛子の炒め物でも作るとしよう。そして自前の皮の包丁ケースを取り出しキッチンに置く。無論この包丁は僕が自分で鍛えたものだ。剣などの武器を作るからにはまずは作るということを知るほうが魔法にはいいため気晴らしにたまに作るがこれは違う。これらは僕が全ての包丁を作るために半年を費やした包丁らなのだ。ーーーそこいらの市販の包丁に負ける道理はない‼ ーーーいくぞ食材、味の貯蔵は十分か?
そうして僕は調理に取りかかった。
そして三時間後、ついに食材との対決は終焉した。結果は僕の勝ちだ。ーーーはっきりいってしまえばクラス代表を決める時の対戦よりも体力を使ったと思う。僕は部屋にある小さな収納場を改造し酒を置く場所にしてある。温度や湿度は全てルーンなどの魔術で補っている。そこから僕は自分の好きな日本酒の銘柄である天狗舞を取り出す。ーーー今日は珍しく幼馴染達が揃っているので特別だ。それを数本持っていき皆の待っている元に向かった。
「おい皆出来たぞ」
そこにいたのは今日は疲れたのか仮眠をしていた千冬とパソコンをひたすら弄っている束、香と話している光だ。どうやら匂いによって千冬は目が覚めたようで僕が運んできた料理に眼がいっているようだ。
今日のメニューは一品追加でホタテの炊き込みご飯、わかめの味噌汁、ナスの生姜焼き、鰹の叩き、ーーーそして胡麻と甘唐辛子の炒め物だ。そして飲み物は日本酒の天狗舞だ。
「じゃあ食うか」
「そうだな」
「「「「「いただきます」」」」」
そうして僕らは夕食を楽しんだ。
こうして皆で食事をとるのはいつぶりだろうか。ーーー久々に本当に楽しむとしよう。
ーーー別室、教員寮の一部屋
「今日は識さんの部屋の改装工事があるからここで寝てって言われたけど......明日からが心配だなぁ......」
そう呟いたのは転校してきたばかりのシャルル・デュノアだ。一応デュノア社の御曹司のような扱いになっているが本当は令嬢だ。ーーーだが妾の子なため、酷い扱いをされてきた。今回の目的だって令嬢にさせるものではない。なんせ「織斑一夏」と「鬼狩識」のISの情報及び魔術、魔法についてを盗んでこいといってきたのだ。ーーーあぁなんて......無駄なこと。そんなことをしたっていつかバレる。そうなればデュノア社の倒産は確実だ。
鬼狩識の情報は既に戦闘のリプレイ動画と今日の山田先生との対決で十分に把握してある。ーーーそう、自分では鬼狩識に勝つことが不可能なことに。
圧倒的な物量と実力でイギリスの代表候補生である「セシリア・オルコット」を圧倒した戦闘能力は目まぐるしい。特にあの魔法とよばれる「物質の創造」は恐ろしい。何度も創ることが可能なので魔力で連鎖爆発をさせてもすぐに剣の補充をすることが可能なのだ。
となるとハニートラップや精神的攻撃が望まれるとなるが鬼狩識にはそれさえも通用しない。ハニートラップに関しては鬼狩識のあまりにも「鈍感」というどっかのゲームや小説のような特徴でありハニートラップをスルーするということが確率的に高いのだ。ーーーいったいどうすればいいのだ? わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない。
そうして教員寮の一室でシャルル・デュノアーーー否、シャルロット・デュノアは睡魔に落ちた。