~IS~飛翔風景~   作:メザシ

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第三十三話 黒兎来襲

千冬の号令が聞こえる。ーーーつまりは授業が始まったことを意味する。僕は手元にある本を閉じ、千冬の方を見る。自分の腕時計を見てみると現在、8時30分。どうやらホームルームの開始の時刻のようだ。

 

IS学園の授業ははっきりいって僕の場合、午後からの実習だけ受ける形にした方がいいと思う。もうすでに大学までの勉強を済ませたのになんでここで高校の勉強をしなくてはいけないのだ。復習になっていいと思う人もいたり簡単に思えて羨ましいと思っている人はいると思うが正直に言えば退屈だ。僕はIS学園と「等価交換」をしていないのだ。一方的にここに通う義務を国を利用して無理やりに僕をここに通わせているのだ。ーーー僕は確かに「魔法使い」だが同時に「魔術師」でもある。ーーーつまりは「等価交換」というのは基本中の基本なのだ。これを守らない「魔術師」はほぼといって存在しない。僕はそんな「魔術師」は見たことがない。確かに殆どは大学と村に引きこもってたけど少しは他の「魔術師」とは交流があった。無論この「魔法」は見せていないが。

 

僕が見てきた「魔術師」はみんな等価交換を守っていた。ーーーなぜなら「等価交換」というのは「魔術師」にとっては常識的なことなのだから。自分に見返りのないことはしない、これは「魔術師」としての基本だ。ーーーつまりはだ、この「等価交換」になっていない強制入学は受けなくても良かったのだ。学園や各国から狙われるかもしれないが、それでもそのほうが楽しかったであろう。ーーーだが、高校に通うことは千冬と約束してしまったものだ。ほんの気まぐれで「等価交換」にみあわない約束をした結果がこれだ。ーーー全く、普段やらないことをやろうとするからこうなるのだ。こういうのをことわざで自業自得というのかもしれない。

 

僕は自分を自虐しながらもホームルームの会話を聞くことにした。セイバーは現在眠っており、随分といい身分のようだ。こちとら全くためにならない授業を受けなくてはならないのに。

 

千冬の話によるとどうやらデュノアに続いて転校生がまたくるようだ。ーーーこの学園は確か倍率がかなり高かったはずだがこんなに転校生が来るのは少し企業や国などの圧力を感じる。

 

ドアが開き、一人の少女が教室に入ってくる。銀色の髪をたなびかせながら教卓のほうへ向かう。片目には眼帯をしており、なんらかの異常があることを僕に教える。

しかしとっかで見たことがあるような気がする。しかもこの名前すらも知らない少女に僕は僅かながらも罪悪感を持っているのだ。ーーーおそらくはドイツで僕がやらかした事件の被害者に当たる少女だろう。多分僕が意識を手放す前にぶっ潰してしまった少女だろう。

 

 

「皆さんに新しいお友達を紹介します。......さぁ入ってください」

 

山田先生はおどおどしておりどうやら二日連続で転校生が来たことに驚いているようだ。ーーーまぁ二日連続で転校生が来るなんてことはほぼないことだから当然と言うべきか。

 

「.......自己紹介をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

教官と千冬を呼んでいる少女はおそらくドイツのどっかの小隊のメンバーだろう。千冬から聞いた話によると少しの間、ドイツの教官をやっていた話を聞いた。ーーーそうだから僕はあの時、千冬の存在に感づいたのだ。そしてドイツということはやはり僕が意識を手放す前にぶっ潰してしまった少女の可能性が高まったのだ。......とりあえずこの可能性が確定であったばあい一応誤っておこう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ......」

 

「ーーー以上ですか? 」

 

「以上だ......」

 

まぁ随分とシンプルな自己紹介で、まぁシンプルなのは楽だから僕はいいと思うけどね。いらない情報を仕入れても結局は忘れるんだからそもそもいらない情報は言わなくていいのだから名前で十分なのだ。

 

その少女ーーーラウラ・ボーデヴィッヒは自分の席を知っていたのか席に向かおうとするが、途中で進路を変え、一夏の目の前に立つ。ーーーこれは不味いな。

僕は席を立ち一夏の方へ向かう。

 

「ーーー鬼狩、ホームルーム中に立つとはいい度胸だな」

 

千冬からそんな言葉を投げかけられるが今回は無視だ。魔術回路を軽めに開け、手に魔力を込める。

 

「......お前が織斑一夏か? 」

 

「ーーーあぁ、そうだが? 」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは手を振り上げそのまま一夏に当てようとする。ーーーやはりか......

 

「ーーー創造」

 

その瞬間、顔に平手打ちをしたような音はせず、代わりに手で金属を殴ったような音がした。

ラウラ,ボーデヴィッヒの手は、織斑一夏の顔には届いておらず、代わりに鬼狩識の創り出した鉄扇に当たっていた。手は少し痛そうだが軍人のようなので慣れているのか、顔にはそのような痛そうという感情は見えてこない。

 

「ーーー全く、人様に迷惑を転校初っ端からかますってのは関心できないな。さっさっさと自分の席に着きな」

 

クラスメイトはザワザワしており、とても耳障りだ。ホームルーム中だというのにこんなに煩いとは全く......僕は一夏を守ろうとしたから悪くない。決して悪くない。

 

「きっ貴様は......私の部隊をめちゃくちゃに崩壊させた狂った魔法使い......」

 

「やっぱり君だったか.......そのことに関しては僕が悪かったと思う。だけと今は今だ。僕に殴りに来るのなら甘んじて受けたが一夏にやるのはよくわからない。ーーー返答によっては潰すよ? 「魔術師」や「魔法使い」って「他人」には手厳しいけど、「身内」なら十分に甘いのが特徴だからね。ーーーだから「身内」を訳もなく傷つけるのなら僕は容赦しないよ? 」

 

「......モンデグロッソの件と言えば分かるだろ? 」

 

「いいや、僕はモンデグロッソを開催していた時期は昏睡していたもんで知らないんでね。しっかり言ってもらわないと分からないんだ」

 

「......そうか、ならそこの織斑一夏にでも聞くといい。そいつならモンデグロッソの件と言えば分かるだろうからな」

 

そうしてボーデヴィッヒは自分の席についた。僕と一夏の顔を見ている時の眼はまるで自分の育て親から自分を離した犯人を見るような眼で、怒りと悲しみーーーそして寂しさが感じられた。そのあと何事もなかったの様にホームルームが再開された。

 

 

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