設定といたしまして、戦闘はアルペジオ形式になっています。つまり、艦娘が自身の意思で船を操舵する形となっています。
また、タイトルにあります「雪ヨノ月ト時ノカ根」ですが、これは私の嫁艦(主人公下配属の艦娘)の名前を一時ずつ取っています。
2文字ほど明らかにネタばれな漢字がありますが、気にしたらダメです。
また、私自身現在卒業論文を執筆中でして、それの息抜きで多摩に書く程度ですから、執筆速度が遅いのはご了承お願いします。
※あと、物語には実際には存在しない鎮守府が出てきます。
まだ妄想の段階ですが、下関鎮守府、大間鎮守府といった漁港が鎮守府と化します。
『艦娘(かんむす)』。それは第二次世界大戦中に突如として世界中に現れた謎の少女たち。
彼女たち自身もどうして自分達が現れたのかということも理解できず、唯一分かっていることは彼女たちは戦艦の守り神のような存在であるということだ。
彼女たちは船長や航海士などを一切必要とせず、戦艦を己の意思で操舵することが可能である。
これには各国の海軍は驚愕とした。腕利きの乗組員が何百人と乗る以上の機敏さで船を操舵し、海上を船が独りでに動き回るのだ。
勿論、主砲や副砲の砲撃から、艦載機の発艦まですら彼女たち一人で行ってしまう。
乗組員を一切必要とせず、船のスペック限界までを引き出す彼女たちに、各国は自国の勝利を確信した。
しかし、各国はこれまで以上の戦火に巻き込まれることになったのだ。
艦娘が現れると同時に各国の海域で謎の艦隊が大量に出現し、襲撃を掛けてきたのである。
その謎の艦隊は高い性能を誇っており、各国は他国との戦争どころではなくなったため、一時的に休戦をすることになった。
このお話はそんな世界に新しく着任する一人の提督のお話。
―――鎮守府に新しい提督が着任しました―――
「卒業生代表、祝辞。技師科加藤君」
「はいっ!! 私はこの国立海軍士官学校に―――」
卒業式に有りがちな長くて堅っ苦しい祝辞を述べる卒業生代表。ましてや、海軍学校ということもありその堅苦しさはそこらの普通科の卒業式とはレベルが少し違う。
聞いてるだけで眠くなるような堅いお言葉を延々とお経のように読み続ける。
そして、周りも周りで真面目腐った顔で直立不動の姿勢を崩さずに祝辞を読み続ける代表と国旗から目を動かさない。
そんな、空間・・・
艦娘と呼ばれる存在が現れて50年。海軍の軍事体系は大きく変化した。先ず、艦娘が船の操舵から砲撃、艦載機の発艦までを全て最適に行うため、何百人も乗組員を軍艦に乗せる必要が無くなった。
そのため、軍人の行う仕事内容が軍艦の整備技師とお役所仕事がメインになってしまった。
それに、第二次世界大戦は途中で深海棲艦(しんかいせいかん)と呼ばれる脅威によって休戦となり50年。各国とも平和条約を結び実質終戦を迎えている。
人とは戦わず、深海棲艦との戦いは全て艦娘が行う海軍は、軍隊の中どころか一番楽な国家公務員と言われているぐらいである。
故に卒業後は確実に士官候補生として海軍に配属される国立海軍士官学校の入学希望倍率は非常に高く、中でも技師科と呼ばれる軍艦のメンテナンスや修理を担当する科は常にドック仕事であり海に出ることは訓練以外では決してない。また、将来的には民間企業と共同で軍艦の設計や開発に携われるということもあり人気が高い。
次に人気があるのは支援科である。技師科が理系であればこちらは文系である。抜錨して海に出た艦娘からの情報整理、燃料やボーキサイトといった資源の管理、ドイツやイタリアといった他国との事務的にやり取りをメインとしている。こちらも、技師科同様に訓練以外では決して海に出ることがないと言われている。
そして、国立海軍士官学校の中でも人気が最も低いのが・・・
俺が所属する「防衛科」である。
先ほど、『艦娘が船の操舵から砲撃、艦載機の発艦までを全て最適に行うため、何百人も乗組員を軍艦に乗せる意味が無くなった』と述べたが、これは誰も乗せなくても良いという訳ではない。
飽く迄、艦娘が出来るのは軍艦の操作と艦載機の発艦である。現場指揮や本部との通信をする人間は必要とされている。
この防衛科は、実際に軍艦に乗り込み、艦娘と一緒に海に出て深海棲艦に占領や封鎖された海域の奪還、また本土防衛に従事する部署に送られる科である。
実際問題、この防衛科は国立海軍士官学校唯一の定員割れが起きている。
それはそうだ。誰だって好き好んで戦闘の最前線に行きたいなんて思う訳がない。
俺だってそうだ・・・
「次に艦娘から卒業生への言葉。今年は霧島殿がお見えになられた。卒業生はありがたいお言葉をしっかり聞き洩らさないように」
何時の間にか長い卒業生代表の祝辞が終わり、次は艦娘から俺らへのメッセージにプログラムは移行していた。
壇上から降りる卒業生と入れ替わるように、巫女服の名残が少しあるセーラー服を着てメガネを付けた短髪の女性が壇上へと登る。
「マイクチェック、1、2」
そして、壇上のマイクの音量調節の度合いを確認し、メガネを指で押し上げて位置を調整する。
一見すれば美人な女性。
人間にそっくりな外見をしているが、彼女たちこそが艦娘と呼ばれる存在で、今後俺ら防衛科が指揮するモノである。
壇上に上がった女性は金剛型戦艦4番艦の霧島。4番艦ともあるように金剛型には1番艦金剛、2番艦比叡、3番艦榛名が存在し、それら全てに壇上にいる霧島と同じように艦娘が存在している。
これは戦艦だけでなく他の駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、空母、潜水艦といった全ての軍艦にそれぞれの艦娘が存在している。
一応、セキュリティーの関係で容姿が一般に明かされているのは大和型、金剛型、長門型といった日本海軍が誇る戦艦がメインであり、それ以外は実際に配属されるまでは俺らにも秘匿されている。
「卒業生の皆さん。ご卒業おめでとうございます。今年の卒業生への挨拶の代表として艦娘側から選ばれました金剛型4番艦の霧島です。これから、私たちと戦場を共にする皆さんへ一言言わせて戴きます―――」
「ヘーイ!!コングラチュレーション!!皆さん、おめでとネー!!」
霧島の言葉を遮るようにマイクにも負けない大声を張り上げて、卒業会場に乱入する一人の女性。
衣服や髪飾りが霧島と同一の物のため、同じ金剛型というのが分かる。というか、正確に言うとこの女性こそが・・・
「お、お姉さま!?」
「霧島、そんな堅い挨拶はノーなのネ!!皆さーん、卒業おめでとうございまーす!!」
そう、金剛型1番艦つまりネームシップであり、霧島の姉妹艦である金剛である。
彼女は西洋かぶれな喋り方をしつつ、壇上へと上がり霧島からマイクを奪う。
そんな様子に、教官たちは大慌てをするが、卒業生たちの大半は長い堅苦しい挨拶に霹靂していたのか、やりたい放題の金剛の登場に顔を笑わせる。
「あっ、榛名!! お姉さまを見つけました!!」
「金剛姉さま。様子を見るだけとおっしゃったではないですか」
「ゲッ!?比叡に榛名!!」
そんなやりたい放題な姉を捕まえに来たのか、更に2人の女性が卒業会場に乱入し、壇上へと駆け上がる。
過去こんなにカオスな卒業式はあっただろうか、日の丸国旗が掲げられる壇上で4人の女性が大騒ぎしている卒業式なんて・・・
勿論、完全に教官たちは頭を抱え、もうどうにでもなれという顔をしている。
「私はこれから一緒に過ごす卒業生の顔を見たいだけネ~」
「だから、それは卒業式の後でも良いでしょ」
「霧島は頭が堅すぎるネ!!これから長い付き合いになる提督や技師の方々は実際に目にしたいネ。日本にもハンドレッドリッスンはワンシーにしかずって言葉がありマース。そうだ、折角なので比叡も卒業生に何か言うデス」
「わ、私がですか!?で、では・・・」
比叡は咳払いをし・・・マイクを手に持って?
「気合、入れて!!行きましょう!!」
41cm連装砲も顔負けの大声で叫んだ・・・
この大声で一部の卒業生が泡を吹いて倒れ、卒業式は異様な終わり方を遂げた。
俺はこれから彼女たちのような存在を指揮することが出来るのかやや不安になりつつ、卒業会場から配属先の下関鎮守府へと向かった。