夏休み終盤から、お父さんは俺達に身体強化を覚えたことだし、魔力をマナという魔法物質に変換して、体の表面を覆ってみようと言い出した。
身体強化は自身の筋力を増幅させているだけであるが、マナを使った鎧というか衣服を作り出すことができれば、パワードスーツみたいに超人的な能力を得ることができるとお父さんは言う。
「その分、燃費はすこぶる悪いがな」
俺らより遥かに魔力量が多いお父さんでも、2時間が活動限界らしい。
俺らだと良くて10分程度しか持たないと言われてしまった。
ただ、魔力を別の物質に変換するという練習もしていた俺にとっては凄く参考になるし、身体強化で鍛えた肉体にマナの鎧がプラスの作用をしてくれる。
純粋な強化なので、俺達はマナの精製に飛び付いた。
で、まぁ最初だから上手くいかずに、失敗を重ねるし、マナという普通は無い物質を生み出すので、誤って小規模な爆発をしたりと散々な目に。
その都度お父さんが治癒の魔法で癒してくれたが、普通に危険だなと思わずには居られないのだった。
「おはよー」
「久しぶり……って大きくなったね!」
「そう?」
夏休みも終わり、教室に入ると八雲さんから声をかけられた。
俺自身はそんなに変化と言えば少し肉付いたかなって思ったくらいだけど、八雲さんからは同じくらいの身長(145センチくらい)だったのに、夏休み終わったら目線の位置が上になっていて驚いたって言われてしまった。
「身長5センチくらい伸びたんじゃない?」
「いやいや、夏休み期間でそんなには伸びないでしょ」
とは言ってみるが、気になったので、放課後に保健室の身長測る器械を借りて測ってみたら、身長が151センチちょっとに伸びていた。
「ほらー凄く伸びてる! 入学した時は同じくらいだったのに! 勉強だけじゃなくて身長も伸びてるなんて!」
「いや、八雲さんも今測ったら入学時より2センチ伸びてるし、まだ大きく成れるって」
「そうかな?」
「絶対そうだって」
そんな会話をした後に、今日はせっかくだから本屋でも寄り道する? って八雲さんに相談をした。
八雲さんも新しい本を買いたいから本屋に行くことに。
(これ一種のデート何じゃ……)
そんなことを考えながらも、放課後に自転車に乗って本屋に向かうが、信号待ちを2人でしていると、なんというかふとトラックがこっちに向かってくるように感じた。
(あ、やべぇ)
瞬時にマナで体をコーティングすると、俺は八雲さんの前に出た。
「え? 森久保君?」
八雲さんは混乱していたが、次の瞬間にトラックが俺達に突っ込んできた。
俺はトラックに向かって手を伸ばし、吹き飛ばされないように、力むと、トラックは俺とぶつかった瞬間に大きく凹み、八雲さんの前で止まった。
「いってぇ……」
「も、森久保君!」
マナの鎧で強化していたが、まだ完全にできているわけじゃないので、トラックが突っ込んできた衝撃が両腕にかかり、多分折れている。
でも、八雲さんを救うことはできた。
「き、救急車!」
八雲さんはそう叫び、トラックを運転していた兄ちゃんも出てきたところで、俺は痛みで意識が飛んだ。
「知らない天井だ」
ラノベでよく出てくるセリフを俺は呟いた。
「気がついたか大翔」
「あ、お父さん」
お父さんからトラックに跳ねられて、病院に救急車で運ばれたことを伝えられた。
「女の子泣いていたぞ。自分を庇って大翔が跳ねられたって……男だな大翔」
「八雲さんは無事?」
「ああ、トラックの破片でかすり傷を負っていたけど、お前が庇ったお陰で無事だ。八雲さんの両親から娘を助けていただいてありがとうございますって頭下げられたよ」
「それなら良かった……いちち」
腕が包帯でぐるぐる巻きにされている。
「こうなるなら大翔にはもっと前から魔法を教えておくんだったって若干お父さんも後悔したけど……よい機会だ。治癒魔法を覚えよう」
「この状態でも魔法の練習かよお父さん」
「なかなか大怪我を治す経験って得られないんだぞ。今両腕が折れて、ギブズをハメられている状態だ。普通に治すなら3ヶ月はかかるって言われている。身体強化の応用で、折れた骨を意識しながら、元に戻る様に強く思って、魔法を使えば、3ヶ月より早く治る。またお父さん見に来るからゆっくり治しておけ」
「はーい」
お父さんは魔力回復をする飴玉をテーブルに置いて、帰っていった。
俺はその飴玉を舐めながら、自己治癒で両腕の骨折を治すように意識するのだった。
翌日、八雲さんが俺のお見舞いに来てくれた。
「良かった……森久保君生きてて良かった……」
俺のベッドの前でわんわん泣かれてしまった。
「大丈夫だから」
と俺は八雲さんに言うが、八雲さんの両親からも、俺が庇って無かったら、八雲さんが死んでいたかもしれないってことで、凄く感謝された。
俺が搬送された後に警察の方が現場の写真を撮影してくれたらしく、見せてもらうと、トラックのフロントに俺の体が当たっていた箇所がくっきりへこんでいるし、俺の自転車はぐちゃぐちゃに。
スマホも割れていて、こりゃ買い替えだな。
トラックの運転手はながらスマホによるよそ見が原因の事故で、速攻逮捕。
俺の病院代や自転車、スマホの物損、後遺症が残ったらその補償もちゃんと出ると言われた。
いや、それうちの家族から聞かされることなんじゃ……と思ったのだけど、お父さんが心配しないように配慮してくれたんじゃないかと思うことにした。
「意識が戻って本当に良かった……死んじゃったかと思ったんだから!」
「悪い悪い」
その後病院の先生からも、トラックと正面衝突して、両腕の骨折だけで済んだのは奇跡だし、ちゃんと治療が終えれば学校に戻ることもできるからねと励まされた。
「まぁ運が良かったかな」
その後、俺は治癒の魔法を覚えるために、自身の腕を魔法で治すことを始めるのだった。
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