「凄い自然治癒力だ! まだ10日なのに骨がくっついている! 指も動かせるようになるなんて!」
なんというか、人ってやろうと思えば結構なんとかなるんだなってことがよくわかった。
身体強化の応用で自然治癒力と身体の治癒の魔法をお父さんから習いながら頑張ってみたら、10日で骨がくっつき、結構バキバキに折れていた指も元通りに動かすには手術が必要……って言われていたけど、普通に動かせるようになっていた。
リハビリで更に10日間入院を続けることになったが、事故から20日目で退院。
病院の先生からは驚異的な生命力だって言われた。
まぁまだ手に違和感があったので、退院後にお父さんに治癒魔法をガッツリかけてもらったら違和感も綺麗さっぱりに消えて無くなり、土日を挟んでその翌日から学校に登校することができた。
「不死身の森久保だ!」
「よお不死身!」
「スゲェな女の子を身を挺して守るなんて! 漢の中の漢だぜ!」
教室に入ると、2ヶ月は入院が必要と言われる大事故だったのに、1ヶ月も経たずに復帰したこと、トラックに突っ込まれたのに生きていたこと、八雲さんを身を挺して守った事から、クラスだけでなく、学校中に不死身の森久保ってあだ名が浸透。
もしくは漢の中の漢って言われるようになった。
「あ、森久保。お前が居ない間に席替えがあって、お前は窓際の最後列な」
「横は八雲さんにしておいたから! お幸せに〜」
周りから俺と八雲さんは公認カップルのように扱われて、俺は言われた席に移動すると、八雲さんと度々お見舞いで顔を合わせていたけど、改めて、
「八雲さん、もし良かったら付き合いませんか!」
俺は彼女に告白した。
「うん! 森久保君が良いのなら!」
八雲さんからもOKをもらって、俺は八雲さんと付き合い始めることに。
茶化す奴もいたけど、基本クラス中から祝福されて、事故ったけど、凄く良い思いをすることになるのだった。
「森久保君……もし良かったら下の名前で呼び合わない?」
「え? いいの?」
「うん、怜(とき)って呼んでほしいな……」
「わかった……怜。俺は大翔で良いから」
「うん! 大翔君! よろしくね!」
こうして俺は怜と付き合い始めるのだった。
「父さん」
「何だ大翔」
「前に事故で庇って助けた女子いるじゃん」
「ああ、八雲さんか。あの後お菓子を持って挨拶に来たよ。大翔が庇ってくれたお陰で娘は助かったって」
いつの間にか俺はお父さんではなく父さん呼びに変わっていた。お母さんも母さん呼びに。
彼女の前でお父さん、お母さん呼びはちょっと恥ずかしいからな。
「俺だけじゃないんだけど……和人や恵にも彼女や彼氏ができた時に魔法のことを隠し通せる自信がないんだけど……」
「その言い方だと八雲さんと付き合うことになったか? おめでとう」
「ありがとう」
「……それもそうだな。今度その八雲さんを連れてきなさい」
お父さんに何か考えがあるらしく、次の休みの日に俺は怜を呼ぶように言われた。
数日後、俺は怜を家に連れてきた。
怜の家からうちまで自転車で30分以上かかるので、苦労かけてしまったが、うちの父さんが八雲さんに挨拶がしたいってことを伝えると了承してくれた。
「自転車デートみたいで楽しいね」
「そう言ってもらえると助かるよ……ごめんな今日は」
「うんん、じゃあ今度は大翔君を家に招待しないとね!」
そんなことを話しながら、自転車を漕いで、自宅に到着すると、母さんがリビングでお菓子を用意してくれていて、父さんが椅子に座って待っていた。
「失礼します。こんにちは、大翔君のお父さん。病院以来ですね」
「ああ、八雲さんで合ってるよね」
「は、はいそうです!」
「まぁまぁそう固くならずに……ちょっとお話があってね」
「はい……」
怜も椅子に座ると、俺が彼女の飲み物を用意する。
ちょうどアイスココアがあったので、それで良いか確認すると、怜は喜んでいた。
「あの~話って」
「うん、やっぱりだ。八雲さんは魔法の才能があるね」
「父さん!?」
いきなりのカミングアウトに俺は驚くが、怜は何かよくわかっていない様子。
「ま、魔法?」
「うん、魔法。実は大翔がトラックにぶつかっても死ななかったのは魔法で君を守ったからなんだよ」
どうやら父さんは彼女に魔法のことを伝えるらしい。
そしてできるならば魔法を覚えてもらいたいらしい。
「私も魔法を使えるように?」
「今私は実験をしていてね。実子を使って魔法使いの育成方法を確立しようと実験しているのだよ。そこでもし良かったら八雲さんも魔法使いになってみないかい?」
「私が……魔法使いに……」
そんな簡単に教えていいのか、魔法使いの存在は隠しているのじゃないのかと俺は言いたいことをぐっと堪える。
勿論父さんもタダで教える気は無いらしい。
「勿論条件をつけてもらう。まず私は君に認識阻害の魔法をかけさせてもらう。自力で打ち破られるようになるまで、八雲さんが魔法を使っても周りは魔法が使われたというのが魔法使いを除いてわからなくなる魔法だ。魔法の存在が無闇に拡散されることを私は一番恐れているからね」
俺ら息子達にはそれをかけなくて良いのかって思ったが、母さんが魔法についてわからなくなると困るだろって至極当然のことを言われた。
「条件はもう1つ、魔法については大翔に習ってくれ。私から教えることもあるが基本は大翔に習ってくれ」
父さんは魔法が教えられる存在を増やしたいらしい。
そうは言うが、俺も修行中の身何だが。
「補助の道具は勿論貸し出す。例えば……八雲さん、スマホを出せるかい?」
「は、はい」
怜はスマホを取り出すと、父さんは魔法の補助をしてくれるアプリを怜のスマホにデータを飛ばしてインストールさせた。
「開いてみて」
「はい」
怜はアプリを開くと、体に電流が流れたみたいに強張っていた。
「なんですか……今の……」
「魔力が体に受け入れられるように衝撃が加わった感じだ。ちょっと失礼」
父さんは怜の肩を掴むと魔力を流し込む。
俺の場合は数年間にわたって、父さんが育てた魔力が宿っているキノコを食べていたからこの工程は必要なかったけど、あれが急激に魔力を体が魔法に変換できるように魔力を流して整えているのだろう。
俺が父さんが今やっていることができるようになるまで、どれくらい時間がかかるのだろうか……。
「ケホケホ」
「辛かったね。でも大丈夫。落ち着いてくるから……今体の中に魔力の回路が出来上がったから。これができても体に異常は特に発生しないからね。さてと、大翔と付き合うなら魔法使いになってもらうけど良いかい?」
「……ここまでやって、ならないって選択肢は無いと思いますけど……お義父さん」
「いい返事だ。しっかりしている子だね。大翔、この子のことは大切にしないよ」
「言われなくてもわかってる!」
俺は肩で息をしている怜を支えて、背中を擦るのだった。