冬イベが終わるまでには二話を投稿したいなぁとか考えてます。
現在、時雨の魅力に漸く気づき育成中。そのため、嫁艦の雪風は長期休暇でのんびりしてます。
あと、冬イベで新しい潜水艦が来るらしいので楽しみです。やったなゴーヤ、仲間が増えたぞ(ゲス笑い)
下関鎮守府。それは山口県下関市に存在する日本の鎮守府の1つであり、深海棲艦から本土防衛及び占拠された海域を奪還する重要拠点である。
また、新設されたばかりの鎮守府の1つであり、規模そのものは呉や舞鶴と比べると非常に小規模だが、瞬時に日本海と瀬戸内海に出撃できるという特徴を有している。そのため、今後拡大予定の鎮守府の一つともされている。
拡大予定ともあり卒業生の1割近くがここ下関鎮守府に配属されると言われている。
ちなみに、もっとも多くの軍艦が停泊し半数以上の卒業生が配属されるのは横須賀鎮守府である。
まぁ、防衛科の俺にとってはむしろ大きすぎず小さすぎずな所の方が出撃回数も少なく、危険に晒される回数が減るのでありがたい話である。
下関鎮守府に配属される今年度の卒業生たちは学校からバスで送迎されており、バスの中には10人程度の学生がこれからの現場配属に胸を躍らせたり、心配そうな顔をして隣の席の人間と話し合っている。
そして、俺の隣の席の奴も嬉しそうにこれからの実戦への期待にマシンガントークを俺にかましてくれていた・・・
「あの、比叡って艦娘可愛くなかったか!?あぁ、金剛ちゃんも可愛かったし、榛名ちゃんも!!」
否、実戦ではなく艦娘に対してのトークだった・・・
「なぁ、山本はどの子押し?凄く明るくムードメーカーな金剛ちゃん?それとも、元気っ娘の比叡ちゃん?それともそれとも、優しいお姉さんタイプの榛名ちゃん?あぁ、やっぱり真面目腐ってるお前には同じ真面目で学級委員長タイプの霧島ちゃんだろ」
うぜぇ・・・
隣の同じ防衛科卒業生であり、頭の中は常に女しかない東郷喜助の話にイラつきつつも適当に相槌を打つ。
何が不幸なのか、こいつとは幼馴染で小中高だけでなく海軍学校の学科まで同じという長い付き合いである。
そして、こいつは才能がありながら最前線部隊である防衛科を受験した理由が・・・
「いや~、そんな彼女達の司令官になれるなんて俺マジで防衛科に入ってよかったよ!!」
そう、防衛科の卒業後に配属及び任命される艦娘達の司令官という役職である。
防衛科は、実際に軍艦に乗り込み、艦娘と一緒に海に出て深海棲艦に占領や封鎖された海域の奪還、また本土防衛に従事するということもあり、艦娘達との強い信頼関係が必要とされている。
現に艦娘達も自分達を指示する人間を乗せるわけであり、逆に司令官も自分の命を彼女たちに委ねる訳である。
そのため、信頼関係を深めるという意味で自分の指揮下にある艦娘たちと共同生活を送ることが義務付けられている。
何から何まで憂鬱になる環境に、隣の馬鹿とは反対にテンションは低めな子牛(おれ)を乗せてバスはドナドナと市場(ちんじゅふ)へと向かう。
一体何時間バスに乗せられて走ったのだろうか。時々トイレ休憩と称されてターミナルに降りる以外は基本ずっとバスの中に座っているだけの退屈な時間。
序盤はバスの中も人の声があったが、次第にその声は霧散していきついにはバスのエンジン音程度となった。
恐らく鎮守府に着いたら激しい訓練の日々が始まるであろう。そう考えた卒業生たちは一人また一人と休息をとり始める。
俺も東郷も卒業式に行われた隊列といったデモンストレーションで貯まっていた疲れを取るためにゆっくりと瞼を閉じる。
きっと次に開くときは……耳喧しいラッパの音や軍靴で大地を踏みしめる音がする時であろう。
「起きたまえ、卒業生の諸君!!いや、新しい同胞たちよ!!」
俺の耳に突如響いたのはラッパの音などではなく渋い男の声。
その声に、一斉に卒業生たちは目を開き、バスの座席から立ち上がり敬礼をする。
「私の名前は西村平八郎。この下関鎮守府の責任者であり君たちの上司だ。これから宜しく頼むぞ」
席から立ち上がり声の発信源を視認する。何時の間にかバスは鎮守府と到着しており、バスの運転席そばには真っ白の軍服を身に纏う初老の男と後ろに控える2人の中年。
初老の男は中将の勲章を軍服に付けており、またその眼光や声には年を感じさせない。
また、外の風景も緑の山や何もない平原ではなく、巨大な門と門の中に高々と存在するコンクリートの建物の数々。
そう、俺たちは寝ている間に下関鎮守府へと着いたのだ。
「着いて早々に悪いが休む暇などない。先ずは各自鎮守府の案内を行う。案内だが各学科ごとに分かれて貰う。先ずは技師科!!こちらの穂鍋二佐とともにバスを降りたまえ。あぁ、各自荷物はそのままで良い」
初老の男こと西村中将の後ろに控えていた穂鍋二佐は手を上げてバスから降車する。
それに習うように、技師科の卒業生が一斉にバスから降車し、バスの外で穂鍋二佐の前に整列し鎮守府の門を潜る。
「次は支援科。こちらの日村少佐とともにバスを降りたまえ」
西村中将の後ろに控えていたもう1人の男である日村少佐に続き先ほどの技術科と同様に支援科の卒業生がバスから降車し鎮守府へと入っていく。
バスに残ったのはついに俺と東郷の二人だけとなった。
「そして、防衛科の諸君は……私に着いて来たまえ」
「「はいっ!!」」
俺と東郷は西村中将に続くようにバスから降り、西村中将の前に2人ではあるが1列に整列した。
「まぁ、そう硬くならなくても。先ずは祖国の未来を担う新人提督たちよ、よく我が下関鎮守府へと来てくれた。先ずはそれを歓迎する」
バスの中での眼光や振る舞いが何時の間にか霧散しており、西村中将は俺らに笑顔を向けていた。
「君たち防衛科の人間には先ずは鎮守府の中の案内よりも先に済ませておくことがある。それは、何だと思うかい……そうだね、君。あと、一緒に自己紹介もしてくれると助かる」
西村中将は視線を俺へと投げかけ、答えるようにと促す。
「はい!!山本代将です!!また、質問へのお答えですが、それは艦娘との顔合わせでしょうか」
「その通りだ。君たちと彼女たちはこれから辛い時も苦しい時も……そして楽しい時間も全てを共有する。だからこそ、君たちに一番最初に見て欲しいのは鎮守府でも上司でもない。彼女たちなんだよ。さぁ、着いて来たまえ」
そう言って西村中将は踵を返し、鎮守府の門をくぐり一番近くの建物へと歩を進める。
それに続くように、俺と東郷は建物の中へと入る。
建物の中に入ると、受付に眼鏡を付けた1人の女性が立っており、西村中将と俺らを見ると笑いかけてくる。
西村中将は受付の女性に手を振りつつ、玄関近くの廊下に足を進める。
壁は基本白を基調としており、長い廊下は様々な方向へと分岐しており、ところどころの天井にはシャッターが付けられている。恐らく、セキュリティ目的のためと思われるそれらを見つつ、足を進めていると廊下の奥に人の姿が見える……見えたのだが……
なんか、小さくね?
「あっ、新しい司令官さんたちです!!」
そして、廊下の奥の方に居た少女たちが俺らに気付いて駆け寄ってくる。
下関鎮守府という軍事施設内を軍関係者以外の人間が闊歩できるはずもなく、ましてやこんな小さな少女たちが我が物顔で歩いているということは……
彼女たちも艦娘か?
「新しい司令官さん達ね。私の名前は雷よ。何か困ったら私たちに言ってね」
「ダブロー・パジャーラヴァチ。響だ」
「暁よ。私は一人前のレディーだから、何でも相談に乗るわよ」
「電です。宜しくお願いします」
目の前で自己紹介をする少女たち……いや、艦娘たちを見て俺は何処の小学校に迷い込んだのかと一瞬不安を覚える。
もしも、自分の指揮下に就く艦娘が彼女たちのように幼い容姿や性格をしているのであれば、最早子守りを任されているようなものではないか。
「うふふふ、可愛いわぁ♪」
更に彼女たちの後ろに控えるのは、ビデオカメラを手に持ち口元からよだれを垂らしている女性の姿が。
俺はストーカーをしている彼女を視界に納めなかったことにし、少女達に敬礼をとる。
「山本です。本日より下関鎮守府に配属になりました。宜しくお願いします」
「同じく、本日付で下関鎮守府に配属になった東郷です。宜しくお願いします。」
流石に東郷も真面目な時は真面目にやる男であり、後ろの女性やこんな少女に発情することもなく、敬礼を取り挨拶する。
「よろしくなのです。ほら、初鈴(はつね)も挨拶するのです」
後ろでビデオカメラを構えてる女性の方に顔を向けて挨拶を促す電。電の声で漸く俺たちの存在に気付いたのか、女性はビデオカメラの電源を落とし、空咳をし……
「私は古金(ふるがね)初鈴(はつね)少将です。第六駆逐隊を任せられてるわ。宜しくね、山本君、東郷君」
何も無かったかのように敬礼をし挨拶をする。
「「宜しくお願いします!!」」
俺と東郷は再び起立をし、敬礼を返す。
艦娘が現れてから、軍人は男だけではなくなった。艦娘が女性の形態をとっているため、女性同士の方がコミュニケーションが取りやすいなどとの指摘が軍上層部から出始めた。
確かに、実際に戦場に出ても提督は力仕事をすることは一切なく、艦娘を指示することがメインなため男性である必要が無いのだ。
それに伴い、艦娘とコミュニケーションをとる提督は男性だけではなく女性も増えてきているのが現状だ。
さらに、下手に頭の凝り固まった男性提督よりも、柔軟に思考する女性提督の方が戦果を出すこともあって、提督においては男女比率がほぼ半分とも言われている。
「ごほん!!初鈴君、ビデオカメラで艦娘の撮影をしているのは何時ものことだから、咎めるのももうウンザリだから良しとしよう」
良しとするなよと内心突っ込みを入れてしまいたくなったが、二人とも上官である以上突っ込みを飲み込む。
「山本君と東郷君の艦娘はもう到着したかね?」
「はい。今朝、舞鶴鎮守府と呉鎮守府より提督が引退したためフリーとなった艦娘計5人が配属完了となりました」
「5人?話では4人では無かったのかね?」
怪訝そうな顔をする西村中将。
「えぇ。艦娘1名が『オリョールはもう嫌デチ!!イムヤが下関鎮守府に行くなら私も行くデチ!!』と何でも上層部に嘆願届を酸素魚雷と一緒に提出したため、それが受理されたそうです」
「オリョール……あぁ、やっぱり伊58が嘆願届を出したか……伊168を引き取ると聞いてそんな気はしてたのだが……そうなると、駆逐艦2、重巡1、潜水艦2が下関鎮守府に追加配属されることになるのか……」
他の鎮守府で何が有ったのか知らないが、艦娘が1人暴動を起こしたらしい。
彼女たちも自分自身の意思があるため、扱いには細心の注意を図るようにとは学校では習ったが……人間の女を相手にするのとは比べて実に面倒くさい……
人間の女一人の機嫌を損ねてもさして問題はないが、艦娘の機嫌を損ねて出撃拒否や他の鎮守府に移動されれば戦力を損なう。それこそ、人間で例えれば何千という人数のだ。
数が5人ということは俺と東郷2人に均等に割り振られ2人か3人が俺の担当となる。
ていうか、嘆願書と一緒に酸素魚雷とかさらっと言わなかったか?そんな危険な人物を部下にするとか怖ぇよ!!
「そうです。あぁ、駆逐艦が一杯で私幸せです」
「初鈴、浮気はダメよ!! 私たちが居るじゃない!!」
「そうよ!!立派なレディーは浮気なんかしないんだから!!」
真面目顔が新たに増員された駆逐艦のことを考えると一瞬でだらしない顔になる古金さん。それを見た雷と暁は頬を膨らまし軍服の裾を強く引っ張る。
なんというか……母親が他人の子供を可愛がって嫉妬する子供のようで少し微笑ましい……
「大丈夫よ、私はあなた達一筋だから」
あなた達と複数の時点で一筋と言っていいのか知らないが、その言葉を聞くと一斉に古金さんにもぐり付く4人。
そして、完全に話が別の方向へと逸れて頭にバツ印を付けている西村提督。
「初鈴君……艦娘とのコミュニケーションは大切だが、一応時と場合を考えてくれるかい?」
「あっ、失礼しました。とりあえず、東郷君の下に配属する伊58と伊168は球磨が、山本君の下に配属する―――」
「あっ、提督見つけたくま~!! 案内大体終わったくま!!」
俺の下に配属する艦娘を読み上げようとした古金さんの声を、『くま』という変わった語尾を付けた大声が遮る。
大声がした方を見ると、茶色のボサッとした髪がトレードマークの少女と、上半身セーラー服の下半身はスクール水着という奇抜な格好をした少女が2人。
恐らくも糞もないが、語尾から明らかに茶色の髪の少女が球磨であり、残りの奇抜な格好をした少女二人が東郷の下に配属する伊58と伊168なのだろう。
「球磨君、誠にすまないね」
球磨は猛ダッシュで西村中将に抱きつくと、頭を西村中将に擦りつけ「くま~♪」と鳴き声(?)を発し続ける。
なんつうか、この鎮守府に来て会ったのが珍獣1、幼女4、奇抜なファッション少女2と頭が痛くなってきた……
そして、その球磨の頭を優しく撫でている西村中将が正月に孫が家に来て可愛がるおじいちゃんにしか見えなくなり、今後上官をどのような目で見ればいいのかわからなくなりつつある。
「あぁ、東郷君。彼女たちが君の下に配属された伊58と伊168だ」
「伊号潜水艦の伊58デチ。ゴーヤって呼んでね」
「伊号潜水艦の伊168よ。イムヤって呼んで」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!滅茶苦茶可愛い!!大事にするから結婚してくれ!!」
自分の自己紹介をするのも忘れ彼女たちに抱きつきプロポーズを突如し始める馬鹿(とうごう)。
前言撤回である。真面目にやるべき時でも真面目にやらないのがコイツであった……
「ちょっ!!あ、あんた!!何処触ってるのよ!!」
「それなら、オリョクルはもう勘弁して欲しいデチぃいいいいいいいいいいいいいいい!!あと、月月火水木金金は止めて週休二日は欲しいデチぃいいいい!!」
伊168は突如抱きついてきた馬鹿の顔が胸に当たったことに顔を赤らめて騒ぎ始め、伊58は涙は流しながら嘆願をし始める。
本当は深海棲艦と戦争をしてピリピリしている筈の鎮守府で行われている茶番劇の数々を見て、こんな鎮守府なんか深海棲艦に滅ぼされてしまえばいいのにとか思ってしまったことは内緒である。