現在、僕ーーーシャルル・デュノアは荷物の整理をしている。鬼狩識さんの荷物は本と調理器具を除けば少ないくらいで、あるとしてもパソコンとその周辺機器くらいなものだ。ゲームや漫画といった娯楽はなく、鬼狩識さんの趣味が料理と剣術、パソコンーーーそして読書ということに察した。パソコンの隣には望遠鏡が置いてある。少し埃を被っており、最近は使用されていないようだ。クラスメイトから鬼狩識さんの印象を聞いたとき「傍若無人」、「人外」、「自己中」、「千冬様の言うことを聞かない最低野郎」、「コミケネタ」の塊など悪い印象が殆どだったが、布仏本音さんがいうには「しーしーはね、空が好きなんだよ。多分、ISじゃあ物足りなそうにしてて驚いたよ〜」ということから空にとても執着心があるのだろうと僕は思った。天体望遠鏡は空気がなく、恐らく魔法でも行くことが難しい宇宙へ憧れを抱いているからであろう。
台所からは識さんの鼻歌とトントンと包丁で料理の材料を切っている音がする。こっちにはスープかなにかの湯気が来ており食欲をそそる。今日は僕の入寮日なので作ってやると言われたのでお言葉に甘えせさていただいている。日本の畳はフローリングと違った感覚でなんだか落ち着く。テレビをつけようとしたらテレビの上に一枚の写真たてが置かれていることに気づく。どうやら最近撮った写真のようで時間は2012 4月2日12時30分と刻まれている。桜の木の下で撮ったからなのか写真に写っている人達の肩に桜の花びらがついている。写真には五人の人達が写っている。どれも僕が知っているような有名人ばかりだ。ーーーだがこの写真は何処かのイベントで撮られたものではなく、プライベートで撮ったもののようだ。まずは現在の世界状況「女尊男卑」を作り出してしまった根元である「IS開発者」の「篠ノ之束」だ。
篠ノ之束博士は和服の女性ーーー否、男性である「魔法使い」である「鬼狩識」の腕に抱きついている。識さんの顔は困りきっており、その上に「現日本代表」である「葉桜香」が乗っかっている。なんていうかこれが「両手に花」っていうのかな? それを飽きれた顔で見ているのが「第一回モンデグロッソ優勝者」であり「現在IS学園の教師」である「織斑千冬」だ。ーーーだが、少し寂しそうな二人が羨ましそうにしているというのが感じられる。その一連の状態を面白そうにみているのが「篠ノ之束」と同レベルの科学者である「多々良光」だ。ーーーそうこの五人のことを「黄金世代」とマスコミや世間は称えており、識さんにそのことを聞いたら「そんな活躍してないのになぜそんなに褒め称えられなければならんのだ」と言っていた。ーーー全く、謙虚にもほどがある。「魔法使い」というそれはとてもとても凄い異能を使える上に「世界武術トーナメント」では優勝を飾り続けた識さんには相応しい二つ名だと僕は思う。
僕は荷物をまた整理し始めるとドアがコンコンとノックされ、識さんにはそれが聞こえたらしく「誰? 」とドアの向こうの人物に質問する。するとドアの向こうの人物は「私だ。光だ」といい、識さんは「なんだ光か。でなにかようか? 」とまた質問する。そうしてドアの向こうの人物ーーー多々良光は「夕食を食べさせてもらえないか。向こうの食堂で夕食を取るのは少々精神的にキツくてな......頼む......」という。まぁ当然のことだろう。一夏以外に向こうには男性は居ない。一夏は他の友人がいるため光さんは気まずい。他の女性に囲まれて夕食を食べるのも気まずい。ーーーだからこそ親友である識さんに助けを求めたのだろう。これは逆の方向性ーーーつまりは男性だらけの中に女性がポツンとしていることを考えると僕には簡単に想像出来た。
ガチャリと鍵が開く音がし扉が開かれる。扉を開けた人物の姿は身長は180センチと長身で白衣をしている。髪の毛は基本的に茶色に近い黒だが一部だけ赤くなっておりそれはミミズを想像させる。雰囲気は落ち着いており少し年上なお兄さんというよりも若父という雰囲気を出している。
「おっ......君が確か今日、入居のシャルル・デュノアだね。私の名前はさっきの識との会話で聞いていたと思うが言っておくよ。ーーー多々良光だ。一応、職業はISの研究者だ。それと同時に多々良工業のIS部の所長を務めている。これは私の名刺だ。よろしく」
「......よろしくお願いします」
そう僕は言い、多々良さんの名刺を受け取る。名前は黒く、会社の名前は赤く刷られている。役職は多々良工業IS部所長と刷られている。識さんはどうやら名刺を持っておらず逆にそんな所長みたいなお役職がない僕にはいらないよ。と言っていたそうだ。ーーー僕にはそう思えない。「魔法使い」や「世界武術トーナメント優勝者」、「鬼狩流次期当主」という肩書きがあるのだから名刺は持つべきだと僕は思った。
こうして僕はちょっと気まずいけど大変、それはもう女性として打ちひがれるほどおいしい料理を頂くのでした。ちなみに料理の品目は僕の故郷であるフランス料理の田舎料理でした。