衝撃のカミングアウトの翌日、俺達はお父さんに起こされて、徒歩10分で入り口まで着ける裏山に向かった。
「ここ将来お前達と魔法の練習ができるようにって、お父さんが丸々購入したんだ。まぁ趣味のキノコ栽培にしか今までは使っていなかった訳だが……」
裏山がまさか俺達の敷地だったとは……今知ったわ。
「さてと、じゃぁ3人はこれから魔法を少しずつ覚えてもらいます」
和人が魔法って言うから杖とかを作るところから始めるの? って質問するが、お父さんは首を横に振り、俺達に箱を手渡した。
「なにこれ?」
箱を開けてみると、中にはスマホが入っていた。
「スマホだ!」
「え! 中学生になるまでは買ってくれないんじゃなかったの?」
「というか、スマホと魔法を覚えるのに何か関係が?」
和人、恵、俺の順番で質問するが、お父さん曰く、杖なんて持っていても現代社会だと不自然極まるから、杖で必要な魔法の補助機能をスマホのアプリに落とし込んだらしい。
俺の知るとんがり帽子を被って杖を振り回す魔法使いの像が崩れていく……。
「異世界では確かにそんな魔法使いが普通にいるが、魔法を熟達すれば、昨日お父さん何か道具を使って魔法を使っていたか?」
いや、お父さんは指を弾いたり、指を振るうだけで魔法を使っていた。
お父さんによると、杖代わりのスマホも自転車の補助輪の様な物だと説明される。
ただ、補助具があった方が魔法の威力や精密性が上がるので、あれば便利な存在だと言われる。
「将来は自分の補助具を作れるくらいになってもらうからな」
「「「はい!」」」
「いい返事だ。今日教えるのは魔法使いの基礎の基礎。身体に眠っている魔力を体内に蓄積するタンクと、魔力を魔法に変換する変換器を目覚めさせることを始める」
魔法使いになるには、普段使われていない臓器の機能を覚醒させるところから始まるとのこと。
基本魔力が蓄えられるのは肺と胃、心臓で魔力を魔法に変換させるのは脳が役割を担っている。
血液の流れに沿って、魔力は全身を巡っているとも言われた。
「お父さん、魔法使いになるにはどうやって眠っている臓器の機能を覚醒させればいいの?」
俺はお父さんに質問する。
するとお父さんは一気に目覚めさせる方法と、徐々に目覚めさせる方法があり、自分達は徐々に目覚めさせる方法を使ってくれていたらしい。
その方法は食事で、お父さんが作って食卓でよく食べていたキノコ……マッシュルームを大きくしたようなキノコで、スーパーに売ってないなって思ったこともあったけど、あれを1年近く食べ続けると、素養のある人は魔法使いになる下地が出来上がるとのこと。
「ただ、あくまで下地だ。覚醒させるには……魔法使いに魔力を体内に流し込んで覚醒させてもらったほうが手っ取り早い」
お父さんは俺達に魔法使いアプリといかにも怪しいアプリを起動するように指示を出して、アプリを起動する。
すると、全身に電撃が流れ込んだ様な衝撃が。
思わず俺達は倒れ込んでしまい、全身が痙攣する。
「素養があっても、この状態になるからなぁ……少しずつ楽になるからその状態で聴いていてくれ」
体が痺れて、それどころではないが、お父さんは話を続ける。
最初のうちはこの衝撃に馴れることが大切で、数回もすれば体が慣れて、逆に全身がポカポカ暖かい活性化した状態になることができる。
その状態になればようやく魔法を放出する練習ができるとのこと。
「最初のうちは水を生み出す魔法からだけどな。魔力を変換して水を生み出す……物質の創造と魔法の基礎の基礎で、これができないと魔法使いは始まらない」
魔法の放出に慣れてから、自身の体に魔法をかける魔法を覚えていくのだとか。
「便利だぞ身体能力の向上。勉強効率が上がったり、人よりも素晴らしい身体能力を持つことができたり……自己治癒を覚えれば、怪我も直ぐに治す事ができる。今後襲われる成長痛の痛みも軽減できたり、虫歯を自己治癒できたり……とにかく健康的に過ごすのに滅茶苦茶便利だ」
徐々に痺れが引いてきた。
俺はゆっくり立ち上がると、お父さんから、
「流石大翔だ。もう一度アプリを起動してみろ」
そう言われ、俺はもう一度アプリを起動してみる。
衝撃はさっきよりは無い。
体が少しずつ慣れてきたのだろうか。
アプリの中身を確認すると、トレーニングというボタンがある。
お父さんに許可を貰って押してみると、水を生み出す魔法についての説明が書かれていた。
水を生み出すのに最初は水に対しての親和性を高めないといけないので、お風呂に水を溜めて、そこに片手を突っ込んで、温度を上げる事から始めてみましょうと書かれていた。
他にも練習方法が幾つか書かれていて、ここで出来そうなのは、葉っぱを1枚手で持ち、その水分を引き抜く魔法。
木になっている適当な葉っぱ取り、片手で持って力を込めてみると、葉っぱの表面が微かに濡れて、若干葉っぱが萎れたような。
「お、大翔は要領が良いな。流石お兄ちゃん。いや、お父さんの息子だからかな?」
そんな事を言われたが、魔法を使ったからか、疲労感が襲いくる。
「魔力を保有しているタンクの容量がまだ少ないからな。覚醒したばっかり。これから徐々に伸ばしていけば良い」
「は、はい……」
多少のダルさはあるけど、まだ動ける。
「ちなみに魔力を蓄える臓器で一番拡張が容易なのが肺だ。肺を大きくすれば、自ずと魔力量も増える。楽なのはランニングなんかの有酸素運動をすることだが……それは追々な」
和人と恵も痺れが落ち着いてきたのか、葉っぱを使ってのトレーニングを始めるが、2人も直ぐにバテてしまう。
「普通に魔法が使えるようになるのにどれぐらい時間がかかるの?」
「そうだなぁ……真面目にやれば2週間程度で水を生み出すのができるようになって、2ヶ月くらいで身体強化系の魔法が使えるようになると思うぞ。真面目にやればだけどな」
魔法習得の道のりは長いわけか……でも何だが楽しく思えてきた。
普通に勉強して良い高校行って、良い大学行って、就職して……ってルートを思い描いていたけど、そこから外れた感覚が何だか心地よい。
「お父さん、もっと色々教えてよ。俺頑張るから!」
「お、大翔やる気になったか! じゃぁとっておきの練習方法を教えてやる」
お父さんはとっておきと言って破天荒な魔法の練習方法を教えてくれるのだった。